山林の環境保護を最大の目的としています!! どうぞ、ほかの方にもご紹介下さい。
●桑の品種 山 桑 畑 桑 合 桑 島 桑 |
●植栽地の選定 地ごしらえと植え方 植付後の管理 台切り 幹の更新と管理 整樹・枝下高 除草・下刈り 病害虫の駆除 |
桑には大別して4〜5種類の品種があるようです。4種類のものをあげて私の知る範囲で、それぞれの桑について説明を加えてみたいと思います。その4種類とは、山桑、畑桑、島桑、合桑と呼ばれているものです。
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桑といえば、蚕を飼育する養蚕桑を思いうかべる人が多いと思いますが、山桑は蚕とは無関係で、山に自生している天然の桑です。むかしから工芸品などの材料として、使用されてきました。床柱、茶棚、碁器などに代表される。一般に桑製品と称される高級品は、すべてこの山桑をさしております。
山桑は山地や、竹薮の中に自生し生育している天然桑です。地方によっては、つみ桑と呼ばれているところ(岡山県備中地方)もあります。養蚕桑とくらべて幹、枝葉、実とも全く同じですが、その生態、材質など内容においてかなりことなります。
山桑は素性よく真直ぐにのびる性質をもっており、生える場所によっては、自然条件でも樹高10メートル以上、枝下だけでも5〜6メートルを形成してみごとに成木しているものも珍しくありません。
材質は堅く、色は鮮やかな黄色で、木目が鮮明で美しく、見る人をひきつけます。むかしから家の床柱や、木工芸品の材料として広範な用途があって、広葉樹の中では最も高級な木として高く評価されています。
4種類の桑は原木ではなかなか区別しにくいが、山桑の場合、他の桑にはみられない特徴があって簡単に見分けることができます。それは、まず桑の幹の表皮(鬼皮)を剥ぐとその皮の下には紫色の粉状のものが一面に付着して、その紫色が濃く粉が多く付着しているほど、桑の材質も良質であることがわかっております。このような現象は、他の桑ではみることができない純粋の山桑であるあかしといえます。
私はいまでもこの方法で桑の品種と材質を知る上の手段として採用しております。山桑の山地といえる地域は、全国的にみてもごく限られており、中国地方と九州の一部に産するほかほとんど見られません。岡山、広島、島根の各県は良質な山桑の山地として知られるが、いずれの県でも県下一円に分布しているわけではなく、一部のごく限られた地域に、点在的に生産が見られる程度であります。
岡山県でも山桑の自生地として知られる備中地方の新見市、備中町、成羽町にかけての山々には、むかし多くの山桑があり、なかでも成羽ダム周辺の山には、一抱えに余るほどの山桑の大径木が多くみられたが、ダムの工事によって伐られいまではその姿を見ることはできません。
現在、山桑の大径材は非常な高値を呼んでおり、業者が渇望している。原木の直径40センチ級では立方当り50〜80万円、50センチ級では100万円以上。60センチ級ともなれば200万円以上の高値で取引されております。
最近における市場の山桑売買の実例としては、平成8年5月、於大阪銘木市場、山桑原木長さ2.4m×60p(未口径)1本160万円。平成8年9月、於真庭木材市売、長さ7.4m×40p1本100万円などがみられます。広葉樹としては、異例で驚異的な高値格と注目を集めました。
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蚕を飼育するため、畑地に栽培される養蚕桑です。むかし養蚕が盛んなころ、全国の農村で広大な桑畑をよく目にしたが、養蚕の衰退ととみに現在では、その光景をみることはできません。
桑畑は材料として材質的にやや難点があり、用材として喜ばれませんが、それでもまれに立派な大径木に成木しているものがあり、細工物や木地の材料として使用されております。ただ、木目が総体に荒目で、材質も軟らかく、板などに製材した場合狂い、干われ、縮れなど生じやすいのが欠点です。
したがって、山桑にくらべると材質、使途、価格などすべての面でかなり劣るといえます。
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畑桑と山桑の自然交配種と思われます。山畑の片隅とか比較的浅山に自生しております。山桑に類似しており、区別が困難ですが、表皮の下に濃い紫色が出ないので、試せば判別することができます。材質は堅いが、木目が総体に荒目で桑材特有の黄色がうすく木目、色合いともに冴えがみられません。また板などに製材すると狂い、干われ、縮れなど生じやすく、すべての点で山桑よりあとるといえます。
