庭先でアウトドア料理

-燻製をつくる(ニジマス篇)-


先週の日曜日、ニジマスを8尾ばかり貰いました。
私の父が釣りバカであるため、こうした活きのよい魚を貰えるチャンスは多いので、子守りの片手間にできる暇つぶし法探しのために、突然「これで燻製を作ろう。」と思い立ちました。

早速Webで燻製の作り方を検索してみて、おおよそ次のような手順だということがわかりました。

  1. 内蔵を出し、形を整える
  2. 塩水に漬け込む
  3. (保存性を重視する場合、濃い目の塩水に漬け塩抜きをする)
  4. 乾燥
  5. 燻煙
  6. 乾燥
  7. (ハムならボイル等の処理、熟成など)
燻製というのはなぜアウトドアとイメージが重なるのかわかりました。
台所でモクモク煙を出したら奥様に道具もろとも叩き出されるからです。

道具はというと

これも横着を考えれば極めて安価で済みそうです。

まず、工程その1とその2ですが、奥様がさっさとやってくれました。
通常の漬けこみ液はソミュール液といい、15〜20%の塩水に砂糖やスパイスが入っていますが、ウチはいきなり「ミツカン追いがつおつゆの素(業務用)」に料理用酒です。
いきなりニジマスにかつを味はやや反則くさい気がします。

買い出しにホームセンターへ行くとチップは500円ほどで売っていましたので、サクラのチップを買ってきました。
スモークウッドがあれば、超大型線香のようなものですから非常に簡単に燻製が作れます。きっとアウトドアショップにあるのでしょうが、安価・思いつき・いい加減をポリシーとしているので、今回はあえて力技にチャレンジしてみます。

熱源は倉庫を片付けていた時に出てきた由来不明の木炭にしました。
これをアルミの使い捨て皿に載せて火をつけ、その上に同じアルミ皿を載せてチップを加熱すれば煙が出るという寸法です。炭に直接アルミ皿を載せるのは不安定ですから、100円ショップでステンレスのふるいを見つけて買っておきました。

箱は立派な「燻製箱」を売っていたり、猛者はスチールロッカーを使っていたりするようですが、世間の標準は段ボール箱となっています。
燻製⇒アウトドア⇒運搬性がよいもの⇒軽量⇒段ボール箱 という必然の連鎖があるので、ツウの選択に従います。
家中捜したところ、以前980円で購入したATXフルタワーケースの段ボール箱をみつけました。
中身のATXケースそのものも魅力的な燻製箱候補だったのですが、灰やヤニに汚れた鉄の箱はどうにもならない粗大ごみになりそうなので段ボールで決まりです。

ここまでの材料費はチップ585円、アルミ皿(6枚)128円、針金90円、火ばさみ198円、ふるい100円(いずれも消費税別)になりました。

そこまでは順調に進んできたプランですが、いざ煙をモクモク出す時間はなかなか取れません。
気がついてみたら土曜日。6日を経過して漬けこんだ魚が食べられるかどうかきわどい時期になってしまいました。
冷蔵庫を開けて魚をクンクン嗅いだ奥様が「魚臭いけど食べられる・・・と思う。」と言った言葉を頼りに作業開始です。

針金で釣り針状の金具を作り、魚の顎を引っ掛けて吊るします。腹は煙がよく当たるようにつまようじで突っ張りをしておきます。
乾燥工程は普通風乾といって、日陰に半日ほど干しておくのがよいのですが、炭火で直接乾燥することにしました。
庭の人工芝を剥がしてアルミ皿を置き、炭を置いて百円ライターで点火し・・・ようとします。
しかし、炭に火がつきません。ガスコンロに炭を載せてしばし赤熱してから外に持って出ました。
段ボールには上部に針金を通して魚を引っ掛ける場所を作りました。
炭火に魚を吊るした段ボールを被せて、そっと触ってみると熱くなっており、なかなかいい感じです。

40分ぐらいしてそろそろ煙を出してもいいかな?と箱を動かすと、ドサリと音がして魚が1匹落ちてきました。
箱の中が熱過ぎたため、乾燥する代わりに蒸し魚になり、柔らかくなって顎が千切れてしまったようです。
尻尾を突き刺して、砂がついたまま吊るし直しました。

次は予定通り炭火にふるいを乗せ、その上にチップを載せた皿を重ねます。
?・・・煙が出てきません。ふるいが完全に空気を遮断するため、炭火が消えそうになっていました。
ふるいをずらして置き、炭火をうちわでひとあおぎしたら、しばらくすると煙が出始めました。

