志戸部の侵略、林田の防戦。

-数値地図で見る見えない戦争-


この3月に、津山市内で2店目の生協店舗が開業しました。
1店目が「コープ院庄」だったので、次が出来るな。インターチェンジ名に倣えば次こそ「コープ津山」かなと、このお店がどんな看板を掲げるかを心待ちにしていました。
それというのもちょうどこの場所は、誰にも見えないけれども水面下で戦われている国獲り合戦の激戦地帯の真ん中だったからです。

ここで開業したコープの北に津山を代表するチェーンストア「マルイ」と「アイム天満屋」が互いに隣接しています。

マルイ志戸部店
津山市林田160−8 昔の呼び名は「チェリーマート」

アイム天満屋志戸部店
津山市沼848−16 昔の呼び名は「みぞうちストアー」
電話帳で調べてみると、この2店はいずれも「志戸部(しとべ)」に建っていないのに「志戸部店」なのです。
これも3月に公開された国土地理院の数値地図を使ってみれば、この2店が志戸部に所属していないことが一層はっきりします。
(右の図がそうですが、無断転載で済みません。)

たぶん「林田(はいだ)」は「はやしだ」と誤読されるおそれがあり、またグレーな色を連想させるので、お店の看板に使いにくかったのだろうとは思います。
林田はエリア的にかなり広い範囲を指し、B'zの稲葉君が通った小学校は「林田小学校」です。(林田小学校は実は「川崎」に立地しています。)
林田小学校と反対の端にある(1.3km離れています)ここを林田と認識することは、津山に住む人にとってもあまり自然なことではありませんでした。

「沼(ぬま)」には誤読のおそれはありませんが、やはり連想する色はグレーな感じです。
沼の大部分はこの西の丘陵地の向こう側にあり、ずっと昔はまさに沼地だったそうですが、今では区画整理されて閑静な住宅地が出来、大通り沿いは商業地になっています。
オダギリジョーの生家はこの沼です。また、遠来の観光客で稲葉くんメモリアルロードを巡った方はここの「くらや」で和菓子をお土産に買うこととなっています。
しかし、丘陵地を隔てて弥生町(やよいちょう)の向こうのここが沼だとは津山在住の人もあまり意識していません。

そこで誤読のおそれが少なくて、なんとなく印象的な「志戸部」を店名に選んだのも無理はないとは言えるでしょう。

ところが、この「軒を借りて他家の看板を掲げる」商法が問題になる時が来ました。
この2つの店から500m南に離れたところに津山信用金庫が支店を開業した際、「津山信用金庫志戸部支店」の看板を掲げてしまったのです。
地元の町内会の「ここは志戸部ではない」という猛烈な抗議により、すぐさま看板は「津山信用金庫林田支店」に掲け替えられたのでした。

そうした経緯のため、私は林田の端に位置するこの新しい生協が何という看板を掲げるのかわくわくして見守っていたのです。

結果は「コープ林田」で、丸くおさまりました。
しかし、こうして名前にこだわれば私は「岡山市民生活協同組合」というのが気にいりません。
「〔岡山〕市民生活協同組合」であって、「〔岡山市民〕生活協同組合」という意味でないことは頭ではわかります。でも何だか津山市民の私は〔岡山市民〕の看板のお店には抵抗があるのです。


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