津山市と鳥取市の境界

-新緑の探検隊-


ええっ?津山市と鳥取市は直接接しているんですか?

その事実に私が気がついたのは半月ばかり前のこと、平成の大合併によって岡山市と津山市がずいぶん近くなったなあとは思っていたのですが、津山市が合併する前の平成16年11月1日に、阿波村の北側の佐治村はすでに鳥取市に合併しており、平成17年2月28日に阿波村が津山市に合併した結果、津山市と鳥取市は県境を境に直接接していたのでした。

そういうことなら、その境界を踏査に行くのは津山のトリビア探検隊である私にとって必須の課題であると言えましょう。
早速私はその境界を踏査することにしました。

津山から県境を越える自動車道は県道津山智頭八東線の物見峠が唯一のものとされていますが、ずっと以前JEEPで阿波村と佐治村の接する県境を越えた記憶があります。
その道はまだ通れるのでしょうか?今日はその探検の顛末を報告します。

朝9時に自宅をスタートして、地図も持たずに加茂川の源流を遡り、やみくもに右側の谷にアタックしました。
三菱JEEPは車検が切れてお休みしていますので、車は12年物の日産マーチです。倒木や落石を踏み越えて谷を相当登ったところで山菜取りとおぼしき地元の人とすれ違わなければならなくなり、道の端に避けてもらっているところで車を降りて話を聞けば、私はずいぶん違った谷を登ってきていたようです。
県境に至る道は「お夏の墓」を目指していきなさい。右の広い道を行くのではなく、左の細い道がそうですよと教えてもらいました。

「お夏の墓」の手前で道路工事をしており、通行止めのバリケードの手前で車を止めました。
歩き始めてすぐに作業服を着たおじさんが軽トラックに乗って谷を下って来たので、県境まで車で行けますか?と改めて聞きました。
「ジープだったら何とかなるかも知れんが、わしが軽トラで行ってみたら荒れとって、とてもじゃないけど行けれなんだ。」
と言う返事でした。
お礼を言って歩き始めようとしたら、おじさんが川を指して手招きしています。
川の中にはヒラメ(山女魚のこの辺での呼び名)が悠々と泳いでいました。

@帰りに撮影、目が光っているのがヒラメです。
数匹いる中で一番大きいのがわかりますか?

それから山道を歩くこと40分、地図も持たずにどんどん歩きましたがどうも記憶にある道と違います。
結局、午前中の踏査は断念して、地図を見直して再チャレンジすることとしました。

帰って地図を見たら、どうやら私は歩き始めてすぐに間違った道に踏み込んでしまったようです。
昼食を食べていざ出発しようとしたら、子供が一緒について行きたがったので、お供を2人連れて出発です。

「お夏」というのは地元の村の娘で、若いきこりと恋仲になりましたが、若者は必ず迎に来ると約束して去ってしまい、その間に藩主からお城に上がるよう命じられてしまいます。お夏は若者との誓いに胸を痛め、深山渓谷の渕に身を投げてしまいます。
「お夏の墓」の標識の奥には古いお墓がひとかたまりに立っていましたが、どれがお夏の墓かはよくわかりませんでした。あとで調べたところ首のない石地蔵がそうだとのことです。

お夏の墓の近くに、小さな支流と水たまりがあり、腹の赤いイモリが10匹近くいました。早速やる気のない隊列は停まってしまい、イモリと戯れます。
そこを過ぎたところで倒木が道を横切ってふさいでおり、実用的な道路はここまでです。

Aいきなりイモリ登場。倒木が道をふさいで、ここからは徒歩しかありません

午前中間違えて真っすぐ行ってしまったところを県境に向けて登り始めると、程なく道はクマザサの藪になります。藪と言っても3mを越すような背の高い笹ですから、トンネルの中を行くようです。
早速子供たちは帰りたいの大合唱です。熊が出るから怖い。キジが飛び立ったから怖い。帰れなくなるから怖い。戻ってイモリと遊ぶんだぁ。(?)
しかし私も午前に続いて2度目のトライです。ここで引き返すわけには行きません。

道には時々水たまりがあり、たまにイモリがひそんでいます。
大きな水たまりが道いっぱいに広がるところでは、遠くから見ただけで水面が真っ黒に見えるところがありました。
何かヤバそうな水たまりです。

Bオタマジャクシでいっぱいの水たまり

道は、やや開けたところと丈の高い笹薮が交互に現れ、何度も引き返そうかと思いましたが、地図にあった大きなカーブに差し掛かり、ここが道の半分だなとちょっと元気が出ました。ここで小休止です。

Cすでに道とは言えなくなって久しい

カーブごとに、もう県境かと胸をふくらませ、当てが外れてがっかりしながら次なる笹薮に突き進み、それを何度繰り返したことか、お供の子供たちが帰りたいと200回ぐらい言ったとき、やっと目標の峠が見えました。

D津山市と鳥取市の境界

道は程なく終わりになって、鳥取市に至ることは出来ますが鳥取市に抜けることは出来ません。

道はここで終わりです。佐治の谷が見下ろせます。

この道は10年ほど前まではそれなりの車(軽トラや車高の高い四駆)なら県境まで来ることが出来ました。ここのところ急速に荒れてこうなってしまったようです。
この様子なら合併以降、まだ車で津山市から鳥取市に通り抜けた人はいないようです。
しかし、道があるといってもジープとチェンソーと草刈機とスコップがないと車で来ることは出来ません。

誰も成し遂げようと思わなかったことを成し遂げた小さな探検隊は、イモリ2匹をお土産にして帰途についたのでした。(誰が世話をするんじゃ!)

本日のルートマップ


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