さび止めの護符(その2)

-三菱ジープの防錆実験-


私のセカンドカーは昭和55年式の三菱ジープ、J58、20年ものです。
わけあって5年前に手放していたのですが、通りがかりの中古車屋にまさにその車が並べられて、野ざらしになっているのを見て忍びなく、昨年買い戻しました。

車体についている傷は私が野山を走り回って付けた勲章そのままでしたが、塗装の下から盛り上がってくる腫瘍は私に覚えのないものがほとんどでした。
以前の私ならホルツサビチェンジャーを塗り重ねて真っ黒にしていたのですが、サビチェンジャー処理後の経過を観察してみると、サビチェンジャーの下からまた錆が盛り上がり、いくら塗り重ねても根治できない場合があることを知りました。
そこで、車を買い戻してから後は錆を見るととにかく錆びた部分の塗装をはがし、浮き錆を除去し、ワイヤーブラシでこすり、銀色の鉄がのぞくまで磨いてから同じくホルツのジンクコートを塗ることにしました。単なる強力皮膜のサビチェンジャーよりも、イオン化傾向の違いにより鉄を守るジンクコートの方が風水的に優れていることを悟ったからです。

さて、今日は珍しく時間がとれたので、いつになく丁寧に車を掃除して、さび止めの護符をどこに施工しようかと考えました。

車の後部にニョッキリ突き出している円筒形のテールランプとウインカーは、4個のうち3個までもが板金塗装の時に交換されたのですが、残る1つもあまりよくない状態です。
レンチで外してみようと車の後側に手を入れたら何だかネバネバしています。
ははあ、板金屋さんのいうさび止めはこれかと思い当たりました。
車体まわりで、鉄と鉄の間に隙間があるような部分は、水分が入り込んだ場合、なかなか出ていかずに急速に錆が進みます。近頃の板金屋さんはそうした怪しい隙間があるとグリス状の油でそこを充填するもののようです。しかしこれではネジが気持ちよく回りませんがな。

ナットをゆるめていくと、テールランプの下から乾いた泥がパラパラとこぼれてきます。
テールランプの配線は直径3cmほどの穴を通って車の内側から外板を貫通してテールランプの筒に入ってきています。ジープの性質上、外板イコール内装ですからテールランプを取り外したらこの穴からタイヤの下半分が丸見えです。
私が泥んこ遊びに行くたびに泥水がこの穴から筒の中に入って、ご丁寧にパッキンにとらえられてチャプチャプ溜まるわけです。

筒の中は半年前に板金屋さんが施工したさび止めグリスに大量の泥が練り込まれて、駅のプラットフォームに落ちているガムのようなものになってこびりついていました。
これでは不都合というのを越えて設計ミスではないでしょうか。
ま、50年前の設計に文句を言っても致し方ないのはそうですが。

まず、浮き錆の除去です。ドライバーの柄で、筒をコンコンたたきます。泥やら砂やら赤錆やら、出るわ出るわ。次はワイヤーブラシでさんざんこすります。表面におできのように凸凹が出来ている部分は、この段階であっさり穴が開いてしまいました。まあ、通風換気にはよいかも知れません。

これを見てあきらめがついたので、次は田宮模型のマークがついたピンバイスで真下になる位置に排水口を開けてみます。
本当はもう少し大きめな穴がいいのですが、道具が充実していないために道具なりな小さな穴になってしまいました。

それから、磨き落として鉄を露出させたところにジンクコートをしっかり塗ります。
この間に作っておいた護符(前回製作した亜鉛板)に、こびりついていたものをあらためて磨き落とし、水洗いして干しておきました。
どの護符が適当かしばらく考えたのち、乾電池の底の部分だった丸くて厚手の亜鉛板をこのテールランプの筒の中に仕込んでおいてみることにしました。
また、グリスのネバネバに悩まされながら、テールランプを取り付けて、今日の作業は終了としました。

結局この部分はジンクコートに守られ、亜鉛板はその補強にすぎないのでしょうが、こうしてサビの急所を解剖して、現場を目撃できたのは幸いでした。もっとひどかったあと3個の筒状パーツをバラしたとき、板金屋さんは何を目撃したことでしょう?
結局、車のサビに一番いいのは屋根つきシャッター付きの乾燥した車庫にしまうことに尽きるのですが。

なお、このシリーズは「今日の必ずトクする一言」(tomoya.com/)
車のサビのナゾ
クルマの防錆塗料のナゾ(ホルツサビチェンジャーを考える編)
等が底ネタになっています。


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