通勤怪速への道(その8)

-フランケンとの格闘-


スーパーカブ90「フランケン号」に乗り始めてから、走り方が変わりました。

スーパーカブ50「サイドワインダー号」に乗っていた頃は、常に車道外側線のあたりをキープし、速い車が後ろから接近しているかどうか気を配り、前の車が渋滞で詰まればさっさとすり抜ける走り方でした。
この走り方をしていると、前が詰まっていて結構な速さの流れに乗っていても、後続車が自分の右側に並びかけて無理矢理進路を譲らせようとすることがあります。
私もちょっとだけ改造カブで、マシンの性能に自信があるものですから、譲らずサイド・バイ・サイドのバトルに突入してしまいます。
そういうドライバーは威勢の良いあんちゃんかと思えば、だいたい3分の2があまり運転のうまくなさそうな女性だったりします。一度などは10トントラックにサイド・バイ・サイドを挑まれて、このときばかりはさっさと譲りました。命あってのものだねです。

さて、カブ90に乗り始めてからは、そういう走り方はすっぱりやめてしまいました。
車線の真ん中を走り、前の車が停まったら一緒に停まり、どーしようもない渋滞の時以外はすり抜けをしません。
要するに1台の車としての振る舞いをするわけですが、堂々とそうしていたら並びかける車は全くなくなりました。
それはそれでブレーキの甘いカブのことですから、あまり安全な走り方ではありません。先行する車のその先の状況に常に気を配っている必要があります。
しかしナメられない振る舞いをすること、ナメられない存在になること、というのは心地よいものです。

さて、購入から約5ヶ月が経過しましたが、わがフランケン号は意外なぐらい進歩していません。
エンジン性能は燃費も含めて満足。タイヤは今ついている新品が磨り減るまで交換しない。サスペンションはちょっといいモノを考えているので様子見。ということになって手をつけるところがないのです。
それどころか、ちょっと手をつけようとすれば様々な障害があって意外なしっぺ返しを喰らう始末です。
今日はフランケンとの格闘の序章をご紹介しましょう。


まずはプラグをイリジウムプラグに替えてみました。
私個人的には研究の中でイリジウムプラグの優先度は案外低いと考えています。
メリットは価格と引き合わない程度の寿命向上だろうと思いますが、一度は付けてみたいアイテムと言えば言えるでしょう。

実際に使用してみたところ、シフトダウン時にまれにアフターファイヤーが起こるようになりました。
ブリッピングしながらのシフトダウンで失火が起こっているのでしょうか。それならノーマルプラグにも劣るということですが…しばらくしたら暖かくなったせいか、アフターファイヤーは起こらなくなったので、この件はあまり気にしていません。


次は社外品のブレーキパッドなわけですが、写真にブレーキパッドが2つ写っているのは誤発注のためです。
私の年式のカブ90はフロントブレーキのドラム径が130ミリに強化されていますが、純正状態の性能は「110ミリドラム×ディトナブレーキパッド」の性能に及ばず「さすが130ミリ」とは言いがたいものでした。
ディトナには130ミリのブレーキパッドが見当たらなかったので、キタコの「プレスカブリア用」を注文…しようとして誤って「110ミリフロント用」を注文してしまいました。
110ミリのブレーキシューはリアに使いまわせるので持っていても損はありませんが、130ミリのブレーキシューを注文しなおす羽目になりました。

さて、ブレーキシューを取り付けようとしたら、パッドの厚さが十分すぎてドラムに収まりません。 何とか収めましたが、試走してみると鳴きまくりです。しかも効きません。 そのうちシューが減ってなじむだろうと思ってしばらく使ってみましたが、街中では恥ずかしくて走れたものじゃありません。

結局バイク屋さんでアドバイスをもらって、ブレーキシューの前後をサンドペーパー(#100ぐらい)でいくらか削り落としました。ついでに左右も面取りしました。
さすが、「減るまで待つ」なんかじゃないプロの技があるものですね。
左右の面取りは必要ですが、あまりブレーキシューの前後を削り落としてはいけないようです。手入れをするごとにどんどん効かなくなるので現在検証中です。(09.05.26追記)


取り外して見ると、中央部分に全くドラムと接触しない部分が3分の2ほど残っています。これでは効かないわけです。
今のところ万全の効きになったわけではなく、とりあえず鳴かなくなってなじむのを待っている状態です。

さて、フランケン号には購入した時から許しがたい欠点がありました。
シートが左右にスルスル滑って安定しないのです。
タンク上の吸盤がスルスル滑った跡トラブルの原因(切り開いて撮影)

原因はすぐわかりました。シートを車体に固定している部分にゴム製のブッシュがあり、頻繁な乗り降りを繰り返していると写真の矢印部分が潰れて不具合を引き起こすのです。
しかし新車から4年経過していないはずなのにこのありさまでは、信頼性が一生ものと言われるカブにしてはだらしがなさ過ぎます。

