裸で手ぶらの距離測定(続編)

-深夜のもののけ-


このシリーズ、前回はいちおう締めくくるつもりだったのですが、何となく気持ちが落ち着きません。
その後も何度となく風呂場の共鳴を試しているうちに、極めて単純なことに気がつきました。
共鳴はド〜ドの間に2つしかなかったのではないか?
よく調べると確かに共鳴は2つ、ミとファの間と、ラよりやや低いあたりにあるだけです。
シの共鳴は上のドの共鳴と同じもので、波長が近いために共鳴と思っていただけのようでした。
私の頭の中にある音階は純正調音階ではなく、ピタゴラス音階か12平均率にむしろ近いものだったようです。

ファのあたりと、ラのあたり、そしてオクターブ上のドのあたりで共鳴するだけなら、元のドの時の節の数は3です。それが基本というものじゃないですか。
そもそも、私の鼻歌の音程が440Hzから880Hzの間あたりかなというのは単なる思いこみに過ぎなかったのではないでしょうか?

そういう疑いでいっぱいになっていた先日、家族でショッピングセンターに行ったので、それとなく楽器屋さんの前を通りかかり、店頭のピアノで自分の鼻歌の音域を調べてみました。
何と、ピアノの70いくつある鍵盤の下端から4番目まで鼻歌で歌えます。上はというと、鍵盤の中央からやや上までしか出せません。と、いうことは、風呂場で私が見つけた共鳴周波数も案外低いところにあるということになります。
とうとう、音程に関する何らかの測定器(あるいは正確な音程が作れる発信器)を入手しなければならないことになってしまいました。(本当に、なしでやるつもりだったの?)

まず、お役立ちツールならこの辺だろうと窓の杜を訪問してみました。
するとサウンドモニターFFT Waveというのがそれらしかったのでダウンロードしてきました。
それからマイクはPC9821Cbの付属品だったとおぼしきものをほじくり出してきました。
使ってみると、ううむ。面白い。が、高等すぎて使いこなせない。

鼻歌の低い方の極限を測定してみます。


もうこれ以上下は出せないというところで70Hzでした。
今度は高い方の極限を測定してみます。
「もののけ姫」のテーマ曲「もののけ姫」の一番高いところはE♭(=D#)になっていますが、演奏を聴きながらシボリ出して見たところがこれです。



700Hzには達していません。
つまり、前回の推定「鼻歌の周波数は700Hzぐらい?」というのは、全く誤りであったわけです。
ただ、このソフト(FFT Wave)の説明ではC=440Hzになっていない(C=261.6Hz)ので、音階の正式な高さはよくわかりませんでした。
カラオケの音源はCDから取っていますから、世間の音階は実はそうなのかも知れません。

C=440とした場合の各音階のオクターブごとの周波数を次の表にしてみます。

12平均率音階周波数表

手近にピアノでもあればこれによって周波数の測定も出来るはずです。

今夜は家族が不在のため、一人で風呂を沸かして測定です。
風呂桶がからっぽの場合はこの話で言う共鳴は起こりません。からっぽの風呂桶は底が床より低くなっているため共鳴に不都合なためでしょう。また、水面からちょっと頭が出て、体が音の経路を遮らないということも重要なようです。
子供を風呂に入れる必要もなく、パンツ一丁で風呂場から飛び出して来ても大丈夫な今夜が決行の時です。

まず湯に体を沈めていつもの共鳴を探します。
それからソが共鳴しないことを確かめてその前後の共鳴を探ります。
それから、ドの音を忘れないようにハミングしながら大急ぎで体を拭いてパンツをはきます。
「裸で手ぶら」には反してしまったなと、思いながらその音を調べてみたのがこれです。


ちょうど100Hz近辺だということがわかりました。
ゆっくり湯船に浸かって暗算です。
100Hzの音波の波長は、

340/100=3.4m

節は波長の半分で出来ますから

3.4/2=1.7m

この節が3つ出来て

1.7*3=5.1m

おや?この試みは最大寸法3mの風呂場の中で5.1m先にある何かを探し当ててしまったようです。
これにも頭をしぼりましたが、正解はわかりません。風呂場の角の直角で2回反射をしているために、入射波と反射波が別々の経路をたどり、全体で5.1mになる環状の共鳴経路を持っているのではないかと思います。

そうすると、風呂場の対角線の寸法は、

5.1/2=2.55m

となります。
メジャーでの実測と食い違いますから、これは顔と天井の角との距離を示しているのかも知れません。

いやはや、結果のシンプルさに比べれば何とも七転八倒なレポートでした。
しかし、私にしてみれば学ぶところの多い体験でした。
私は今夜からは黙って風呂に入るのでしょうか?
きっとそうはならないと思います。


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