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伊豆諸島に属する御蔵島にしか産しない一種独特の桑である。杉に例えるなら屋久杉のような存在といえる。材が非常に優美で磨くと黄金色に輝くところから、別名金桑と呼ばれておのます。美術工芸品の材料として珍重され碁器、将棋駒、駒台、美術箱、茶道具など高級志向の調度品などに真価を発揮し高価な木として知られる。
例えば、杢目の優れた碁器の逸品は一組70万円から80万円で売られている。ちなみに一般の桑碁器の場合は10万円から20万円である。この島桑も乱伐傾向で、年々減少しており次第に幻の木となりつつあります。
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戦後、国内の山では広葉樹の原生林がことごとく伐採され、その跡地には杉、桧など針葉樹が次から次へと植林がなされてきました。不利益な雑木よりも用材として価値の高い木への転換が、将来的にも必要かつ有利であるとの見解は、国や県の方針でもありました。
しかし近年に至ってとみに広葉樹増殖の必要性が叫ばれるようになりました。山には広葉樹である雑木類が増えることは、環境保全の観点からも、絶対に重要なことであると考えられてのことであります。
木が持つ保水力、この点を考えるなら針葉樹より広葉樹の方が優れていることは間違いありません。むかし、奥地の山々が広葉樹の原生林で覆われていたころ、河川の水量も豊かで旱魃の時でも、川が大洪水することもなく、いつもきれいな水を湛えて流れていた光景を私は子供のころこの目でみてきました。いまでも懐かしく憶えております。
山に木が茂り葉を落として、それが蓄積して雨水を貯えることにより、大雨の際でも河川の氾濫を防ぎ、旱魃の折には川の渇水を防ぐ、この大自然の営みに樹木は大きな働きをしていることは、いまさら申しあげるまでもありません。
また、山に雑木類の必要なことで、いまひとつ言えることは山に住む動物の保護があります。山を棲家とする鳥や獣たちの、餌となる葉や実をつける雑木類が増えれば、安住の地を得て動物たちも、きっと増えることでしょう。
桑は、動物たちの恰好の餌となる葉や実をつける木です。秋には葉を落として山の保水に役立つまさに一石二鳥の木といえます。そして成長がはやくて金になる木として収益性にもすぐれ、最近注目を集めております。広葉樹の王様といえる山桑の植裁を私は強くお奨めいたします。
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桑が高級で高価な木材として名高いことは、よく知られておりますが、さて、どのような用途があり値打ちがあるのか、存外知られていないようです。
桑材は家の床柱や、襖桟などのほか工芸品、調度品などの材料として高級志向に使用されておりますが、その中でもとくに桑をして最高級品といわれるものとしては、床柱・茶棚・仏壇・座卓・碁器・襖・額縁・木魚などがあります。その他にも盆・茶び・茶筒などの茶道具類・将棋駒台・駒箱・美術箱・硯箱等々多種多様な用途があっていずれも高級志向の客層に人気があります。
最近における主な桑製品の価格をみると、床柱(芯去り)40〜50万円、茶棚150万円〜200万円、仏壇200万円〜300万円、座卓150万円〜200万円、茶びつ20万円〜30万円、碁器10万円〜20万円などとなっております。しかし、これら桑製品はいずれも材料不足のため製造が困難を極めており、今後値上がりも予想されます。
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国内で最も成長がはやい木をあげれば、桐、ポプラ、イチョウ、杉などが有名ですが、実は桑もこれらの木とならんで成長がはやい木といえます。
私は、これまでに数千本をかぞえる山桑の原木を手掛け売買してきましたが、その経験からみても山桑り20年生で、胸高直径30センチ購入価格1本当り10万円・30年生38センチ35万円・40年生45センチ60万円・70年生58センチ140万円などに実際出合っております。
