あってはならない信号

-路上観察シリーズ3-

20年ばかり前の話になります。

それは、津山市上田邑に大規模農道が開通し、家族そろってのドライブに初めてその道を使ったときのことでした。

この信号にさしかかった時、私の背筋を何か嫌なものが通ったような違和感がありました。
一緒に居た家族は特に何も感じていないようです。
「何か、この信号、おかしいことない?」
「え?なんじゃろうなあ。」

「あ!左右反対についとるんじゃ。」


これをご覧の皆さんはお気づきでしょうか、信号機の赤は普通右側についているものですが、その信号は左側が赤になっていたのです。
(写真は合成です。当時のものではありません。)

「そりゃあいけんでえ。」
「警察署にゆうたらなおしてくれるんかなあ。」

その日は恐怖逆さ信号の呪いもなく、無事にドライブをこなして帰ったのですが、帰り道にバックミラーに映った信号がまともなのを見て一層気味が悪かったことを覚えています。

さて、翌日の月曜日。
早速母が警察署に電話して信号機の取り付けについて誤りを指摘しました。

「新しく出来た上田邑の信号なんですけど、赤が左についていて、青が右についているんです。」
「はあ。それで?」
「だから、普通の信号なら赤が右についていて、青が左についているでしょう。それが赤が左で青が右についているんです。」
「そうですね。確かにおかしいですねえ。」
「おかしいでしょう。直しておいて下さいね。」
「わかりました。」

それで電話は終わったのですが、警察署の人はこのなぞなぞを何だと思ったのでしょうか?

翌週、この信号をまた家族全員が乗った車でで通りがかりました。


信号はまだ呪いのさかさ信号のままでした。

次の月曜日、今度は父が警察署に電話しました。

「上田邑の農免道の信号が左右反対向きについとるんじゃけど。」


「はい、それが何か?・・・」

「はよう直せっちゃ。危なかろうが。」


その週のうちに信号は取り付け直されました。

そもそも、信号の赤はどうして右と決まっているのでしょうか。
友人の指摘によると、道路左側に設置されることの多い信号機は、得てして街路樹が茂って隠されたりしますが、より右側に赤がついていると危険を避けるため停止しなければならないという情報が少しではあるが読み取りやすいという利点があるようです。
石川県から倶利伽羅峠を抜けて富山県以北の雪国に行けば、信号は上が赤になっていますが、これも同様の理由からでしょうか。
しかし、アメリカに行っても別に信号の色の並び方は変わっていないので、アメリカ人はこれを欠点として辛抱しているようです
本当の理由は、色盲の人でもその位置によって信号を読み取ることが出来る「お約束」が最優先されているのでしょう。


当ホームページは道路行政の欠点を指摘することを目的としているものではありません。が、 指摘しなければならない道路行政の欠点も確かにあるようです。

路上観察シリーズはこれまで公共物の変な点を指摘する内容ばかりとなっておりますが、これはひとえに個人所有のものを無断でHPに載せて笑い飛ばすのを我慢しているためであり、行政に特別の恨みを持っていたり、これに倣って行政のあら探しを推進するよう奨めているものではありません。念のため。

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