しばらくすると、ドサリ。2匹目の魚が落ちてきました。

今度はどこを突き刺してもグニャグニャで吊るすことができません。おまけに煙でいっぱいの高さ70cmの箱の中に下から肩と頭を突っ込んで魚を吊るし直そうとしているので、目も痛いし、息もできません。その上に、程よく蒸された魚がぶら下がってポタリポタリとさかな汁が滴ってきます。とうとう、吊るし直そうとした2匹目は私の頭上から落下し、潰れて砂まみれになってしまいました。
こんなことでは燻製ができるまでに何匹が落下して失われるでしょうか。

そこで箱を解体してキッチングリルから拝借してきた焼き網をセットし、魚を寝かせて再開です。

燻煙は1時間半ぐらい行いました。段ボール箱を見ていて煙が出なくなったらチップが真っ黒になって炭になってしまっていますから交換です。だいたい30分ごとぐらいの交換でした。
その間、横の砂場で遊びたがる子供を追い払い、干してある洗濯物や布団に煙がかかれば段ボール箱の切れ端であおぎ、煙が漏れすぎているところを補修し、子供に何をしているのかと聞かれれば「料理。」と答えるという、何とも優雅な時間を過ごしました。

8時半に魚を吊るすところから始まって、12時15分、みんなが食卓についたので燻煙作業は終わりにしました。
銀色だったニジマスが、金色に変わっています。銀色の針金も金色に変わっているところを見れば、燻煙そのものはうまくいっているようです。
毒見に近い気持ちでおそるおそる食べてみると、う、まい?・・・どこかで食べたような味がします。
酒のつまみのスモークサーモンの味です。
自信を持って子供にも食べさせたら、あっという間に大半を食べられてしまいました。
塩味がやや薄かったようですが、初めてで、こんないい加減な作り方をした割には上出来だったといえるでしょう。

本日のまとめ

参考文献NOBUの燻製ホームページほか

その後、ニジマスの提供元の父から試食レポートがありました。
「焼いていないのかと思って焼き直した」
「もっと甘かったりしないのか」
「確かに煙の味はしたが煙の味しかしなかった」
・・・要するにものすごくはうまくなかったようです。
今回の実践(実験?)は、めんつゆによる味付けが薄かったところに難があったようです。
この試みの中では画期的でオリジナリティあふれる部分だったのですが、その辺を勉強し直して再度挑戦することとします。

不幸にも、子供が熱を出してしまい、仕事を休んで看病(家にいればよいが、出かけてはいけない)する羽目になりました。
一方で、スモークウッドはジャスコに売っていたよという情報を得ました。
すると、なすべき事は燻製ですな。

喜び勇んでジャスコに出向き、スモークウッドとししゃもと、かまぼこと、なるべく安そうなソーセージを買ってきました。
今回のプランは初めから味付けがしてある安いものを買ってきて、できるだけ簡単に燻製を楽しもうというところです。こうすることで最大限子供の世話をしながら、スモークウッドの性能を検証することができるでしょう。
スモークウッドは小ぶりなもので、2本780円、1本が3時間煙を出しますが、半分に折って使用することもできます。コスト的には先に購入したチップと同等で、熱源の世話が不要な分楽ができそうです。

はりきって朝7時半から燻煙を始めたら、9時には出来上がった・・・はずなのですが、あまり煙がついていません。ソーセージとかまぼこは何とかなる範囲ですが、ししゃもはべとべとして生のままです。いや、蒸し魚になって一層生の感じを増しています。
やはり炭火をおこして乾燥を行う必要があるようです。前回の炭火にチップの方法をもう一度やってみます。

しかし、今回は何度火をつけなおしても炭火の火力が弱く、片手間にやっているとチップから煙が出るところまでいきません。
材料は乾燥どころかしだいに汗のような水滴がついていき、べとべとは次第に悪化していきます。
午後3時すぎまでかけてスモークウッドを併用し、煙はついたもののべとべとの状況が改善しないので、ししゃもはガスコンロでちょっと焼いて仕上げにしました。

どうやら原因は燻製箱が底抜けで、地面の上に直接置いてあるため、地面から出てきた水蒸気がこもっていたせいのようです。
材料が乾燥せず、後の熱処理もしない状態では、一応燻製といっても保存性は全くありません。
その日のうちにししゃも12尾、ソーセージ10本、かまぼこ1個のほとんどを食べてしまったところ
食べ過ぎのため燻製禁止令が出されててしまいました。
ぜひとも保存性のある燻製技術の修得がしたいものです。

今回のハチャメチャ燻製、お味の方は・・・?
私は満足していますが、万人向きかどうかは依然として不明です。


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