一般企業に学ぶ業務改善
トヨタ式とカイゼン
トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)は戦前のアメリカの自動車産業における生産方式(主にヘンリー・フォードが開発した生産方式)を研究し,豊田喜一郎らが提唱していた考えを大野耐一らが体系化したものである。その柱となるのが“7つのムダ”削減,ジャストインタイム,自働化である。おもに製造現場およびそれに付随するスタッフ部門で用いられている手法であるが,その考え方を基に間接部門や非製造業へ適用させていった業務改善手法をトヨタ式とも呼ぶ。
このトヨタ式に代表される日本の「カイゼン」という言葉は世界中で使われている。
教育の現場でも一般企業に学び,「カイゼン」ができる所がないだろうか。
ムリ・ムダ・ムラをなくす
「ムリ」は,無理な状態で仕事をすることである。体のムリ,精神的なムリは,長期間にわたると,体や心を壊す。ムリな計画を立てるのもムリの1つである。計画段階で実現不可能なスケジュールを引くとか,計画自体がずさんで達成がムリなものを作っても,障害に突き当たることになる。
「ムダ」は,成果につながらない仕事。やり直しのムダ,待ち時間のムダ,調整のムダ,チェックのムダ,気を使うムダなど,身の回りにはムダが多い。
「ムラ」は,偏りがある仕事。品質のムラ,気分のムラ,忙しさのムラなどは改善の余地がある。やる気がある日と,やる気がない日の気分にムラがあるのもムラの一種といえる。
ムリ・ムダ・ムラの例としては,2トントラックに3トンの荷物を積むことが「ムリ」,逆に1トンの荷物しか積まないことが「ムダ」,ムリとムダの状態を総合して「ムラ」であるという。ムリ・ムダ・ムラの発見と撲滅ができれば,より成果につながる時間が増えてくるはずである。
ハインリッヒの法則と危険予知トレーニング(KYT)
「ハインリッヒの法則」は,アメリカ人安全技師ハインリッヒ(Herbert Wilhelm Heinrich)が1931年が発表した重大事故が起きる確率法則である。別名を「1:29:300の法則」といい,その名のとおり「1の重大事故の影には29の軽症事故と300の無軽症事故が発生している」とするものである。これらのうち無軽症事故がヒヤリハットといい,ヒヤリハットを予防することが重大事故を防ぐ最善策とされる。「ハインリッヒの法則」は,労働災害の事例を統計分析した結果,導き出されたものである。
労働災害を防止するためには,作業や現場に潜むヒヤリハットを見つけ出し,災害や事故の発生を未然に防止することが重要です。それには,作業者たちが事故や災害を未然に防ぐことを目的に,その作業に潜むヒヤリハットを事前に予想し,指摘しあう活動,つまり危険予知トレーニング(危険予知訓練,KYT)が極めて大切である。
見える化
「見える化」の考え方は,日本企業の生産現場において,実践されてきた伝統的な手法である。その原点は,「何か基本になる情報やデータを現場に提示することで,現場の人が自ら気づき,問題意識を高め,自ら改善する努力を促す仕組みをつくる」ことある。
「見える化」は一言で言えば,問題点が常に「見える」ようにしておく工夫のことである。正常と異常の違いがすぐ分かり「カイゼン」のきっかけが見つけやすい仕事場とか,仕事をするうえであれこれと迷わずにすむ現場づくりのことを指すといってもよいのかもしれない。問題点が見えにくいと,だれもが気にしないで放置してしまったり,見て見ぬ振りをしてしまったりしてしまい,問題点を指摘し解決しようとする人が出てこない。これでは「カイゼン」は進まない。このように企業が進めている「見える化」とは,一般的に問題点などのマイナス面に焦点をあてることによって,多くの人の目にとまるようして問題の解決を目指し,プラスに転化させようとするものである。
「見える化」は「見せる化」であり,「見せよう」とする意志と知恵が必要である。
5S
「5S」とは「整理・整頓・清潔・清掃・躾」のことであり,本来ならば「当たり前のこと」であるが,その「当たり前のこと」がなかなかできないものである。
整理=「要るもの」と「要らないもの」に分けて「要らないもの」を捨てること
整頓=「要るものを使いやすいように置き,誰にでもわかるように明示する」こと
清掃=「常に掃除し,きれいにする」こと
清潔=「整理・整頓・清掃の3Sを維持する」こと
躾 =「決められたことを,いつも正しく守る習慣づけ」のこと
フェールセーフとフールプルーフ
フェールセーフ(Fail Safe)は,システムに故障が発生したり,操作ミスを起こしたりした場合でも,システムが常に安全な状態に保てるように制御することである。
(例)鉄道の列車が分断されるような事がおこると,空気ホースが切れるため,空気 ブレーキが自動的に働く。
フールプルーフ(fool proof)は,利用者の不注意や誤操作などによってシステムが意図しない方法で使用されても,システムが故障したりしないようにするなど,「人間がシステムの操作を誤ってもシステムの安全性と信頼性を保持する」というシステムの信頼性設計の考え方。
(例)電車のドアは時速5km以上の速度ではドアを開く電気回路が作動しない。
人間がミスを起こすことを避けることはできない。「気をつけてミスをなくす。」ではなく,ミスがあったときにきちんと対応できるしくみが必要である。
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