ドコモ・カシコモ迷惑メール

-携帯迷惑メールの恐怖(その2)-


以前、迷惑メールに悩まされた記事を書きましたが、その後、NTTドコモの対策(および適切な設定)により迷惑メールをシャットアウトできた時期がありました。
その後も迷惑メールとその対策は進化を続け、次第に私の元へ届く迷惑メールは増えてきました。
進化の足跡をざっとおさらいしてみると、
  1. なりすましメール
    2002年4月までは、送信元ドメイン名を詐称したメールはすべて「ドメイン指定受信」をすり抜けていました。
    具体的にはezweb.ne.jpとかjp-n.ne.jpとか。さらにはdocomo.ne.jpそのものも、送信元メールソフトにそう設定しさえすれば、docomoのサーバは「あ、そ。」とばかりに素通りさせて、携帯端末から送信されたものとして私のポケットまで配達してくれていました。
    これに対抗してNTTDocomoは2002年4月15日から「ドメイン指定受信機能」を改良し、インターネットから来てドメイン名を詐称しているメールを排除できるようにしました。
    これにより、仮に迷惑メールが届いたとしたら、業者は携帯電話のボタンをポチポチ押して1通ずつメールを作成しているという図式になりました。そんなことはいくら金になってもできるはずがありません。・・・でした。
    これ以降、一時的には迷惑メールが減少したのは確かです。
  2. 未承諾広告※
    2002年10月1日から、docomoは表題の最前部に「未承諾広告※」が付いているメールの受信拒否機能の提供を開始しました。
    この機能そのものはザルで、「末承諾広告※」とか「未承諾広告 ※」とか、は素通しでした。
    しまいには何で届くのかわからない「未承諾広告※」がドンドン増えていって、次に「未承諾広告☆」とか「末丞若広吉米」などのフザケたメールが続き、そのうち未承諾広告のふりさえしない未承諾広告に取って代わってゆきました。
    要するにこの規制の根拠となった「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」と「改正特定商取引に関する法律」そのものがザルであったことが業者に周知されてしまったという点で、この対策は大きな逆効果であったといえるでしょう。
  3. 強化型なりすましメール
    ところで、私の手元に届く迷惑メールのドメインは?というと、2003年に入る頃にはほとんど全てがdocomo.ne.jpになってきました。
    文体からいって、3つぐらいの業者が入れ替わり立ち代り、毎日送ってきてくださるようです。中には住所氏名まで添えてくださる業者もあって、毎日数通も受け取っていたら仲良くなれてしまいそうな錯覚さえ覚えます。
    ドメイン指定受信機能を使っていてもdocomo.ne.jpのメールアドレスから届くメールというのは、docomoの説明によれば、携帯端末から直接送信されたものであるとのことです。
    そんなん、うそでしょ。仮にそんな神業ができる業者あるいは端末があったとしても、迷惑メールの通信料を真面目に負担している業者はあるまいと思われます。
上記はあくまでも私個人の経験に基づくものです。 条件としては であり、私と同じような経験をした人もあれば、全く迷惑メールを受け取らない、Cメールの迷惑メールが山ほど来る、など、設定により体験は様々であろうと思います。
私の目的は自分のメールアドレスを変えないで迷惑メールを排除することなので、予測不可能なメールアドレスに変更するという逃げ道だけは選んではならないのです。

さて、強化型なりすましメールの正体は何なのでしょう?
NTTDocomoのページを見ても、有益な情報は見当たりません。
情報提供に関するページなどがあるところを見ても、そういう手口があり、手を焼いているということしかわかりません。
注意書きには

※ 情報をいただいた際のメール送信料金はお客様負担となりますので予めご了承ください。
※ 今回の調査対象はiモードから上記のメールアドレスへ直接転送されたメールのみとさせていただきます。
※ ドメイン指定受信機能を設定いただいていないお客様からの情報及び携帯・PHS以外からの迷惑メールの情報は今回の調査対象外となり、お受けしておりませんのでご了承ください。
なんて書いてあるから、悪くすると××に追い銭ということにもなりかねません。
案の定、提供された情報の処理件数をみると
現在の情報提供件数及び弊社の対応状況についてご報告させていただきます。

