野生のシカに会い自然満喫 「あっ、カモシカだ!」 約20b先に黒っぽい野生味あふれる動物・・・。 あまりの驚きに全身が硬くなってしまった。相手もじっと私を見つめている。5〜6秒後、まるでお辞儀をするように顔を2、3回上下して、後方の 背丈より高いネマガリダケの密生地へ跳ねるように去っていった。 その場に行くと道端を掘り返している。たぶん山芋か草木の根を食べて いたのであろう、野生のにおいが残っているように感じた。岡山県北東部、 紅葉が始まった駒ノ尾山から後山へ縦走中の出来事である。後山山頂で 登山者にこの話をすると「そりゃあ、カモシカじゃない。シカだよ。」 この辺に野生のシカはかなりいるが、人の前に現れるこたはめったにない そうだ。 なるほど、この山にカモシカがいるはずはないが、野生のシカに会えた のは幸運だったようだ。しかし、公園等にいるシカとは全く違う。立派な 角を持ち、野生そのものの大きな体。私の中で彼は「カモシカ」なのである。 興奮も冷めないまま、現在はあまり人が通らないため、少し荒れた登山道 を奥ノ院へ下った。多くの修験者達が修行したであろう岩壁や行場を見なが らの下山である。途中、岩場にひっそり咲くジンジソウに出合った。図鑑で 見たことしかなかったが、花の形が人の字に似ているかれんな白い花・・・。 しばしの間見とれてしまった。 野生のシカとジンジソウに合えた登山のおかげで、未知なる自然に一歩 近づけたような気がした。 |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成13年4月13日・・・
まさに大展望 残雪の泉山 今年初めての登山は泉山(1,209b)に決めた奥津温泉を通り過ぎ、大神宮原登山口に到着。8日午前9時、快晴。 早春のシンボル・フキノトウがやっと土から顔をのぞかせている。 久しぶりの登山だからと、はやる気持ちを抑えて、ゆっくりゆっくり 登っていく。5月並みの暖かさだ。一枚一枚着ている服を脱いでいく。 期待していた残雪がほとんどない代わりに、大量の杉花粉の歓迎を受ける。 山頂付近でやっと残雪に出合えた。ザッ、ザッと雪の感触を楽しみ、 わざと雪の上を歩いて行くと、転んでみたい衝動にかられるのが不思議だ。 津山高校ヒュッテに立ち寄ってみたが、いつもながらきれいで掃除が行き 届いている。登山者のマナーと管理のよさに感心する。 山頂から遠くには那岐連邦、雪が残る恩原三国山、津黒山。近くには 角ヶ仙、花知ヶ仙、湯岳・・・まさに大展望を楽しむが、春がすみのため、 雪の大山を遠望できないのは残念。周囲の木々は冬を耐え抜き、今まさに 芽吹かんと新芽を膨らませている。 しばらく山頂で残雪期の雰囲気を味わってから、笠菅峠へと下りることに した。 私の登山シーズンの開幕である。 |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成13年8月23日・・・
大山で感じた初秋の香り ![]() さっそく鳥取県の秀峰・大山を訪れた。 残暑の厳しさは覚悟の上だったが、登山道を登り始めると直ぐに汗が 吹き出してくる。ブナ林は強い日差しを遮ってくれる代わりに、風も通さな いのでやたら蒸し暑い。この季節にはこまめな水分補給が必要である。 登山道脇に咲くクサボタン、ソバナ等の花に励まされながら登って行く。 今回目当ての可憐な花、白地に紫色の斑紋がある二段構えのヤマジノ ホトトギスにもたくさん出会えた。 六合目を過ぎると、稜線を吹き抜ける涼しい風が爽快だ。山麓や日本海 沿岸の景色が美しく、隠岐ノ島が遠望できた。 山頂は老若男女の登山者で賑わっている。誰もが登りきった達成感か らか、とびっきりの笑顔がはじけている。特に元気な中高年が多いようだ。 山頂付近では、秋の花であるゴマナ、アキノキリンソウが咲き始め、ダイ センキャラボクは赤い実を付けている。ナナカマドの葉はもう赤みを帯び てきている。 大山山頂の季節の色は、確実に夏から秋に移り始めている。初秋の香 りを乗せて、山頂から山麓に向けて秋風が駆け下りていくのを感じた。 |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成13年9月15日・・・
