世界をめぐるラバーダック

-思い出と幸福のアヒル-


中国では「黄色いアヒル」の検索ができないというニュースが流れてきました。
それは、天安門事件を風刺したコラージュ画像
これが、何か都合が悪いからのようです。

このアヒル、近年世界のあちこちに出没しています。
芸術家のフロレンティン・ホフマンが製作した「ラバー・ダック」として、世界中を巡っています。
ラバー・ダック (ホフマン)=Wikipediaへのリンク
その意図するところは、年齢や人種に関係なく、子どもの頃の記憶や、思い出を思い起こさせ、幸せや喜びの象徴でもあるとのことです。
なるほど、自分の子ども時代にお風呂にアヒルを浮かべていた記憶はありませんが、なんか、そういう幸せな体験を多くの人と共有するのもいいかもしれません。

と、思って世の中を探したら、このアヒルちゃん、そんじょそこらじゃ売ってないんですね。
ラバー・ダックが登場するイベントで、レプリカが販売されているだけで、通販を探しても見当たりません。
仕方がないので、縁日の道具なんかを売っているお店に行って、キャラクター掬い用の、1個30円のアヒルを買ってきてみました。
これはこれで、ピーピー鳴いて愛嬌があり、数にまかせてお風呂場を占拠してしまいました。。
でも、ホフマンのラバーダックの「何も考えてない感」にはちょっと及ばないんですね。

私がラバーダックに興味を持ったのはこれが初めてではなく、北太平洋で貨物船から落下した3万個のラバーダックが世界中の海を漂流して、10年以上の歳月を経るうちに太平洋どころか北極海をも通り抜け、イギリスまでも流れついたというニュース(これもWikipediaへのリンク)に、何か壮大なロマンを感じたものです。
ラバーダックといえば、どうしてここまで世界を巡りたがるんでしょう。

さて、お話は戻って、ホフマンのラバーダック、どうやったら手に入れることができるんでしょう?
ホフマンがお手本にしたラバーダックは、ホフマンの造形したものではなく、ヨーロッパなら当たり前に見られる他愛もないおもちゃに違いないのです。
家の風呂場をピーピー鳴くアヒルに占領されてからしばらくして、私が気がついたのは、あれは「rubber duck」という商品名ではなく、「bath duck」という商品なのだということでした。
日本では「レプリカ」などと言われていますが、イギリスのTOLOという会社が作ったBathDuckを模してホフマンのラバーダックが作られたので、ホフマンの馬鹿でかいラバーダックの方が言うなればレプリカです。

で、結局
amazon.co.ukでは日本へ発送してくれる業者がみあたらなかったので、amazon.comで注文しました。
ピーピー鳴く笛はついておらず、バニラの香りがします。
私が買ったのは、やや大きめのBath duckではなく、3個1組のMini duckという商品です。
この写真を1枚撮りたいがために、個人輸入にまで手を染めてしまいましたよ。

さて、その後、大阪にダックがやって来たので、訪れてみました。
ちょっと頭へこんでいます
中之島北側の堂島川にダックが浮いています。さすがにでかいです。
この日はあいにくの雨模様でしたが、ダックはそんなこと気にするようでもなく悠々と浮いていました。
ミニダックは家から連れて来ました何か誇らしげなミニダック
平日だったので日中はあまり観客もなく、ダックは暇そうに浮いていましたが、夕方になるとウオーターファンタジアのアトラクションが始まり、音楽とカラフルな噴水に彩られて楽しそうでした。
会場では、レプリカのダック(れっきとしたTOLOのBath duck)が販売されていたので入手しました。
いえ、これはレプリカではなくオリジナルなんです。
ラバーダックがホフマンのオリジナルであり、それはBath duckへのオマージュであるわけですが、こうしてシリアルナンバーを付して販売されると、レプリカと呼ばれちゃうんですよね。
私はホフマンの着眼点と取り組みに敬意を表しながらもあえて言わせてもらいます。「コッチの方がオリジナルですよ」と。
こうしてはるばる地球を逆向きに回ってきたダックがそろってしまいました。
世界を飄々と巡るダックを追って、私にとっても割りと長い道のりでした。

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