衆楽園のカモ

-ええっ、野生じゃないの?-

衆楽園の鴨たちは、訪れる人の心をなごませて、優雅な存在だなあと思います。
早朝に訪れれば、芝生にそろってあがってきて、芝の葉についた朝露を飲んでいるところが見られます。雨の日には芝の目からミミズか何か出てくるのでしょうか、いっそうたくさんあがってきて、人が近付いてもかまわずに何か一生懸命地面を探しています。パンや麩を携えてきてちょっと見せたら、人なつっこくついてきて次をちょうだいとせがむ姿も愛らしいものです。
こういった鴨たちの姿を楽しむならぜひ早起きして訪れて見て下さい。昼過ぎになるとお腹が良くなるのか、そう大きくない池の沖の方へと遊びに散らばってしまいます。

しかし、この鴨たち、いったい誰のものでしょうか。
あれは公園の所有で、風切り羽を切ってあるから飛べないのだという人もいます。
私は長いことこれは野性の鴨で、本来は野山を渡っているところを、たまたまサンクチュアリをみつけて居座ってしまったのだと思っていました。きっと、おどかしたら飛び立ってしまって、愛嬌を振りまく姿は見られなくなってしまうのだろうなと、みんなもそう思っているのではないでしょうか。

しかし、聞くところによると、彼らはアイガモだというではないですか。
ホームセンターで980円で売っているアイガモの子供が大きくなって、飼い主が困って公園に放しにきたものだということです。
私は、自分なりに納得して鴨とつきあってきたばかりにこれはショックでした。
確かに980円で鴨が飼えるというのは知っていましたが、庭に池があって、少々ガアガア言われてもかまわない優雅な屋敷がある人にだけ許された趣味なのだと思っていました。アイガモのひなはいつも売っていますが、アイガモが庭の池に浮いている家は見たことがないから、自分が会ったこともないぐらい選ばれた人たちの趣味だと思っていたのですが。

それじゃ、吉井川のちょっと下流にたむろしている鴨もアイガモなのでしょうか。
ちょっと人が(鴨も)信じられなくなってきました。
この記事を読んで、「そうか、カモの処置に困ったら衆楽園に捨てに行けばいいんだ。」とか、「そうか、アレはいぢめても逃げられないんだ。」とか考えないようにお願いします。 たとえアイガモでも、彼らはそれなりに自由に、楽しく生きているのですから。
それから、ホームセンターでは、明らかに買った人が処置に困るようなものを売ってはいけないと思いますね。昔は縁日のカラーヒヨコなんていましたが、こんなことは人間として恥ずかしいことだと思います。

わけを知ってしまったらちょっと奇妙なサンクチュアリですが、無心な鴨たちを一度ご覧になって下さい。(数はこれ以上増やさないようくれぐれもお願いします。)

おまけ:雨の日の鴨・宮川の鴨・加茂川の鴨


上記の記事を書いて2ヶ月、今朝も小雪の散った衆楽園の鴨たちに会いに行ったら、とうとう見てしまったのです。
寒そうに湖面を滑っていく鴨たちのうち、木陰から現れた一団が水面から一斉に飛び立って、高々と東の空をめざして飛び去っていきました。
どうやら彼らは正真正銘の野生の鴨だったようです。

飛び去っていく鴨の後ろ姿を見送りながら野生の迫力、気高さ、それに身近にふれることのありがたさ、なんだかうらやましさ、いろいろな思いが心をよぎったあと、最後に思ったのは「ああ、ホームページに間違いを書いてしまった。」
というわけでこのページの記述は誤りだったことを報告して訂正します。(01.01.25追記)


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