残念に思った高山植物採取 少し足をのばして島根県・三瓶山(さんべさん)に登った。この山は中国地方では珍しいカルデラ型なので、周遊(縦走)が楽しめる。 最高峰の男三瓶山が1126m、とりわけ高くはないが、孫三瓶・子三瓶・女 三瓶山と縦走すれば、かなり距離が延びるため健脚向きである。 夏の終わりを彩る可憐なイヨフウロ、ママコナ、ツリガネニンジン、マツム シソウ・・・数え上げれば切りがない程の花々。変化に富んだ地形が、様々 な種類の花を育てるのだろう。花好きな人にはこたえられない、魅力のあ るコースである。 山頂で、地元の子供会らしい30人程の団体に出会った。元気な子供達 がはしゃぐのは微笑ましいが、母親の2〜3人が高山植物の花を手にして いたのには驚いた。ここは国立公園であり、そうでなくても植物採集は禁止 である。リーダーらしき人から注意してもらおうと、話をしてみたが、逆に 怪訝な顔をされてしまった。「少し位いいじゃないですか。子供達もあんな に楽しんでいるんだから・・・」 このように山を分かっていない人達がいるから、山が荒れるのか、と 残念に思いつつ下山した。山の花は山にあってこそ美しく咲き、登山者を 楽しませてくれるはずなのだが・・・ |
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男三瓶山 | 左が孫三瓶山、右が子三瓶山 |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成13年10月8日・・・
自然の奥深さ感じた7つの滝 ![]() 小さな滝が数段に連なっている滝や静かにゆったりと流れる滝、 落差80mの豪快な滝など、「よくぞ、これだけの滝がここ一帯に集まっ たものだ」と感心した。七つの滝にはそれぞれ個性的な名前が付いて おり、命名者の氏名と共に立派な看板が設置してある。 絶えることなく流れ落ちる澄みきった水に、改めて山の保水力の凄さ、 自然の奥深さを感じた。 登山には最適な紅葉の季節を迎え、日頃は山に縁遠い人にも 生きている山・自然を体験してほしいものだ。 又、滝をつなぐ山道を整備された勝北町、及び関係者の方々の 並々ならぬ努力に敬意を表したい。 |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成14年7月13日・・・
この色の文字は原文です。(優しい表現に添削されました)
貴重な植物採取 心ない行為残念 (残念に思う山野草の盗掘) 梅雨の合間に鳥取県・大山を訪問してきた。5合目付近までは、ブナ林に風がさえぎられて蒸し暑い 登りであった。6合目付近にはシモツケやクガイソウが 咲き始め、山頂付近ではさわやかな風が吹き、夏の花 イヨフウロが出迎えてくれた。 今回はオオバノトンボソウ(ラン科)を見ることが目的の 登山であったが、毎年2〜3株咲いている場所に彼達は見 えなかった。(居なかった) 根こそぎ持ち去られていたのである。 国立公園では植物採集は禁止であり、罰則も規定 されているのに・・・心ない人の行為が残念であった。 (自称山野草愛好家と言われる人の行 為であろうか?) 以前、HPに山野草を載せていて次の様な注意を受けたこと があった。 「珍しい草花を載せると、それを見て盗掘する人達が いるので、撮影場所が分からない工夫をして下さい」 IT(情報技術)の進歩が思わぬ所で、マナー違反の人達に利用されてい るのが驚きであった。このままでは貴重な山野草は絶滅し てしまうであろう。 山の草花を持ち帰っても、根付かないし、仮に根付いた としても花の色や形態は変化してしまうだろう。 山の花は山に咲いてこそ美しく、登山者達を楽しませて くれると思うのだが・・・ |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成14年10月17日・・・
