競馬必勝手を探して(その4)

-やっとつかんだ110円-


当サイトの掲示板の方へ「豪徳寺の玄三券法」を模索する方々が集まって、知恵を貸してくださったり、意見を交換したりと賑わいを見せています。
これほど盛り上がってしまったからには土曜日の子守りの時間を活かして、机上の空論を実践編に高める努力をしてみなければなりませんか。

私としては玄三券法は実在する、そして儲かる、しかし馬鹿馬鹿しいやり方である。という信念を持っています。
それは、原典の「馬券学入門」に描かれている「豪徳寺の玄三老人」がフィクションというにはあまりにもリアルに描かれているからです。そして、文中の端々に書かれているヒントがまた競馬に精通した人にしか言い得ない真実を含んでいるからです。

生涯に買った馬券の総額が1万円に満たないビギナーの私が何を根拠にそんなことを言うかというと、玄三老人の風体や言動が、長年株式や商品の相場を張っていて、そこから利益を上げることができる相場師の風格を持っているからです。
これまた突飛な飛躍ですが、相場と競馬は「敵を知り己を知らば百戦危うからず」という共通点を持っており、相場での成功者は必ずや競馬の世界でも得るものがあると私は考えています。
玄三老人は多分平日は株式や商品の相場を張っていて、相場が動いていない週末に余禄として競馬を楽しんでいるのだろうと推察されます。
競馬、いや、馬券学を志すものは相場の定石を知らなければならないと、今はリンク切れとなってしまった競馬投資法データベースでも示唆されていました。

競馬と相場の共通点とは?「いずれもギャンブルである。」という答えでは視点が低過ぎます。実際、どちらも投機(投資)ではありますが、株式相場などはそれを本業にしている方々もあるほどまっとうな(?)商行為です。

これに関してギャンブルを控除率の面から分類してみると面白いことに気がつきます。
まず、最も穏健な賭け事、宝くじの控除率は50%ほどです。1ユニット全ての宝くじを買い占めたらお金は半額になって返ってくるという寸法です。
競馬は私の分類ではその次に穏健とされていて、控除率は約25%です。この競馬必勝手シリーズの実践を通じて私が痛いほど思い知らされた数字です。
次に街中で看板を揚げて営業していますが、家族連れで行ったりすることがまずないギャンブルがパチンコです。これの控除率は「確率・統計であばくギャンブルのからくり」によりますと2.5%ほどです。

どうも世間の言う「穏健な」ギャンブルというのは、速やかに元本がなくなってションボリと旦那が帰ってくるものを指すようです。お上に言わせれば何度もコロガシが効くギャンブルはのめり込む人がいて危険と言うことかもしれません。
この伝でいけば、株式や商品の相場は1%に満たない手数料を払えばあとはゼロサムの世界ですから、最も程度が悪い危険なギャンブルであると言われても仕方ありません。
本当に儲けようと思うなら、少なくとも宝くじに頼るのはやめようねというのがそろそろ常識になってもいいと私は思うのですが。

話がそれました。競馬と相場の共通点とは?「対象を研究し、資金を投機することで利益を得ようとする知的ゲーム」とムズカシク言っておきましょう。(それはギャンブルと同義です)
相場の世界にも万年下手がいますし、相場で飯を食っている人もいます。その違いは研究対象の選び方にあります。

万年下手は上場されている株の全てに万遍なく目を配っていて上がりそうな株があれば飛びついて買います。成績は日経平均に連動しています。相場全体が騰げるときは利益を上げますが、相場が下がりつづけている間もしきりと仕掛けをしては失敗しています。そうして次のチャンスが来たときには前のチャンスが来た時程度の資金しか持っていません。

相場で飯を食っている人は銘柄を特定しています。多くて5銘柄までを見守っていて、地合いが悪いときは休むということを知っています。研究の対象はもはや値動きやニュースではなくて、自分の資金配分、危機管理の方法、ナンピンやツナギと呼ばれる相場技法です。
私が先に「敵を知り己を知らば百戦危うからず」と書いたのはそこで、競馬で利益を追求するのなら、馬の研究ばかりでなく、自分が使える資金配分、馬券を縛る統計法則から身を守る方法、必勝といわないまでも一貫した投資法則、そういった自分自身の側に用意されておくべきものを最低限身につけておく必要があるのではないでしょうか。

