姿勢に関する美作地方的表現の研究

-勝手に方言研究会 その1-

私が20年近く前、アルバイトで農業用水路パイプラインの敷設工事にたずさわった頃の思い出です。
作業員のおっちゃんたちは、当時学生の私には耳新しいぐらい方言を使っていましたが、これはとりわけ印象深かったので、本当に方言かどうか知りませんが(今作った)勝手に方言研究会の第1号にノミネートさせていただきます。

もったいを付けずに発表すれば、おっちゃんたちのせりふにはやたらと姿勢に関する表現が多いのです。
立てる=「たてらかす」
立てかける=「もたらかす」
横にする=「ころばかす」
倒れる=「はねくりかえる」
倒す=「はねくりかえす」
今にして思えばやっぱり、職業上、ものの姿勢についてやりとりをすることが多いのだと思います。
話し言葉にしてみれば「大事な道具なんじゃけん、たてらかいたままにしとかずにどっかにもたらかいとかにゃあ、はねくりかえってめげるがな。」ってな調子です。これがいつもだと私にもうつって、やりとりに弾みがつきます。

「今さらそがいな当たり前のことをめずらしがりょーてどねいするん。」
もっともです。方言の面白さはその場にいて生で聞いて初めてわかることかも知れません。
でも、何の変哲もない会話の中に、私が感じたおかしさやや楽しみを何とかわかって貰いたくてあえて掲載してみました。

2週間ほどのバイトでしたが、おっちゃんに学んだことがもう一つありました。
「やかん持ってこい、言うたらやかんだけ持ってくるな。」
それは、私にはすごい謎かけでした。が、おっちゃんは「?」の私に謎を解いてくれました。
「やかんにはお茶が入っとるのに、コップを持って来にゃあ、何にもなるまあが。何でも言われたとおりにするんじゃのうて、先のことを考ええ、いうことじゃ。」
私は、実際やかんだけ持ってくるタイプだったのでした。(当時は。)


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