通勤怪速への道(その7)

-フランケンがやってきた-


この通勤怪速シリーズを初めて1年半になりますが、そのアプローチは
  1. 50cc限定
  2. ありがちなセットパーツを使わない
  3. バイク屋に頼らない
とまあこんなコダワリで進めてきました。
その結果、通勤で怪しい速さを見せる50ccカブにはなったと思われます。
ひとことで言うと、C50にC90パーツを取り付けていって、1983年頃のC50の性能を再現する試みであったと言えるでしょう。

その歩みをリストにしてみれば、
品名仕様/純正パーツ番号価格個数備考
パーツDAYTONA プロブレーキシュー185511855
タイヤ ミシュランM35 2.25−17300013000正確な値段失念
タイヤ ミシュランM45 2.50−17350013500正確な値段失念
タケガワ リヤショックアブソーバー393127862
カムシヤフトCOMP.14100-GN5-90054072108141個は山が削れた
スフ゜リンク″,ハ″ルフ″アウター14751-GF6-0132312462最終的に使ってない
スフ゜リンク″,ハ″ルフ″インナー14761-GF6-0132102420
タコメーター・デイトナ製中古440014400
タケガワ ビックキャブキット(PB16タイプ)14332114332
DAYTONA メインジェット #65.70.75.80.85.90-各1ヶ120911209
CFポッシュ Racing CDI スーパーバトルSP772817728最終的に使ってない
CFポッシュ 強化バルブスプリング279312793使ってない
パイプ,インテーク17111-GT0-000203712037
キタコ ドライブスプロケット (フロント)14T9701970
キタコ ドライブスプロケット (フロント)15T9701970使ってない
スクリユー,タペットアジャスティング90012-333-0001732346
ナツト,タペットアジャスティング90206-001-0001362272
アーム,バルブロッカー14431-035-020111322226
C.D.I.ユニツト (シンデンゲン)30410-GB6-018693016930最終的に使ってない
クツシヨン,C.D.I.ユニツト30401-GB4-6802331233
キタコ M/J #78(Kマル・ショウ)4481448
資料キタコ LIGHT虎の巻(腰下編)9321932
キタコ LIGHT虎の巻(腰上編)7411741
サービスマニュアルC50〜90・リトルカブ('81〜'99)340013400
パーツリストC50(B〜X)210012100
パーツリストC70・C90210012100
パーツリストC50(C・D)中古6001600
工具トルクレンチ300013000正確な値段失念
キタコ バルブスプリングコンプレッサー379013790
キタコ タペットアジャストレンチ167511675
DAYTONA ガスケットリムーバー124211242
キタコ スナップリングプライヤー119711197使ったことない
タケガワ フライホイールホルダー(プーラー)156911569
タケガワ ユニバーサルホルダー142011420
キタコ センターロックナットレンチ249312493使ったことない
クラッチアウターホルダー79230340000216412164使ったことない
プロクソンルーター28515-BM630016300
ケミカルキタコ TB1215 液状ガスケット3991399使ったことない
DAYTONA パーマテックス バルブコンパウンド136511365
DAYTONA パーマテックス プルシアンブルー141811418
KIJIMA MOTHERS マグポリッシュ126011260

このほかにも、チューブやガスケット、ナメてしまって新品にしたナット、中古シリンダヘッドなど、細かな部品は多数あります。

こうしてみるとなななんと、もう1台中古カブが買えるぐらいの金額を突っ込んでいるではないですか。
もっとも、経費の多くは資料や工具に費やしているので、これによるパワーアップは1馬力以下のはずです。
なんと贅沢な(無駄の多い)趣味なのでしょう。

さて、こんな一見中途半端な改造になってしまったのは、やっぱり元になったマシンが借り物だったからに他なりません。
無理矢理借り上げたカブをボアアップまでして、元の持ち主が乗れない車に仕立て上げてしまってはいけません。
50cc限定ということになれば、最高回転数を上げることで馬力を稼がなくてはなりません。
しかしその先に待ち受けるものは、私の技術力の及ばないクランクシャフトやコンロッドが徐々に消耗してしまうというジレンマが待っていると思われます。
今はこのマシン「サイドワインダー号」の所有者は私ということになっていますが、めちゃめちゃに消耗してしまったバイクを返却するのか、それともさらなる高みへ向かって帰り道のない改造へ突き進むのかを選択する時期が来たように感じていました。

