山陽新聞「ちまた欄」・・・平成12年10月29日・・・   

野生のシカに会い自然満喫

 「あっ、カモシカだ!」 約20b先に黒っぽい野生味あふれる動物・・・。 あまりの驚きに全身が硬くなってしまった。相手もじっと私を見つめている。
 5〜6秒後、まるでお辞儀をするように顔を2、3回上下して、後方の 背丈より高いネマガリダケの密生地へ跳ねるように去っていった。 その場に行くと道端を掘り返している。たぶん山芋か草木の根を食べて いたのであろう、野生のにおいが残っているように感じた。岡山県北東部、 紅葉が始まった駒ノ尾山から後山へ縦走中の出来事である。後山山頂で 登山者にこの話をすると「そりゃあ、カモシカじゃない。シカだよ。」 この辺に野生のシカはかなりいるが、人の前に現れるこたはめったにない そうだ。
 なるほど、この山にカモシカがいるはずはないが、野生のシカに会えた のは幸運だったようだ。しかし、公園等にいるシカとは全く違う。立派な 角を持ち、野生そのものの大きな体。私の中で彼は「カモシカ」なのである。
 興奮も冷めないまま、現在はあまり人が通らないため、少し荒れた登山道 を奥ノ院へ下った。多くの修験者達が修行したであろう岩壁や行場を見なが らの下山である。途中、岩場にひっそり咲くジンジソウに出合った。図鑑で 見たことしかなかったが、花の形が人の字に似ているかれんな白い花・・・。 しばしの間見とれてしまった。
 野生のシカとジンジソウに合えた登山のおかげで、未知なる自然に一歩 近づけたような気がした。


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成13年4月13日・・・   

まさに大展望 残雪の泉山

 今年初めての登山は泉山(1,209b)に決めた
奥津温泉を通り過ぎ、大神宮原登山口に到着。8日午前9時、快晴。
 早春のシンボル・フキノトウがやっと土から顔をのぞかせている。 久しぶりの登山だからと、はやる気持ちを抑えて、ゆっくりゆっくり 登っていく。5月並みの暖かさだ。一枚一枚着ている服を脱いでいく。 期待していた残雪がほとんどない代わりに、大量の杉花粉の歓迎を受ける。
 山頂付近でやっと残雪に出合えた。ザッ、ザッと雪の感触を楽しみ、 わざと雪の上を歩いて行くと、転んでみたい衝動にかられるのが不思議だ。 津山高校ヒュッテに立ち寄ってみたが、いつもながらきれいで掃除が行き 届いている。登山者のマナーと管理のよさに感心する。
 山頂から遠くには那岐連邦、雪が残る恩原三国山、津黒山。近くには 角ヶ仙、花知ヶ仙、湯岳・・・まさに大展望を楽しむが、春がすみのため、 雪の大山を遠望できないのは残念。周囲の木々は冬を耐え抜き、今まさに 芽吹かんと新芽を膨らませている。
 しばらく山頂で残雪期の雰囲気を味わってから、笠菅峠へと下りることに した。 私の登山シーズンの開幕である。


 

     山陽新聞「ちまた欄」・・・平成13年8月23日・・・   

大山で感じた初秋の香り

ヤマジノホトトギス  「ヤマジノホトトギスが咲いていますよ」と友人から嬉しいメール。
さっそく鳥取県の秀峰・大山を訪れた。
 残暑の厳しさは覚悟の上だったが、登山道を登り始めると直ぐに汗が 吹き出してくる。ブナ林は強い日差しを遮ってくれる代わりに、風も通さな いのでやたら蒸し暑い。この季節にはこまめな水分補給が必要である。
 登山道脇に咲くクサボタン、ソバナ等の花に励まされながら登って行く。 今回目当ての可憐な花、白地に紫色の斑紋がある二段構えのヤマジノ ホトトギスにもたくさん出会えた。
 六合目を過ぎると、稜線を吹き抜ける涼しい風が爽快だ。山麓や日本海 沿岸の景色が美しく、隠岐ノ島が遠望できた。
 山頂は老若男女の登山者で賑わっている。誰もが登りきった達成感か らか、とびっきりの笑顔がはじけている。特に元気な中高年が多いようだ。
 山頂付近では、秋の花であるゴマナ、アキノキリンソウが咲き始め、ダイ センキャラボクは赤い実を付けている。ナナカマドの葉はもう赤みを帯び てきている。
 大山山頂の季節の色は、確実に夏から秋に移り始めている。初秋の香 りを乗せて、山頂から山麓に向けて秋風が駆け下りていくのを感じた。