問題はそれだけではなく、20世紀のカブはシートとヒンジが別パーツで、この部分のゴムは1個百数十円で入手できたのに対し、21世紀のカブはシートとヒンジが一体化していて、このゴムが切れるとシート全体を買い換えなければならなくなるようです。これは欠陥です。大きな退化です。

私はヒネクレ者ですから、この問題の解決のために、あえてヒンジが別体だった時代のシート(とヒンジ)を注文しました。本体が一生ものなら、シートもそれに見合うシートであるべきでしょう。
ところが

届いたシートはやはりヒンジが一体型の21世紀用シートでした。はうッ!
あわてて注文書を確認したところ、旧型のシート(77100−GBJ−830)を注文したら自動的に新型のシート(77000−GBJ−N11ZB)に通訳されてモノが届くようです。
この通訳がホンダによるもだったのか、通販サイトのウエビックによるものだったのかは不明ですが、これじゃこの問題に解決法はありません。

それでも私はくじけず、一緒に取り寄せたヒンジの下半分をこの一体型ヒンジと交換しようと取り組みました。
今回のシートの仕様変更は(ユーザーを寄せ付けないように)徹底しています。
まず、旧型なら150円ほどのゴムのブッシュは周辺パーツと一体成型されていて個別の発注はできません。
ブッシュを切り開いてみると、ヒンジの穴は旧型より拡大されていて、旧型のブッシュは使えません。ということはブッシュの厚みが旧型より大幅に厚くなっており、それがこのトラブルの原因になっているわけです。
次にヒンジを固定するボルトは六芒星型の特殊なドライバーでないと回らなくなっており、しかもシート革ををめくり上げないとそのドライバーも突っ込めません。反対側のナットはヒンジに溶接してあります。
こうなると、ちょっとした設計ミスではなく、ユーザーの出費を極大化させるためのホンダタイマーですね。

私は鉄ノコで1日かけてこのやっかいなボルトを切断し、シートの革をめくり上げて取り除きました。
そして旧型ヒンジのボルトを入れようとしたら、…わずかに旧型の方がボルトの径が大きいため入らないことに気がつきました。もはやお手上げです。

もちろん、問題なく交換できる新品シートは手元にあります。
しかし念を入れて仕掛けられたホンダタイマーの前に敗北を認めるのは非常に悔しい思いでした。
余談ですが、ソニータイマーに屈する時は、機器全体が再起不能と諦められるぐらいキレイに壊れてくれますからこんな中途半端な悔しさを味わうことはありませんね。
1日がかりの苦闘のあげく、「ほぼ」誤発注の新型シートは数分もかからずに取り付けられました。
ああぁ、こんなことなら、後ろが灰色になっている新色のシート(77000−GBJ−N11ZA、C90D5の元々の適用部品番号は77000−GBJ−N10ZA)の方がよかったあぁぁ。
その後、ブレーキシューをなじませる旅を重ねました。
通勤ではブレーキを強くかける場面などほとんどないので、ブレーキを酷使するのはやっぱり峠に限ります。
最初は右手峠、物見峠、次は全開通間もない林道美作中央線往復、仕上げは林道美作北2号線。季節も絶好で攻めて攻めまくりました。
結果、キタコノンフェードブレーキシューはノーマルのブレーキシューとさして変わらない性能である、また、全くフェードしないわけでもなく、酷使すればそれなりに熱ダレするものだという結論に至りました。
(09.05.12追記)
新型シートのヒンジは直径7mmの軸が必要なのに対し、旧型シート用のヒンジ軸は直径が8mmのボルトで端っこはM6のミリネジになっています。
それならM7のミリネジが存在すれば軸にぴったり合いそうですが、あいにくそんなものはありません。
この問題を解決するためにホームセンターめぐりをしていたら、外径7mm内径6mmのアルミパイプが目にとまりました。 これと長さ90mmのM6ボルト(途中にネジが切られていない)を買って帰りました。

ボルトは長さ8.5cmぐらいの方がいいので端っこを切り落としました。アルミパイプは旧型用ヒンジのブラケットの幅に合わせて切ります。ブラケットの穴は一方がφ6、反対側がφ8ですから取り付けたときどうなるかを考えて切る必要があります。
これを組み合わせたらこうなりました。

軸の端っこに付いている青いスペーサーは寸法のつじつま合わせのためです。ミニ四駆の部品だったりします。
後になって気がついたことですが、新型シートのヒンジ(タンク側)は旧型シートのシート側ヒンジ(50755-GB4-010)と寸法がそっくりです。 このことにもう少し早く気が付いていたら、上の写真の青いスペーサーなしでこの件は解決したのではないかと思いますが、シート革を元ついていたホチキスの玉みたいなもので固定した後に気が付いたので今さら試せませんでした。

つーか、ホンダ純正改悪型シートがまるまる1個余っちゃったんですけど、どうしたらいいんでしょう?
(09.06.08追記)
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