整備してほしい 上蒜山の登山道 紅葉には少し早かったが、快晴の秋空の下、 蒜山三座を縦走してきた。下蒜山登山口を出発すると、早速秋の草花。 青紫色のリンドウ、ウメバチソウ、ヤマラッキョウ 等が出迎えてくれた。 「咲き誇る」と言う言葉が縦走路の風景となり、 目に飛び込んでくるようだ。 地面近くには精巧な創りのセンブリの花、 まさに自然の妙である。 下蒜山山頂では大山遠望を楽しみ、中蒜山山頂では、 さわやかな風に身を任せながら、三平山から 蒜山高原の広大なパノラマを満喫した。 上蒜山下山途中で望む、烏ヶ山と大山東壁の景色は なごり惜しくて見飽きない。 下山すると、登山口にあらかじめ用意しておいた 自転車で、サイクリングを楽しむ番である。 ここの自転車専用道は良く整備されており、快適に 下蒜山登山口に帰ることができた。 一つ気になることは、縦走路から上蒜山山頂 (三角点)まで約200mの登山道が、薮こぎ状態で 歩き難いことである。 山頂は展望も無く、行く人も少ないとは思うが・・・。 「自然を残してあるのです」と言われるのなら納得 するが、整備された縦走路に比べて差があり過ぎる。 蒜山三座として有名なので、各山頂や三角点に 行きたいのは登山者の心理である。 関係者の方々の一考を望みたい。 |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成15年9月14日・・・
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成15年12月10日・・・
「ロマン街道」休憩場所必要 11月24日に竣工式が行われた「片鉄ロ マン街道」をサイクリングして来た。平成3年に廃線となった片上鉄道跡を利用し た自転車・歩行者専用道である。 柵原町(柵原ふれあい鉱山公園)から備前市ま で、一部未完成ではあるが全長34.2q。 60数年にわたり、人々や柵原鉱山から硫化 鉄鉱などを運び続けた片上鉄道。かつては列 車が走ったトンネルや駅舎跡を自転車で走り 抜けるという、なんとも不思議な感覚を味わ った。線路跡であるから急勾配も無く、吉井 川や山々の紅葉を愛でながら風を切るのは爽 快である。 ところが、備前サイクルセンターではトイ レ標識は有るのに閉まっていて利用出来ない。 備前市西片上でロマン街道は突然消滅してお り、よく見ると少し手前に起点の標識が有る のみ。休む場所も無く、門前払いをくらった 気持ちになった。柵原町側には公園があるの に、これでは「片鉄ロマン街道」はバランス を欠く。 残念な気分を引きずり、帰り道が余計に遠く 感じたのは私だけだろうか。 海が展望できる所まで延長し、小さくても よいから休憩場所を作るなど、関係機関には 一層の整備を望みたい。 |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成16年3月18日・・・
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成16年4月15日・・・
自然は預かり物 皆で保護しよう ![]() カタクリの陰に隠れるように、イチリンソウ も数株ひっそりと咲いていた。白い花の裏の 淡紅色は、恥じらいながら「カタクリさんば かり撮らないで、私も見てよ」とささやいて いるようだ。 しかし、報道などで有名になった為に、他 の自生地と同じく盗掘も後を絶たないそうだ。 ロープを張って保護活動をしなければならな い現状を見るにつけ、咲き誇る花たちが管理 されているようで哀れさを感じた。ややうつ むいて咲く姿は、我々に何かを訴えているの だろうか。 「自然は祖先からの贈り物ではなく、子孫か らの預かり物」 豊かな自然を大切にしなけれ ばと改めて思い、これから咲くであろう新庄 村・毛無山山頂付近のカタクリたちにも、ふ と会いたくなった。 |
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成16年7月22日・・・
山陽新聞「ちまた欄」・・・平成16年12月19日・・・