震災からしばらく経ったある夜、私を眠れなくしてしまったのは、震災は阪神地方が人口密集地となり、海峡を一またぎに出来る橋が架かるようになったからこそ起きたのではないか、というおそろしい考えからでした。
明石海峡大橋の橋脚がずれたということは、2本の橋脚の間に断層が走っていたからに他なりません。
巨大吊り橋を造るには、地層調査のためのボーリングをしたり、海底の表層を爆破したり、コンクリートを注入する工事が行われたのではないでしょうか。そうした大工事の真下に、死んだものと思われていた断層がエネルギーをため込んで目覚める時を待っていたのではないでしょうか。
私の脳裏には、海底にぽつんと開いたままになっているボーリングの穴から、断層面(断層破砕帯と呼ばれ、砕かれた岩石が詰まった脈状になっていることが多い)に音もなく海水が流れ込んでいるイメージが焼き付いて離れなかったのでした。
何百年、何千年という尺度で活動をしている断層は、たまには動いてそのエネルギーを解放するものです。その時、地上に文明がなかったら、大したことは起こりません。日本の歴史二千数百年そこらでは、自分の足下の断層が動くのを見ることはめったになく、それこそ不運としか言いようがありません。
しかし、ここ数十年、人間は地球の持っている大きな力のトリガーを引いてしまうほどの力を、それとは知らずに手にしてしまったのではないでしょうか。
その後調べたところにより、阪神淡路大震災については人災ではなかったろうと信じるに至りました。
その理由としてまず、断層の破壊は淡路島の陸上部地下で始まったということ。それから、仮に海底に穴が開いていたとしても、水圧と地圧の比は地圧の方が圧倒的に大きいため、地下水が噴き出すことこそあれ(石油はそのようにしてくみ出しますね。)、海水がゴウゴウと流れ込むことはないという点です。
第一、もしそうなら東京湾や、関門海峡、津軽海峡、備讃瀬戸大橋、しまなみ街道、遠くはドーバー海峡横断トンネルなど、人口が集まって巨大土木工事を行えば、いずれも早晩災禍に見舞われることになるではないですか。
でも、もし・・・・。
私の科学的妄想に、明確な反証を与えてくれる人が現れ、私を「世間を惑わすマッドサイエンティスト」とそしってくれることを望みます。