● 情報提供メール通数 約490,000通
● 対応件数 約330件

※1: 平成14年5月30日〜平成15年3月31日データ
※2: 情報提供メール通数は同じ内容のメールを含む総メール通数
0.06%というのは、趣旨を理解しない人からの抗議のメールや、制度に該当しない人からの報告が大量に来ることを考慮したとしても寂しい限りの数字です。
とりあえず、この方面からは即効性のある対策が打てないものと考えます。(他の人に任せます。)

次に、昨年から始まっているヘッダ情報提供サービスについて調べてみましたが、いったいどうやって申し込んだらいいのかという情報にはなかなかたどり着けません。
やっと見つけましたが、手続きは可能な限りめんどくさくしてあって、なるべく利用してくれるなという姿勢がありありとしています。
だいたい、個人が業者を特定することができても、その後にどんな対策が施せるものでしょうか。
これはDocomo自身についても事情は同じです。経営者がXであるA社を出入り禁止にしても、同じ経営者Xを持つB社を別人として参入させてしまえば、サイトの汚染はいつまでたっても除去できるはずもありません。

ヘッダ情報提供サービスについては大いに興味がありますが、迷惑メールシャットアウトの手段としては使えないので、いよいよ究極の対策の登場です。
要するに、受信するメールアドレスを完全に指定席にしてしまい、docomoドメイン全体の受信をやめてしまうという方法です。
これは、メールの利用可能性を極端に限定してしまうため、敗北宣言に限りなく近い方法ですが、現実の受信料負担という問題に比べればやむを得ないぎりぎりの選択です。

メモ紙を取り出して、自分の携帯電話のアドレス帳から知人や取引先のメールアドレスを抜書きします。幸い設定できる最大数の20をわずかに下回りました。
それからiMODEに接続し、該当ページ(接続料無料)で受信したいメールアドレスを順に入力していきます。
最後に、親しい人にはメールを送って返信してもらい、入力ミスで受信不能になっていないかの確認をしました。
繰り返しますが、これは敗北宣言に限りなく近い方法です。
iMODEメールの利便性も相当犠牲にし、かなりな迷惑メール受信料も負担した後のやむを得ない選択です。


そして、ひとときの静寂が訪れました。
仲良しになれるほど多量の、趣向を凝らしたメールを送ってきてくださった業者とも永久のお別れです。
・・・のはずでした。


3日目の夕方、遅めの夕食を取っているときにメールが着信しました。
本当に必要なメールだけを受信する。という当たり前のことにやっと慣れてきた私が目にしたのは、怪奇自分自身から来た迷惑メールでした。

ええっ?こんなの今まで来たことがないし、文体も今までのお馴染みの業者さんとは違います。私が設定を変えたことを感知して、早くも次の手を打ってきたのでしょうか?あまりにも手際が良過ぎます。私個人を追跡している魔手は実在したのでしょうか?
そもそも、docomo.ne.jpの私のメールアドレスは、私の携帯電話に割り当てられているのだから、これは紛れもないなりすましメールです。docomoのサーバはこんなだらしないことを許しているのでしょうか。そればかりか、これを悪用すれば私の取引先に私を偽装したメールを送り、不測の損害を与えることができます。いや、これは日本じゅうの携帯メールのセキュリティホールです!!断じて見過ごすことはできません!!!

と、かんかんになって私は報告メールを上記の報告用アドレスに送りました。通信料をも惜しまずに。
それから、ついでにDocomoのサイトのQ&Aを読みふけって原因と対策を探しました。
すると、このような自分自身からの迷惑メールを受け取っている人もあるようです。

これは実はインターネットサイトからのなりすましメールです。私が「メール指定受信」を選択するために「ドメイン指定受信」(なりすましメール排除機能付き)を外してしまったために受信できるようになったものです。しかも、受信を許すアドレスに自分自身を含んで設定していました。絶対忘れてはいけないことは自分宛にメールして覚えることもあるからです。
まあ、業者にしてみればヒットしやすい送り方ですね。これはおなじみでない、新手の業者のものでしょう。私が過去一度もメールアドレスを変えていないために、私のアドレスは多くの業者の間で交換されて、全ての業者(実はそう多くはないそうです)からターゲットにされているはずです。
私はまたまた、多少の敗北感を感じながら、指定受信アドレスのリストから自分自身のメールアドレスを削除しました。