またまたノーガキが長くなりました。私は相場の世界でもビギナーに過ぎません。しかし、本に書いてあった玄三老人の姿や言動の中に、相場師としての教養や深みがひしひしと感じられましたので、これはフィクションではないぞ、彼の跡を歩めば何かある。と、思ったわけです。

さて、2月14日土曜日。妻は昼すぎまで仕事で不在です。子供2人を子守りしながらであれば何をやっても構わない日です。といっても上のおねえちゃんはともかく、2歳のボクちんはまだ目が離せない暴れん坊です。
競馬ブックを買っていない今日は、出馬表や直前オッズを知らなければ話にならないのでインターネット投票のWebページにアクセスしました。(今までしたことなかったの?そうです。)
おおっと、「馬連オッズ(人気順)」なんて項目があるじゃないですか。こりゃ便利。

レース枠連人気順位オッズ 購入金額払戻金額
11-61-4121000
13-52-3151000
13-61-38.41000
1R計3000

今日の投資方針は玄三老人のこの言葉に従っています。

配当が千円から二千円になる馬券を買ってゆかないと黒字にならない。もうすこしひろげるなら、千円から三千円の配当になる勝ち馬投票券を買いつづける。そうすれば、的中率はすこし低くなるが、年間を通じて黒字になるよ
その割にはのっけからオッズ8.4倍なんて馬券を買っています。これは7頭という少頭数のレースに迷ったためですが、しっかり1番人気と2番人気の組み合わせは外してあります。オッズの低い馬券は的中しても損になる場合があるからです。
結果は1−2、15,030円の払い戻しなら、私の投資法に従えば外して当然、狙ってはいけない馬券でしょう。

2Rは投票する馬券を決めて、締め切りまであと2分のところで投票入力をしていたら、パソコンが無反応になりました。1分ぐらいしたら画面が崩壊してしまい、久々に見る完全な暴走でした。
あとで気がついたのですが、JRAの投票ページはボタンを押して情報ページと投票ページを行き来するたびに新しいブラウザ窓が開いており、リソースが枯渇したために落ちたもののようです。

レース馬連人気順位オッズ 購入金額払戻金額
311-132-411.21000
32-112-313.21000
36-112-713.61000
31-112-614.11000
3R計4000

このレースを買う頃にはボクちんが退屈しきってしまい、本を読んでくれとせがんだり、プラレールを組み立ててくれと手を引っ張る、机の角に頭をぶつけて泣く、オシッコが漏れる、勝手に出てゆくなど、知的ゲームに取り組める余裕など完全になくなってしまっていました。お姉ちゃんのほうはとっくに逃走してしまっていますが、こちらはまあ危険はないでしょう。
3Rの買い方は、一応単勝オッズを参考までにメモした後に、馬連オッズ(人気順)のページを表示し、オッズ10倍台の馬券を全て買うという形になっています。20倍台の馬券も全て買えばヒネクレ券法は完璧ですが、資金の都合で無茶なことはできません。全てのレースで同じ金額を賭けるというのも玄三券法の要点です。
オッズは30分も見守っていると次第に変化していきます。特に人気の馬は直前に急激にオッズが下がります。
結果は10−13、2,090円の払い戻しなら惜しいところでした。1番人気と4番人気の組み合わせです。玄三老人がじっとオッズを見守っていて、直前になるまで馬券を買いに行かないのも、締め切り直前のオッズの変化を賭けに反映させるためだと思われます。

レース馬連人気順位オッズ 購入金額払戻金額
43-61-312.41000
43-113-413.41000
46-91-213.41000
49-112-413.41000
4R計4000

4Rになると、オッズを見て考え込んだり分析するのをさっさと切り上げて、ボクちんの機嫌をとることに専念したのでずいぶん楽になりました。もはや何という馬が走っているのかさえチェックしていません。玄三券法の再現といえば聞こえはいいですが、横着以外の何物でもありません。
結果は1−3、3,500円。取らなくてよかったレースとはいえ、負けつづけに少しさびしくなってきました。

レース馬連人気順位オッズ 購入金額払戻金額
512-141-610.41000
56-141-510.51000
57-141-713.41000
510-122-624.71000
52-102-325.41000
5R計5000

多頭数に迷い、あせりも手伝って5枚買ってしまいました。
こうなると一貫性を失った時点で負けです。
結果は10−14、390円でした。これも的中しなくてよい馬券です。
買ったあと、結果も確かめずに逃亡したままのお姉ちゃんを探しに行って昼食です。