「サイドワインダー」の次は「スパロー」か?(※どちらも空対空ミサイルの名称)と考えごとをしながら自転車で帰宅していた帰り道、道ばたのバイク屋さんのショーウインドウの中にカブが納まっているのが目に留まりました。 紺色で、丸ヘッドライトで、90ccで、しかも手ごろな値段。まさに探していたような品物でした。
しかもこの車にはマフラーガードが付いています。
これが付いているC90はかなり新しいはずです。そしてフロントブレーキが大径化されています。(参考・1998年ホンダ発表資料

灯りが消えた店先で自転車にまたがったままカブをのぞきこんでいると、「まあ、中に入って見て下さい」と主人に招じ入れられました。
かなりな高年式のはずなのに、この車は相当使いこまれています。小さな傷やさびが無数にあります。そして意外と安価です。
メーターは15000キロあまりを指していますが、主人の説明では、「ウチに来た時はスピードメーターのケーブルが切れとった、なので距離はクエスチョンとさせてください」という説明でした。また、チェーン、リアスプロケット、タイヤなどは新品に交換されていました。
面白いのはフロントフェンダーのひび割れに鉄板をあててリベット(ハトメ?)で補修してあります。フロントフェンダーって、パーツリストで2500円の部品なんですけどね。
そしてシート下のラベルを見て私は戦慄しました。C90D5 …ということはコイツは2005年製です。
製造年から3年も経っていないのにこんなにカブを使い倒したのはどんな人なのでしょう。

私が中古車を選ぶ時に注意するポイントがひとつだけあります。それは、部分的に不自然にきれいな所はないかという所です。なぜなら、大きな事故などをして修復した場合、そこだけが不自然にきれいになるからです。
それがこのカブの場合、年式相応にきれいなボディーに、それこそ無数に傷やさびが分布しています。

そしてこのC90は、私がC50に一生懸命取り付けてきたパーツ一式(大径キャブ、カムシャフト、ロッカーアーム、自動進角CDI、左のミラー等々)に加えて、ボアアップがしてあって大径ブレーキが付いていて、リアステップがついていて(でも後座席は荷台)制限速度が60キロなのです。(冷静に考えたら全部当たり前)

そういうことで数日後、私は再びこのバイク屋さんを訪ねて、C90を購入することとなりました。
おそらくは、今後私の手元にどれだけ長く置かれようとも、これまで何か辛く激しい仕事をこなしてきたコイツにとっては、これからがのんびりとした余生なのです。

C90とC50ブレーキが大径

マフラーガード、これが付くカブは新しいPB-236Mはユニオンシティブルーメタリック

さて、4日後にカブを受け取って、帰り道。
やっぱりノーマルのサスはスプリングベッドのようにダンパーが利いておらずフワフワです。
ブレーキもC50にデイトナのブレーキパッドを付けた状態には明らかに劣ります。これはビックリしました。
ノーマルのタイヤは大きく曲がりこんだ時にはヨレます。グリップもいまいちです。しかも不幸なことに新品です。このタイヤの寿命が尽きるまで過ちなく過ごせるのでしょうか?
次に気がついたのは、スロットルに引っ掛かりがあって、手を離した時に戻りません。これは危険です。
最後に気がついたのは…スピードメーターが全く振れていません。…って、バイク屋なら普通真っ先にそこを直すでしょ!

私はバイク屋を含めてクルマ屋さんなんて信用していません。信用していないからこそどこまでも自分でメンテナンスできるスーパーカブに手を染めた次第です。
しかしこのバイク屋さん、予想以上のすばらしいバイク屋さんでしたね!
スロットルの引っかかりは、グリップヒーターの残骸と思われるプラスチックのリングがグリップとスイッチボックスの間に入っていたので自分で切り取って取り除きました。
メーターケーブルは最も前輪寄りのところで切れていましたが、パーツ代にして1000円ぐらいなものですから自分で買って修理できます。そう、「バイク屋さんに頼らない」ために私はカブに乗るのです!

