美咲町のど根性大根

-ニュースのツボと路上観察のツボ-


「ど根性大根」といえば相生市の「大ちゃん」が
と、大根にしては数奇な運命をたどっていますが、美咲町にもど根性大根が発見されたと新聞に載っていましたので、見物に行きました。

県道勝央仁堀中線

ところは岡山県道52号勝央仁堀中線の美咲町宮山地区です。
以前、勝田・勝央・柵原・英田の4町が合併を協議していたとき、その4町の接点となっていた峠です。
なお、この道が勝央と仁堀中を結ぶルートもなかなか数奇な曲がり方となっています。

ありました。

峠を登っていくと、ありました。2度も新聞を賑わしたど根性大根です。
1度目は「美咲町にど根性大根発見」の報で、2度目は「ど根性大根、美咲町役場により手厚く保護」の記事でした。

異常に手厚い保護と町役場による注意書き

しかし、わざわざ見に行った私には何やらモヤモヤした不満が残りました。
大根がアスファルトを突き破っているわけでもありませんし、大根の背後がすぐ畑であることから大根の種が遠い旅をしてきた様子もうかがえません。
この物件の唯一の面白さは公有地に極めて私物くさいものが立地しているという点だけです。

要は笑いの沸騰点に達していないということです。


割り切れない思いで(もっと面白い大根がないか道端を探しながら)帰路についた私は、新聞記事になるニュースと、自分の捜し求める路上観察ネタとの違いにようやく思い至りました。
新聞記事は笑いを取るために書いているのではないのです。どっちかというと、ニュースをめぐる人間の営みに焦点があたっているものです。
これに対して路上観察学は不条理であることをむしろ尊びます。万人が受け入れられないもの、99%の人が見落としていることが上ネタとなるのです。

思い出せば昨年、津山で「カモの卵救出作戦」がニュースになりました。 事件の概要は というものでした。
うーむ。美談です。新聞ネタとしては完璧なストーリーです。

産卵というより散乱。

しかし、私がこの事件で注目したのは 私の捜し求めている笑いのツボは、事象の裏側にあるこうした不条理なのです。
そうしてみれば、新聞のほのぼのしたニュースを頼りに現場に行ってみたとて、期待するものが見つかろうはずはありません。
そして今日もまた、路上観察者は不条理を探す旅を続けるのです。

不条理を探す旅の果てには


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