この経験からみまして、私は桑としう木が栽培する上で、他の樹木にはみることのできない収益性の高い木ではないかと、思っております。一時期、桐が成長がはやく有利な木として植裁ブームを巻き起こし多く栽培されましたが、なるほど桐の場合成長では桑を凌ぐもので、7年生では胸高直径30センチ以上に成長を遂げるものもあり、相場もピーク時には1本4〜5万円にも売れ、栽培して有利な木であった。ただ桐の場合植えて10年生までは成長が著しく旺盛だが、それを過ぎると成長が鈍り収益性が低下するため、栽培に当たっては早期伐裁で勝負換金するのが有利とされていました。
桑の場合、植えて20年ぐらいから換金可能の太さに成長するが樹齢を重ねて大径木に仕上げることが、立方単価もはね上がって、年当たりの収益率もさらにアップします。桑の場合、成長の最盛樹齢は20年生から40年生と思われます。成長がはやくて有利な木であった桐も中国桐の輸入増加で、価格が暴落し、現在では国内で販売する人がほとんどいなくなりました。
桐が外材(中国桐)の影響を受けて暴落したことは前述のうおりですが、その点桑の場合どうなのか、当然のことながら心配する向きもあると思いますので、私の経験上から、少しふれさせていただきます。
お隣の国、中国には針葉樹、広葉樹を問わず日本に存在する木はすべて存在し、中国桑と銘打って輸入されております。
私も平成6年、大手の木材輸入業者より中国桑を選木で16本、約10立方、価格は立方当り約25万円で購入し、使用した経験があります。価格的には山桑の約半値で直材無節の一見立派な原木であるが、製材してみると木質、木目、色合い、木味など、すべての点で日本の桑と異なり高級志向が売り物の桑製品とうたっての販売には、いささか問題がありそうです。
私も現実にわずかではありますが、中国桑を手掛けてみてその販売には苦慮したもので、その後の購入は行っておりません。以上の観点から桑の場合、外材の影響で日本桑が値をくずすことはまつたくないものと思われます。
桑を栽培するうえでまず大切なことは、適地を選んで植裁を行うことが肝要であります。山桑の自生地をみると、石の多い傾斜した山を好んで多く生え育っております。このことを考えると、水はけのよい場所が栽培地の第一条件と思われます。湿田や平坦で水はけのよくない土地は、植裁を避けるのが賢明でしょう。
さて、山桑の自生地域をたどると、岡山県の場合備中と美作地方の極く限られた区域にしか存在が見られず、備前地方にはなぜか皆無に近く見ることはできません。
私は、この山桑がなぜ特定の極く限られた地方、区域にしか存在しないのか、また、他地では育たない木なのだろうか不思議に思う訳ですが、その疑問を私なりに解いてみると、次のようなことが考えられます。
まず山桑という木がこれまで、一度も人の手によって繁殖が計られ、移転され、栽培されることが殆どなく、山中にひっそりと生え育てて、その種族がいうなれば門外不出として、他地へ移出されることがなかったのではないかと思う。植物の種子は、風に乗って飛散したり、鳥や獣の糞に混じって媒介され、遠隔地へ移されて繁殖するが、桑の場合、種子が非常に微細で弱性であるため、土に接しても通常では発芽し難く、自然での繁殖は難しいのではないかと思われます。
私は山桑がいずこの土地でも生育するものか、どうかを試すため自家の畑地(津山市皿地内)で試験栽培を行っています。その結果、現在2年生で樹高約5メートル幹の太さがほうきの柄ぐらいに太っており、見事な成長ぶりを見せています。
私はこの栽培実験によって山桑が管理栽培を行えば、ほとんどの土地で立派に生育する木であることを確認した次第であります。
桑の植付時期は晩秋の11月から翌春4月ごろまでが適期ですが、できれば購入した苗木を土に留めておいて春3〜4月ごろ植えるのがよろしいようです。
植え方は、先ず植付場所を直径約1メートル、深さ50センチぐらいがよく耕す。元肥として鶏糞、牛糞、化成のいずれかを土と混合して施します。この時、注意することは、苗木を植え込む局所に肥料がいかないように無肥状態にしておくことが大切である。苗木の根に直接肥料が触れると強すぎた場合、肥当てりして苗木を粘らすことがあるので、充分な注意が必要です。
植える間隔は3メートル四方に1本の割合で、反当り約120本程度が適当です。植え方は苗木の根本をやや盛土にして、植える深さはいくぶん浅植えにして、水はけをよくしてやるとよい。
