初プリウス体験

-新世紀カーのカラクリ-


今日は21世紀に間に合ったハイブリッドカー「プリウス」で遠乗りをする貴重な経験をしましたので、私なりにレポートしてみます。

プリウスについての私の予備知識は唯一、「信号待ちで停まるとエンジンも止まる。」という慣れないとびっくりする一点でした。
それが経験したくてわくわくして乗りましたが、そのほかにも強力バッテリー冷却のための通風口をふさいだり、水を入れたりしてはいけない、とか、サイドブレーキはすべて左足で操作するといった注意を受けて車を貸してもらいました。何より重要な注意は「新車なんだからこするなよ。」だったのはいうまでもありません。

シフトレバーはハンドルの左側のインパネからにょきっとはえていますが、よく見るとシフトパターンがP→R→N→D→となっています。「B」って何?普通はD3とかDLとか、エンジンブレーキの利きをよくするために高いギアに入らなくしているポジションです。
「取扱書」をよく読むと、これは「ブレーキ」というポジションでした。きっと、エンジンブレーキの代わりに発電機のブレーキが効くのでしょう。このポジションでもアクセルを踏めば普通に加速することができます。感覚としては大型車の排気ブレーキのようなものでした。

ハンドルの正面にメーターパネルがなく、スピードメーターやその他のディスプレイは車の中心線上に並んでいます。これも最初はなかなか違和感があります。
前方の水色をした蛍光ディスプレイはデジタルのスピードメーターと、燃料計、各種警告灯などの一般的なものですが、手前の液晶ディスプレイはエネルギーの使用状態、燃費グラフ、オーディオ関係、カーナビ関係など、多彩なギミックが仕込んであって、これのためだけでもプリウスが欲しくなるような魅力を放っています。

室内は充分な広さを持っています。このへんはトヨタさんですね。ハイテク一点張りでなく、使う人の快適さを忘れていません。

朝一番の始動は普通にエンジンがかかりましたが、いくらか走った後の再始動はエンジンキーをひねってもエンジンがかかりません。全くスカな感じがします。それでいて、ブレーキを放すと一般のオートマチック車のように車はソロリと前に這いだします。いわゆるクリープ現象ですが、このときもまだエンジンは回っていません。全く音もなく車がすべり出すのも面白いことですが、「ブレーキを放す」ことが「モーターを回す」ことの引き金になっているのはよく考えると不思議です。
日産の普通のオートマチック車では、ブレーキを放すことによるクリープ現象は起こらないようになっています。ここはトヨタ流を守ったというところでしょうか。日産に慣れた私には奇妙ですが、クリープ現象による発進はなめらかで、燃費にも優しそうでした。

さて、今日一日、コンソールの真ん中にあるディスプレイばかり見ながら運転していたのですが、ハイブリッドのしくみはCM等でもおなじみのようにエンジンと、モーター兼発電機、大型蓄電池からなっています。アクセルの踏み方と、道路の状況によって刻々とディスプレイは状態を変えます。私がプリウスを常用したなら、必ずよそ見運転で危ない目に遭ってしまうことでしょう。

まず、一番燃費のよい状態は@です。一般の車でいうエンジンブレーキの状態で、プリウスは発電機を回し、蓄電池に充電します。この状態が多くなると、5分ごとの燃費グラフに「エネルギー回収」を表すご褒美の「E」マークが現れます。エンジンは全く使われていません。

エンジンが全く使われていない状態にはもう2種類あって、Aはごくまれにしか現れませんが、@からアクセルをじわじわと踏み込んでいくとこういう状態もおこります。

もう少しアクセルを踏み込むとBの状態に移行します。これは蓄電池によって走っている電気自動車状態です。この状態でも「瞬間燃費計」は無限大(40km/リットル以上)を示しています。
プリウスの低燃費の最大のポイントはこのBの状態にあると言ってもいいでしょう。試してみたところ、全く平坦な道路だと、時速50kmぐらいまでならわずかずつ加速していく能力があります。また、発進するときは必ずこのモードになっています。市街地で渋滞が始まって、ノロノロ発進と停止を繰り返すようになるとき、この電気自動車モードを超えないように気を使って走れば定地走行の時を上回る異常なぐらいの低燃費が見られます。

Bからもうひと踏ん張りアクセルを踏み込むか、上り坂などの抵抗があれば、ガクガクと軽い振動を感じるようになり、そのまま待っているとかすかにですがエンジン音が聞こえてきてエンジンがかかったことがわかります。
このときは、CDを飛び越して、初めEのような形でエンジンが使われ始めることが多いようです。

ここでさらにアクセルを踏み込むとFに移行して普通の乗用車として恥ずかしくない加速が得られます。

エンジンの力はさすがに強力で、すぐに目的の加速を達成できますから、しだいに電気を蓄電の方に回すようになり、Dを経てCの状態で定常走行に入るのが普通です。私が走っている間で最も多く見られたのはこのCの状態です。
しかし、私としてはこの蓄電池に向かう青色の矢印が何となく気に入りません。電気自動車状態の時は 燃費が無限大(最良)なのを楽しんでいながら、こうして車が電気をかすめ取るのは何だか許し難いのです。

そこで、アクセルを一度放すと、車はエンジンブレーキの@の状態になります。そこからじわっとアクセルを踏んでやると、Cに近い馬力を発揮するBの電気自動車状態に達します。さすがに加速には力がありませんから、後の車を気にしつつ、ノロノロ運転を頑張ります。

しばらくすると、ディスプレイに表示されている蓄電池の、水色が少し減ってきているのに気づきました。これは電気がすんできたのでしょうか。車がネをあげるのがちょっと楽しみです。
と、思ったら、信号待ちの時にエンジンが止まらずにGの表示が出て、堂々と充電を始めてしまいました。わずかな時間ですが、燃費最悪の状態が発生してしまいました。(なお、この状態を普通の車では「アイドリング」と呼んでおり、プリウス以外ではさほど怖れるに足らない状態です。念のため。)

走ってみながらあれこれチェックしてみたところ、瞬間の燃費は@ABが無限大(∞km/リットル) Cが10〜30km/リットル、DEが10km/リットル前後、Fは5km/リットル、Gはゼロといった感じではないでしょうか。

津山〜岡山〜津山の往復140kmで、往路・復路とも28.1km/リットルを記録しました。 5リットルのガソリンで一日の仕事をこなしたわけですが、復路のじわじわ上り坂(70kmで標高差100m、ただし緩やかな峠を含む)を運転した私の正直な感想は「疲れた。もうたくさん。」でした。


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