穴があったらのぞきたい、山があったら登りたい

-地図で探そう-


先日、川の立体交差を取材した作陽高校前の赤い橋の下には、もう一つ気になるものがありました。
作陽高校の下に、何だか穴があいています。

草を踏み分けて入ってみたら、高さの割に奥行きはそう深くありません。
高校の玄関を支える鉄骨の間には水がたまって踏み込めない水たまりが出来ていました。
その真ん中に小さな石碑が浮かんでいます。
ストロボのないカメラしか持っていないので、なんとか写真を撮ってくることが出来ました。

この場所を国土地理院の地形図で見てみると正方形の真ん中に点が打ってあるマークがあります。
横に「91.5」と書いてあるのはこの地点の穴の中の標高です。
これは水準点です。どうやらこの穴は国土地理院の仕業のようです。
しかし、これほど測量に不向きなところも珍しいと言えるでしょう。

場所は変わって東一宮を東西に貫く大規模農道の北側です。
道の北側は山方地区になると思いますが、現在マンションが建築中です。
建設車両や事務所に囲まれてこんもりした山がありますが、これは建設工事の関係で出来たものではありません。ずっと以前からここにはぽつねんと山があったのです。

以前から気になってしょうがなかったこの山に先日やっと登ってきました。
頂上には例によって小さな石碑がありました。
「四等三角点」これも国土地理院の仕業でした。
地形図では標高138.8mの山がちゃんと書き込んでありました。
高い山によくある三角に点の三角点マークがついています。
しかし、隣のマンションの方が遥かに高いのをどうしたものでしょう?

水準点と三角点はともに地形図を作るときの基準点となるものですが、水準点は主要道路の沿線にあり、三角点は山頂にあるものです。 この2つの役割は少し違っていて、三角点は主に地図の水平方向、平面上の位置を確定するために使われているもののようです。これはきっと平地から山を見上げるとき、空気の密度の違いから山が実際以上に高く測定されてしまうことがあるので、三角点が垂直方向の位置決めに不向きなためだと思われます。
これに対して水準点は標高の経年的な変化を測定することに主眼を置いて設置されているもののようです。

私が見つけた作陽高校地下の水準点は、百年近く使われている間に道路が嵩上げされたり、高校が建ったりして全く不適当な場所になってしまいましたが、その場所が消滅したわけでないので不便を承知でしぶしぶ使われているもののように思われます。
一方、山方の三角点はこれを設置するために土を盛って山を作ると、軟らかい山になって標高が変動するわけですから、設置したときに、すでに山があったのだろうと思われます。
こんなちっちゃな山が、他の中ぐらいの山をしのいで地図上で山頂のマークを誇っているのは、なかなかほほえましく思いました。


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