最近の記事で、私も憤慨していたインクジェットプリンターの不調を治療する薬のことが載っていましたので、年末の年賀状シーズンを迎えて私も追試してみることにしました。
元ネタの山本先生は、耳鼻咽喉科の先生ということですが、パソコン、ビデオ、ファンヒーター、車、バイク、オーディオ、発電機、電気ポット、腕時計、等々何でも治してしまいます。
我が家には先生のご託宣を受けて活を入れられ、21世紀に生き延びるWindows98型パソコンが多数(少なく見積もって7台)ありましたが、パソコンリサイクル法の施行により1台4千円の負の遺産となり、死ぬことが許されなくなってしまいました。こういうのは永遠の命を得たと言うのでしょうか?
今回俎上に乗ったのは我が家にあるものと同一メーカー同一型番のインクジェットプリンターですが、我が家でもインク目詰まり、ヘッドクリーニングの繰り返しで、1年の半分は使用に堪えず死んでいる状態でした。
インクジェットプリンターが不調なのは我が家に限らず全国的なものなのでしょうが、これは技術的限界なのだからと思いみんな耐えているのでしょう。
そこに山本先生が処方したのが「インクジェットセーバーZ」です。
その正体は自動車用LLC、古い言い方をするとラジエター不凍液のようです。これをインク量の10%加えるとインクの目詰まりを防止できるそうです。
水溶液に不純物を溶かすと水分が蒸発しにくくなるため、沸点が上昇します。「モル沸点上昇」という言葉が頭をよぎったら正解です。
ラジエター不凍液の成分はジエチレングリコールで、水と混ざりやすい石油類で腐食性がないことが不凍液に使われる理由です。「モル凝固点降下」という言葉が頭をよぎったら正解です。
ジエチレングリコールといえば、ワインに甘みを出すために不凍液を混入した事件がありました。調べてみたら1985年のことです。ジエチレングリコールにはあまり激しくないけれども毒性があり、このワインは日本にも輸入されてしまったために問題になりました。
この事件そのもので健康被害を受けた人はいませんが、この事件により「ジエチレングリコール=毒」という知識が広まったのは確かです。
我が家にはLLCは車に現在注入されているものしか在庫がありません。それからLLCにはワインへの混入を防ぐためか着色されているのでカラーインクに混入するのはためらわれます。
そういう場合は「浣腸液」を5%加えてもよい。となっていましたので、私は夜の薬局に「いちじく浣腸」を買いに走りました。
いちじく浣腸の主成分はグリセリンです。こちらは脂肪が分解したら生成する栄養分ですから毒性の問題はありません。また着色もされていないのでカラーインクに混ぜても色が濁るおそれがありません。甘みもあるのでワインに混ぜても・・・。
インク量の5%と言っても、どこにもインク量なんて書いてありませんからものさしでインクを実測しました。
我が家のプリンターの場合、黒インク(IC5BK05)は縦3.0cm、奥行5.2cm、厚さ1.3cmぐらいでしたから大まかに掛け算したら20ccというところですか。カラー(IC5CL05)の場合は5色に分かれていて縦3.0cm、奥行5.2cm、厚さ0.6cmぐらいでしたから容量10ccなのでしょう。これの5%を注入することにしました。
インク上面のビニルをはがそうとしたら「−Contains diethylene glycol.−」と小さな字で書いてあります。仮にインクが甘くても飲む人はいないって。
メーカーもインクの乾燥目詰まりを防ぐためにジエチレングリコールを使うことは知っているようです。しかしその加え方が甘いのはジエチレングリコールの毒性に配慮したためでしょうか。インクの乾燥が遅くなるのを恐れたためでしょうか。まさかユーザーが目詰まりとクリーニングを繰り返すことでインクを浪費することを期待したわけではないでしょうね。
浣腸液をブチ込んだインクジェットプリンターは確かに詰まることなく年賀状の印刷を終えました。色が濁ることも乾燥が遅くて困ることもありませんでした。
しかし本当のテストはこれからです。数日から数週間休ませたらこのプリンターは必ず目詰まりしていました。そのたびに必ずクリーニングを繰り返していました。インクの消費量の半分は年賀状で、残りの半分はクリーニングに費やされていたのです。そして半年後にはインクが尽き、次の年賀状シーズンまでインクジェットプリンターを使う努力は放棄されていたのです。
この追試の目標は今年の後半もプリンターを快適に使うことです。まだまだ私の結論は出ていません。もちろん、山本先生を信頼していないわけではありません。検証可能であることこそが科学の本質ですから、先生の福音を広める一助になれれば幸いです。
なお、インクジェットセーバーZを試される方は自己責任で行ってください。トラブルが起こっても責任は持ちません。きっとメーカーの保証も効かなくなります。私もそれを承知した上での人柱です。
ところで、私の年賀状を受け取った親族や友人は、まさかそれが浣腸液で印刷されているとは思わないでしょうね。きっと。
その後、インクが原因ではない激しい紙詰まりを機に「黒インクカートリッジが正しく認識できませんでした。」というエラーが出て黒インクカートリッジを交換せざるを得なくなりました。
このエラーがグリセリン注入によるものかどうかははっきりしません。
インクカートリッジが使ったインク量を記憶して管理しているなら、そういうこともあり得ますが・・・。
早速新しいインクを買ってきて、(自分の書いたこの記事を参考に)グリセリンを注入して取り付けます。
またもや「黒インクカートリッジが正しく認識できませんでした。」というメッセージです。
「もう、このプリンタ捨てるわ。修理するゆーてもなんかゴチャゴチャして気が悪いけん。」
「そういう時はたたいてみりゃ直るんじゃ。」
そういう奥様の的確なアドバイスのもとに、私はプリンタをちょっとたたいてみました。
第1撃は、プリンタがはずみで後ろの壁にぶつかるくらい。
「あ、なんかしらんけど電源切れたわ。」
第2撃は、はずんだプリンタに弾かれて、パソコンラックの最上段に乗っているスキャナをはじめ、積んであった本や何かがみんな吹っ飛ぶくらい。
「あ、直った。ほなインク買わんでもえかったがな。」
と、いうわけでインクジェットセーバーZに起因する異常ではなかったようです。
しかしまことに世話の焼けるプリンタではあります。
(05.03.27追記)