植付した苗木はそのままの状態で1年間育てます。幹から発芽する脇芽はすべてそのまま伸ばして技として繁らせます。
これは翌年台切りを行うための準備で樹勢をつけるのが目的です。したがって充分な肥培管理が必要です。
苗木が完全に活着した頃5月から6月にかけて乾燥鶏糞か牛糞を苗木の根元から50センチ以上離して1袋を4〜5本の木に分けて振撒いて施します。化成肥料を使用する場合は、畑作用の配合肥料を1本当り3握り位を木から50〜60センチ以上はなして木を中心にして直径2メートルの範囲に振撒いてあたえます。私方の植栽地ではその後7月と8月にも各1回化成の追肥を行います。
植付して1年間育てた苗木を翌春根元から地面すれすれにばっさりと切ります。
これを台切りと云っていますが、将来まっ直ぐな良材をつくるための大切な手段なので、最もよい時期に行うことが大切です。
台切りを行う時期は通常3月初旬から下旬にかけて行いますが、積雪寒冷地では3月から4月の雪解けを待って行います。
また、台切りを行わず植えた苗木をそのまま育てる方法もありますが、この場合幹に段差が生じて曲るなどの欠点があり、あまりお奨めできません。
但し、山の急斜面や雑草、灌木の茂りやすい場所での栽培には適しているかもしれません。
台切り後、春地面切株より少なくとも3〜5本の新芽が出てきますが、新芽が地上20センチぐらい伸びて固まった頃を見計らって最も丈夫で姿のよい1本を選んで残し、他は全て淘汰します。
桑の幹が成長してゆく段階で竹又はパイプなど用いて支柱を設けてやる必要があります。
これは幹を直立して伸ばす補助的な役目と台風に備えての防備のためにぜひとも必要なことなので必ず実行してください。
地面より発芽する新芽は肥培管理次第で秋成長が止る頃には全長で4〜5メートル伸長しますが、さて技下高をいくらとればよいかの問題があります。
将来桑が成木した時の用途を考えると、あらかじめ2〜3〜4メートルの何れかの単位に設定して育てることが望まれます。したがって幹の伸長具合に合わせて脇芽をかき取ればよく、例えば幹の全長が4メートル伸長した場合、脇芽のかき取りを3メートルまで行って上方1メートルは脇芽は取らず放置して枝をつくるようにします。
枝はできるだけ多い方が幹の肥大成長に役立つので無理をして枝下を高くする必要はありません。
台切り後地面より発芽する新芽(幹)を育て管理するうえで最も注意すべき点は桑幹が雑草や灌木に覆われることのないよう、細心の注意が必要です。
新芽がひとたび雑草などに覆われると成長が大きく妨げられて貧弱な幹となって将来の成育に悪影響を及ぼすことになります。
台切りの利点は更新することにより、その成長力を利用して強力で樹姿のよい材に仕立てることにあります。そのためにも最初が肝心。
地上の新芽が1メートル以上は伸びるまで除草下刈りを早目に必ず実行してください。
山桑は病気に対しては非常に強く、山の天然桑をみても育苗中の苗木をみても、病害は殆ど発見されていません。
ただ、害虫の被害を受けることがあります。生育中の立木の幹に孔をあけて食害する、俗にテッポウ虫と呼ばれる害虫で、進入すると幹に木屑の幕を張るので、すぐに発見することができます。
駆除の方法は、農薬のスミチオン50倍液を綿か、ちり紙に浸ませて虫孔にさし込み、詰めておくと簡単に駆除することができます。
また、広葉樹にはつきものの食葉害虫の被害が心配されるが、これまで山桑に食葉の被害が殆どみられないのが不思議である。
当所が販売を行っております桑苗は、約60年生の優秀な母木より採取した種子から、2年間かけて育苗せる純粋の山桑であります。
種子繁殖による更新苗で、成長、耐病性と優れた優良品種であります。
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山桑苗木価格表 | ||
---|---|---|
上苗 | 苗丈1メートル以上 | 1本 630円 |
中苗 | 苗丈70センチ以上 | 1本 420円 |
●著者経歴●
昭和26年、18才より家業の桐下駄材料製造の仕事に携わる。
昭和33年、桐栽培の参考書「桐栽培法」出版。
昭和44年から57年にかけてタイワン桐1,300本(3ヘクタール)実施栽培を行う。
累計原木生産量約350立方メートル
昭和53年よりけやき、くわ、とち、かやなどを主体とする広葉樹全般を取り扱う材木屋として現在に至る。
山桑原木取扱量 年間250本 100立方メートル