こうして私は月間数百円の通信料節減、なじみのメールアドレスの防衛、迷惑メールに関する少しばかりの知識、そして当サイトにUPする話題、を手に入れました。

Docomoさんも強化型なりすましメールには万策尽きたような態度を取っていますが、それはこれらの業者が迷惑メールを送信するに当たって規定の通信料を支払っているからでしょうか。それとも本当に神の手を持つ神出鬼没の業者があって、携帯電話の端末をパチパチ指で押してこれらのメールを作り出しているからでしょうか。それとも一部の悪人を見逃すことによってユーザー全体から広く薄く通信料をせしめることができるからでしょうか。3800万ユーザーから月額400円をせしめたらいくらになるのでしょう?・・・それは決算の赤字黒字を左右するような信じがたい数字ですからきっとそんなことはないのでしょう。

前回の迷惑メールに関する記事において注文をつけた事項はすべて叶ったので、最後に建設的なお願いをしておきましょう。

docomo.ne.jpドメインのメールアドレスでもって迷惑メールを送信している業者について、その実態と手法が解明され、彼らが正規の料金を課せられることになりますように。
きっと今は何らかのチートが行われており、通信コストなしで強化型なりすましメールを送信する方法が存在すると考えられます。そしてそれを行っている業者はごく少数です。
彼らに正規の料金(私に届いた分だけでも1通5円×1日3通×1月30日=450円ぐらい)を負担させたら、公衆の門前で読み上げられないような文章が毎日強制的に配達されるという恥知らずな風習はなくなることでしょう。
さもなくば、デフレのこの時代、より快適でより安価(で、ちょっぴり高性能な)同業他社の携帯端末に乗り換えたくなるユーザーが増えることも致しかたなしと考えます。


当初の記事を書いて1年半、可能な限り困難にしてあったヘッダ情報提供サービスが改良されたようです。
以下、NTTドコモのプレスリリースより。


迷惑メール対策としてiモード宛メールにおけるヘッダ情報の提供機能を拡充
<2005年1月7日>

NTTドコモグループ9社は、2002年10月よりインターネットからのiモード宛メールにおけるヘッダ情報1の提供を行ってまいりましたが、この度2005年3月24日(木曜日)より提供機能を拡充し、ヘッダ情報をご希望のお客様はiモードメールにヘッダ情報を付加して、即時に情報を取得することが可能となります。

弊社では今後も迷惑メールの根絶と、快適かつ安心してモバイル・インターネット・サービスをご利用いただける環境の整備を推進してまいります。

機能拡充日時:2005年3月24日(木曜日) 午前9時<全国一斉>
---(中略)---

3. 設定方法

ご利用中のiモード端末から、「iMenu」の「オプション設定」より設定していただきます。
【アクセス方法】
「iMenu」−「オプション設定」−「メール設定」−「メール受信設定の『その他設定』」−「メールヘッダ情報受信設定」

4. ご利用料金

無料

  1. ヘッダ情報を取得することにより、メール本文に加えて、ヘッダ情報のパケット通信料が発生します。
  2. 本機能のご利用にあたり、お申込みは必要ありませんが、お客様ご自身による設定が必要となります。
  3. 設定に係わるパケット通信料は無料です。

これで、たしかに迷惑メールの原因解明は進むでしょう。
但し、ヘッダの情報量は意外と多いですから、課金はかさみます。
また、元々インターネットからのメールは送信元の詐称やサーバの乗っ取りが比較的簡単にできますから、送信元を突き止めることにはあまり利益はないでしょう。
私は上記のように指定席(いつの間にか40に増えています)以外のアドレスは受信しない方法をとっていますから、このヘッダ情報提供サービスの必要はありませんが、NTTドコモが「銭しだいで情報を開示しよう」という姿勢に転換したのは画期的といえるでしょう。

なお、携帯端末から大量のメールを送信するカラクリについても少しわかってきした。
携帯端末にはi−ボードというキーボードが併売されているので、外部入力のソケットからシリアル入力によるキー操作を受け付けるようになっています。
これにパソコンをつないでi−ボードの入力をシミュレートしてやれば人力によらない高速メール送信が実現します。

迷惑メール業者が通信料を節減する方法は、他人に契約させた端末を買い上げたあとその他人をトンズラ(破産や夜逃げ?)させる方法が一番ありそうです。
一時期話題になったクローン携帯がその資金源かと思ったのですが、その後クローン携帯の話は(誰も誤りを認めないまま)下火になったので、クローン携帯の話そのものがデマだった可能性が高いようです。
(05.01.08追記)


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