さて、肝腎の動力性能は、新型についている「ブローバイガス還元装置」のせいでいくらかパワーダウンしているそうですが、C50に比べたら相当なパワーがあります。しかも低回転からグワッと加速します。
私の通勤に立ちはだかっていた壁にチャレンジすると、たやすく車の流れに乗れます。
このパワーにこの足回りって、走るが止まらない、ちょっと危険なバランスではないでしょうか?

フランケンシュタインか!何かひどい目に遭った形跡が残る

こういう風に紹介すると、結構程度の悪いバイクだったように読めるかもしれませんが、それは距離を走ったノーマルのカブだったら必ずそんなものであり、実際には結構きれいな掘り出し物だったように思います。

さて、「通勤怪速」を実現したのは、バイクのめざましいパワーアップでもなく、ライダーの軽量化(!)でもなく、C90の購入だったというまことにヒキョーなオチになってしまいましたが、このシリーズの主役C50「サイドワインダー号」をどうするかという問題が残っています。
サイドワインダー号は、1年半の努力の結果、1馬力未満のパワーアップと引きかえにマフラーの横穴が非常に刺激的なサウンドを奏でる、ちょっとうるさいバイクになってしまいました。またフロントスプロケット交換によりちょっと穏やかな加速能力(最高速度重視)に落ち着いています。
このままポンと元の持ち主に返してしまってはかなり迷惑なので、最後の仕上げをいたしましょう。

サイドワインダー号を返却するにあたって、改造の凝りすぎた部分を元に戻しました。
具体的には、進角をいじっていたのと、フロントスプロケットを純正に戻す、という作業です。
そして穴あきマフラーの代わりにはコレを調達しました。

品名仕様/純正パーツ番号価格個数備考
パーツJun International スラッシュカットマフラー                     980019800                     

純正マフラーでなく、スラッシュカットマフラーにしたのは、値段が同じくらいだったからという理由に過ぎませんでした。
スラッシュカットマフラー

実はスラッシュカットマフラーには使用条件があって、「ボアアップ80cc以上である事」というメーカーからの注文がついています。
実際、装着してみると50ccにはちとヌケが良過ぎるような感じです。思ったより排気音が大きいです。
これはこれで、次のステップとしてボアアップを切望している、そんな状態のマシンになってしまいました。
こっちはこれでさらなる進化を遂げて欲しいものですね。
(その後純正ノーマル新品に戻しました。)

奥様が風邪で寝込んでしまい、大至急帰宅しなければならなくなったその日の夕方、
バイク屋のオヤジが、ガソリンを満タンにしてガソリンコックをリザーブにして納車していたことに気がつきました。
絶・対・許・せ・ね・え・!(08.12.01追記)



さて、C90「フランケン号」はしばらく乗ってみてその動力性能に惚れこみました。(そりゃそうでしょうとも!)
回転の低いうちからスロットルにしたがってズドドッと加速するフィーリングはC50にはなかったものです。
C50サイドワインダー号のシャープに高回転まで吹け上がる感じに比べれば振動や音に粗さが感じられ、高回転も8000回転あたりがピークになります。これは使いこまれたせいではなく、もともとそんなもののような気がします。このままだと極めて長持ちしそうな予感です。

さて、いきなり切れていたスピードメーターケーブルを注文するついでに、もう一つホンダが取り付けるのを忘れていた部品があったので注文しておきました。
肩に輝くホンダウイングのエンブレム

50年守り続けてきたホンダウイングの紋章を忘れちゃダメでしょう。
C90は現在生産終了となっていますが、一足先に肩のエンブレムを失ってしまったのはその前触れだったのでしょうか。
多少内容的には近代化しようとも、このレトロな姿のカブは作り続けていって欲しいものですね。

(09.2.14追記)
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