その他の危険とは何か

-!を探せ!-


道路標識の中に、「!」という標識があります。

地点1

黄色い菱形の標識は「警戒標識」という種類で、この「!」は「その他の危険」を表すそうですが、その危険の中身は様々であるようです。
ところによっては危険の中身が全く説明されていないものもあり、わりとレアな標識なので、ここのところ「!」の標識を探しては、何の危険を表しているのかを考え続けていました。

…というのは表向きの理由で、ウチの奥様が「『!』の標識は心霊スポット」という都市伝説を信じているので、「んなわけはねーだろ!」というのを立証するために徹底調査を敢行するハメになったというのが真実に近いです。

今日は「その他の危険」オンパレードをお楽しみください。

@類型化できない具体的な危険があるタイプ
まず、何の説明もないこの物件をご覧ください。

地点2−a地点2−b

左側の写真ではあまり具体的な危険は見出せませんが、この道路を逆向きに来た場合にあたる右側の写真を見ると、ここはかなり変則的な五差路(坂道あり、橋あり、一時停止あり、見通しの悪い脇道あり)になっていて、メイン道路がここで30度ほど屈曲していることがわかります。
左の写真の側から進入すると、「おー。これまっすぐかと思ったら左に折れて坂を下るんじゃ。っと、左から車が飛び出して来た!」という風に次々と危険が襲いかかる場所となっています。
このことを一言で言い表せないので「!」のひと言で済ませて、後は自分で注意してねという、親切な警告となっています。

A何か飛び出すぞタイプ
次の物件も特に何の説明もありません。

地点3−a

上に「右方屈曲あり」の標識があり、その先にカーブが見えていますから、カーブに気をつければいいのかと思うでしょう。
でも違います。
ここはダム湖畔のカーブが次々と続く場所ですから、ここだけに特徴的なその他の危険があるのです。

ここの謎を解くために(っちゅうかもう上の太字タイトルでバレていますが)次の物件を紹介しましょう。

地点4−a

この地点では親切に「出入車両」についての危険だと教えてくれています。
この地点の先を見通すとこうなっています。

地点4−a’

この先にLPガスのステーションがあって、たまに液化ガスを満載したタンクローリーが出入するために、この場所に「その他の危険」標識が立てられたという訳です。

さて、そういう予備知識を持って、先ほどの地点3の20歩ほど手前からの写真をご覧ください。
地点3−a’

ここは道路脇に砂利置場があって、たまにダンプカーなどが出入りしていたようです。
しかし、たとえ危険の真横に標識があっても、「その他の危険って何だろうな〜。カーブのことかな〜。」なんて思いながらダンプと衝突したんじゃ仕方がありません。
「標識令」によると、この標識を立てる場所は「車両又は路面電車の運転上注意の必要があると認められる箇所の手前三十メートルから二百メートルまでの地点における左側の路端」であるべきなので、ポールをケチって危険箇所を通り過ぎたところに警戒標識を出すのは反則と言っていいでしょう。

B季節・状況変動タイプ
「!」の標識には危険の内容を示す表示板が付属するものもあります。
地点5

冬は凍結注意

を表示していたいところですが、
凍結がありえない春夏秋もそのままだとまぬけなので、その間は落石注意

に姿を変えておこうという季節変動型です。

次の物件も同様です。

地点6−a

今回の物件の中では一番新しくてきれいです。
これを見ていたら、「あ、美咲町藤原まで行けばこれと対になる物件があるんだ」と気がついたので行ってみました。

地点6−c

この標識を見ていて、私は妙な違和感を感じました。
「落石」って、落ちていれば標識を出すまでもなくさっさとどければ済むのでは?
ひょっとして、このプレートの裏側にはそうでない場合に表示すべき内容が書いてあるのではないでしょうか。
そう思ったので、おそるおそる差し込んであるプレートを引き出してみました。

地点6−c’

裏側には「全面通行止」「落石注意」と書いてありました。
どうやら、私の違和感はビンゴだったようです。

これは「全面通行止」と「落石」がセットになっており、「通行注意」と「落石注意」がセットになるべきなのです。
全面通行止めを解除する時に、「落石」を「落石注意」に直すのを忘れているようです。
納得した私は、プレートをそっと元通りにして、次の物件に向かいました。

地点6−b

次の物件は地点6−aと地点6−cの中間にあるこれですが、ツッコミ所がわかったらこれにも間違いがあります。
プレートの並び順に決まりがあるのかどうかわかりませんが、上から「何の標識」「どうして危険なのか」「区間はどこ」と並べるのが当たり前とすれば、ここは「通行注意」「落石注意」「区間」の順に並べておくべきでしょう。
ちなみに地点6−bが美咲町栗子であって、地点6−aは美咲町大戸下にありますが、まあ、通行止め区間の予告としては適切な位置です。

地点6−b’

地点6−bの表示板の裏側をチェックしたら「凍結注意」と書いてありますから、地点6の歴史は
  1. 美咲町栗子(6ーb)と美咲町藤原(6−c)の間で、冬季「凍結注意」、夏季「落石注意」の季節変動タイプ標識を設置。
  2. その区間で大きな落石があって全面通行止めになってしまったので、「全面通行止」「落石」のプレートを作って対応。
  3. 川沿いで全面通行止めの表示をいきなり出されても、知らなかった人は迂回路を求めて引き返さないといけないので、迂回路が確保されている美咲町大戸下(6−a)に新しく警戒標識を設置。
  4. 落石が片付いて通常モードに戻ったものの、プレートをあるべき姿に戻しそこねてちょっとチグハグ。
という展開をたどったものと思われます。
これが冬になったら「凍結注意」に変わるのが本来ですが、地点6−cの看板にはスペアのプレートを入れておける箱が付属していません。他の地点からプレートを持ってくるのが正解と思われますが、さてどうなさるのでしょうか。

地点7−a地点7−b

地点6シリーズの上流に、この地点7のペアはありますが、観察のポイントがわかればどこが間違いかお解りだろうと思います。

Cそしてこれは何だ
さて、冒頭の地点1に戻ります。
これは上記@ABのいずれのタイプでしょうか。
改めて地点1


この標識、「この先交差点 事故多発」のふりをしていますが、半年前はこういう姿でした。

地点1(冬季)


「この先橋面凍結のため最徐行」と書いてありました。
ところが、橋面が凍結して最徐行が必要なのは1年365日のうち実際には5日ほどしかありませんから、夏季はこの看板を隠しているわけです。
「最徐行」という言葉は、交通用語としてはかなり重い意味があるので、何となく使ってしまったら(そしてみんなが守ってしまったら)大変なことが起こります。
従ってこの物件の歴史は
  1. 橋面凍結で事故が多発するために設置された、が、夏季に間抜けなので、
  2. 何か飛び出すぞタイプのふりをしようと看板を力技で90度回して見えなくした、
  3. 結果として季節・状況変動タイプになってしまった。
  4. じゃあ初めから地点5〜7のようなのを立てたらよかったんじゃない?
方々の「その他の危険」を見て回りましたが、交通事故の多そうなところではあるが心霊スポットは見当たらなかったようです。
ただ、よく見ると面白物件多発スポットであるとは言えそうです。

「なべのさかやき」目次に戻る