真夏の救助作戦

-データ転送のガジェット-


ブロードバンド開通を境に、Webの更新を大いにさぼってしまいました。
ひとつには、ブロードバンドを利用するためのハードウエア、ソフトウエアの設定をあれこれ試して楽しんでいたことが大きな理由です。
ネットワーク接続の共有、パーソナルWebサーバ、家庭内LAN構築などですが、これらの詳細についてはテレビ津山に支払う契約金額に関係することなので公表することができません。
要するに、ブロードバンドを利用したサーバの可能性を探っていたのですが、奥様が「あのつけっぱなしのパソコンを何とかしなさい。」と指示したためにすべての計画が灰燼に帰してしまいました。
家庭内サーバとは、完全無音で、インジケーターも点灯せず、願わくば電力も食わないものでなければならないもののようです。

それが一段落して、次の記事に着手したのが約1週間前でしたが、記事を書き上げて保存しようとしたときにトラブルが起こりました。

パソコンから小さな「キュルキュル」という音がし始めた途端、ハードディスクのアクセスランプが点灯しっ放しになり、ハードディスクの読み書きができなくなりました。
それまでの作業時間が3時間ほどでしたから、熱的な問題が起こったのだろうと思い、マシンを冷やしながら作業をすれば、データ退避のための時間稼ぎができると判断して、電源を落としました。
この「キュルキュル」音は、ちょうどケーブルテレビ接続ができた頃から始まっており、電話モデムの音にそっくりだったため、何でモデムが動くんだろう?電話代がかかっていたらいやだな。と、思っていたところでした。断続的に起こる現象ですが、だんだんひどくなっているようです。残された時間はあまりありません。

デスクトップに空のフォルダを作って、避難すべきファイルを全てこれにコピーします。
メールの中身、マイドキュメント、ダウンロードしたファイル、ポストペットの設定、お気に入りショートカット、デジカメの写真、ホームページの中身、などです。
昨年の11月に再構築して、データを引っ越したばかりのハードディスクですから、経験が万全に生かせました。しかし、半年あまりしかハードディスクが持たなかったのは惜しいことです。
退避用データが300MBあまりになったところで、ハードディスクの不具合が限界に達したので、この日の作業は終わりになりました。

さて、翌日。退避用データはどうやって沈み行く船から救い出したものでしょう?
構築したての家庭内LANを使ってWindowsファイルの共有を試してみましたが、160分ぐらいかかると予告されて断念しました。
これにはなぜか別のマシンからデータを読むのと、データがあるマシンからデータを送り出すのとで速さが違うようです。データを他のマシンから呼び出す方が1.5倍ぐらい速いようです。
10BASE−TのLANがこれほど遅いとなると、私のハードディスクからデータを救出するのに間に合う方法が残されているのでしょうか?

方法はいくつかあります。

  1. 新しいハードディスクでマシンを構築してから、現在のハードディスクをスレーブ(Dドライブ)とし、それからデータを救出する。
    (欠点)新しいマシンが出来上がるまでにこのハードディスクの寿命が尽きない保証はない。
  2. 現在のハードディスクをスリム化して(アプリケーションを極力削除して)新しいディスクにそっくりコピーする。
    (欠点)大掛かりなコピー作業や、ハード的な組み替え作業にハードディスクが耐えられる保証はない。それから、新しいハードディスクはWindows98SEにしたい。(今はSEでない98)
  3. CD−Rに必要最小限のデータを焼きこむ。
    (欠点)焼きこみ中にハードディスクの不具合が起きたらCD−Rはパーになる。
  4. 100BASE−TXのLANカードを増設して転送する。
    (欠点)マシンの負担は少ないと思われるが、いずれにしても時間との勝負になる。
さて、残された時間はあと2時間ぐらいのようです。LANはもうあてになりません。

結局、CD−Rに焼きこむ方法を試してみました。
4倍速、チェックなしの方法を選んで、無事にデータの保存はできました。

世に「ガジェット」という言葉があります。
意味は「物事をいっきに解決する方法」というぐらいの言葉でしょうが、ニュアンスとして「手順はややこしいけれども、解決するときは瞬時に解決する」という意味があります。
(そのまた元の意味は「からくり仕掛けの役に立たないがらくた」とのことです。)
私がこの言葉を学んだのはScientific American(月刊サイエンス)のずいぶん古い記事でした。

非常に多くの人の身長を比較したいときどうするか。という例題で

  1. それぞれの人の身長をパソコンに入力して抽出プログラムにかける
  2. それぞれの人の身長の長さにスパゲッティ(茹でる前の棒状のもの)をカットし、名前を書いておき、全部出来上がったら束ねて立てて、トントンと下端を揃える。そのとき一番上に出っ張っているのがもっとも身長の高い人の名前が書いてあるスパゲッティである。
1.が常識人の答えであり、常識的な事態に対応できる方法です。
2.がガジェットのやり方であり、非常識なぐらいサンプルが多い場合にこちらの方が速く処理できる計算になります。ただし、あくまでも計算上です。
今回、CD−Rによりデータを退避したのは、「手順がややこしくて、最速とは言い難いが、うまくいくときは一瞬で物事を解決する」という点でガジェット的だったなあと思いました。

それから、楽しくマシンを再構築し、半年前に退役したはずの5.1GBのハードディスクでWindows98SEが動き始めました。
モデムのドライバがまたまた見つからなくなってしまったので、潔く引き抜いておさらばしました。
それから、救出されたデータを再配置して、OutlookExpressのバージョンが違ってしまったためにここ3年分のメールの中身も復元不可能と知りました。

最後にアドレス帳を探したら、沈没船の中に忘れていました。
ハードディスクを古いほうへつなぎ直し、立ち上げたらScandiskが始まりますが、さっさと終了させます。これが終わるまで待っていたらデータの救出はできません。
wabファイルの救出はLAN経由でたったの5秒でした。
その直後、壊れかけていたハードディスクは「キュルキュル」音を発して沈没して行きました。
これが、救出作業に他のスマートだが時間のかかる方法をとっていたら後悔する結果を残すところでした。


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