オッズ20倍前後の馬券というのは、25枚ぐらい買わないと的中しないよという意味です。
これを16枚買って当たらなかったから投げ出すというのでは根性がないのですが、私のこの研究は当初10000円の資金が尽きたらやめるという掟がありますから、無茶もほどほどにすべきと考えました。

これで今日の私の競馬は終わったはずだったのですが、午後になって一瞬だけ暇ができました。

レース馬連人気順位オッズ 購入金額払戻金額
94-71-315.51000
92-41-417.41000
93-41-717.51000
97-112-322.11002110
9R計4002110
総計20002110
現在所持金7840円

10Rを買う準備もできていたのですが、すでに2000円を投じて勝ちがないという状態にくじけて買わずにいました。
9Rが的中したところで110円の利益。こりゃ勝ち逃げに限ります。

今日はたまたま幸運にめぐり合いましたが、こんなやり方では危険や労力の割に報酬が少な過ぎます。
これもまた玄三券法を踏襲しているといえばそうですが。

玄三券法のコロンブスの卵は、一つには徹底して「当たったら損になる馬券は買わない」態度にあると思います。それは何かと言えば、オッズが2倍、5倍、7倍、10倍・・・という馬券があったとして、2,5,7倍の馬券を各100円買って、2倍の馬券が的中したら300円の出費、200円の収入で結果は損です。これを避けるためにオッズの低い馬券は多く買うという手もありですが、人気上位の馬は研究され尽くしていて、利益率は限りなく75%に近くなっています。すなわちこれは「オッズの低い馬券は買うな」と読むことができます。ただし、これは万馬券を狙うようなロングショットではなく、1日12レースのうちに数度は見ることのできる確率で的中しなければなりません。これが配当が千円から三千円の根拠です。

これには別の深みがあって、私が外して当然と見逃したレースのように、順当なレースが数レース続くと、馬券を買う人の心理の方に変化が現れます。次のレースもまた順当な、人気上位の馬が1・2着になるだろうという予想で馬券が買われ、結果として不人気の馬券の配当が高くなるのです。これはレースの結果を左右するものではありません。しかし、一定のオッズの馬券を買い続けていくと有利な状態が生じるのです。逆に荒れたレースが続くと順当な馬券のオッズが高くなり、これもやはり一定のオッズの馬券を買い続けて行くことに分があります。

この方針を守るには、投資家としての最低限の資質が必要です。それは自分の資力の限界を知り、1日のレースを通じて適正にそれを配分する計算です。玄三券法に着目するならコロガシという言葉は忘れなければなりません。
1日に12レースがあり、それぞれのレースにオッズ10倍〜30倍という馬券(馬連)は10枚から20枚あります。1日の資金をそこまで細かく割って、25枚中24枚は外れる馬券を淡々と買い続けることができるでしょうか?

私がこれを実行して負けつづけている間、「ああ、これが相場にいうナンピンと同じだなあ」と強く感じました。

例えば株式市場でプロの相場師がある株を1万株買うとします。
シロウトは証券会社に電話をかけて「○○株を1万株!」と注文するのですが、プロはまず3万株が買える資金を用意します。(なぜ3万株分かというのも奥が深いのですが今回は割愛)
それから、株が下がる兆候を見たらまず1000株買ってみます。
さらに値が下がって最初の1000株が損になってきたら2000株買ってみます。
それでも値が下がったら次は3000株買い、さらに下がったところで4000株買います。
すると買った値段の平均値は3000株を買ったところよりやや上のところになります。
分割の方法には1-3-3-3とか1-3-5とか流儀があるのですが、プロは決して一発必中を狙いません。
じゃ、3000株買ったところで(総資金の10分の1)株価が上がってしまったらどうするんだ?という疑問もあるでしょうが、そういう時は3000株が現に利益になっているのですから、それ以上資金を危険に晒さなかったことを喜びながら勝ち逃げするのです。
これが相場技法でいうナンピンです。

最初に仕掛けた少枚数が損になっていくほど後で得られる利益が大きくなる着実な方法です。

私が想像する玄三券法は、こうした相場技法、そして自分の力を知り投資の計画を立てることを知っている人が至った境地だろうと思うのですがいかがでしょうか?


「なべのさかやき」目次に戻る