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成13年9月15日・・・   

残念に思った高山植物採取

 少し足をのばして島根県・三瓶山(さんべさん)に登った。
この山は中国地方では珍しいカルデラ型なので、周遊(縦走)が楽しめる。 最高峰の男三瓶山が1126m、とりわけ高くはないが、孫三瓶・子三瓶・女 三瓶山と縦走すれば、かなり距離が延びるため健脚向きである。
 夏の終わりを彩る可憐なイヨフウロ、ママコナ、ツリガネニンジン、マツム シソウ・・・数え上げれば切りがない程の花々。変化に富んだ地形が、様々 な種類の花を育てるのだろう。花好きな人にはこたえられない、魅力のあ るコースである。
 山頂で、地元の子供会らしい30人程の団体に出会った。元気な子供達 がはしゃぐのは微笑ましいが、母親の2〜3人が高山植物の花を手にして いたのには驚いた。ここは国立公園であり、そうでなくても植物採集は禁止 である。リーダーらしき人から注意してもらおうと、話をしてみたが、逆に 怪訝な顔をされてしまった。「少し位いいじゃないですか。子供達もあんな に楽しんでいるんだから・・・」
 このように山を分かっていない人達がいるから、山が荒れるのか、と 残念に思いつつ下山した。山の花は山にあってこそ美しく咲き、登山者を 楽しませてくれるはずなのだが・・・

男三瓶 孫三瓶と子三瓶
男三瓶山 左が孫三瓶山、右が子三瓶山


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成13年10月8日・・・   

自然の奥深さ感じた7つの滝

広戸仙の滝  涼しさが心地よい秋風に誘われて、勝北町の爪ケ城山(1115m)に 登った。地元では親しみを込めて広戸仙と呼んでいるこの山に、 七つの滝を巡る「ふるさとコース」が、今年新たに整備されたと聞いた からだ。山の北側中腹に点在する滝を巡ってから山頂に至る登山道は、 距離が長いので一日ゆっくり歩きたい人向きのコースである。
 小さな滝が数段に連なっている滝や静かにゆったりと流れる滝、 落差80mの豪快な滝など、「よくぞ、これだけの滝がここ一帯に集まっ たものだ」と感心した。七つの滝にはそれぞれ個性的な名前が付いて おり、命名者の氏名と共に立派な看板が設置してある。
絶えることなく流れ落ちる澄みきった水に、改めて山の保水力の凄さ、 自然の奥深さを感じた。
 登山には最適な紅葉の季節を迎え、日頃は山に縁遠い人にも 生きている山・自然を体験してほしいものだ。
 又、滝をつなぐ山道を整備された勝北町、及び関係者の方々の 並々ならぬ努力に敬意を表したい。
 

 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成14年7月13日・・・   

この色の文字は原文です。(優しい表現に添削されました)

貴重な植物採取 心ない行為残念 (残念に思う山野草の盗掘)

 梅雨の合間に鳥取県・大山を訪問してきた。
5合目付近までは、ブナ林に風がさえぎられて蒸し暑い 登りであった。6合目付近にはシモツケやクガイソウが 咲き始め、山頂付近ではさわやかな風が吹き、夏の花 イヨフウロが出迎えてくれた。
 今回はオオバノトンボソウ(ラン科)を見ることが目的の 登山であったが、毎年2〜3株咲いている場所に彼達は見 えなかった。(居なかった) 根こそぎ持ち去られていたのである。 国立公園では植物採集は禁止であり、罰則も規定 されているのに・・・心ない人の行為が残念であった。 (自称山野草愛好家と言われる人の行 為であろうか?)
以前、HPに山野草を載せていて次の様な注意を受けたこと があった。 「珍しい草花を載せると、それを見て盗掘する人達が いるので、撮影場所が分からない工夫をして下さい」 IT(情報技術)の進歩が思わぬ所で、マナー違反の人達に利用されてい るのが驚きであった。このままでは貴重な山野草は絶滅し てしまうであろう。
 山の草花を持ち帰っても、根付かないし、仮に根付いた としても花の色や形態は変化してしまうだろう。 山の花は山に咲いてこそ美しく、登山者達を楽しませて くれると思うのだが・・・
 


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成14年10月17日・・・   

整備してほしい 上蒜山の登山道 

 紅葉には少し早かったが、快晴の秋空の下、 蒜山三座を縦走してきた。
 下蒜山登山口を出発すると、早速秋の草花。 青紫色のリンドウ、ウメバチソウ、ヤマラッキョウ 等が出迎えてくれた。
「咲き誇る」と言う言葉が縦走路の風景となり、 目に飛び込んでくるようだ。 地面近くには精巧な創りのセンブリの花、 まさに自然の妙である。
 下蒜山山頂では大山遠望を楽しみ、中蒜山山頂では、 さわやかな風に身を任せながら、三平山から 蒜山高原の広大なパノラマを満喫した。 上蒜山下山途中で望む、烏ヶ山と大山東壁の景色は なごり惜しくて見飽きない。
 下山すると、登山口にあらかじめ用意しておいた 自転車で、サイクリングを楽しむ番である。 ここの自転車専用道は良く整備されており、快適に 下蒜山登山口に帰ることができた。
 一つ気になることは、縦走路から上蒜山山頂 (三角点)まで約200mの登山道が、薮こぎ状態で 歩き難いことである。 山頂は展望も無く、行く人も少ないとは思うが・・・。 「自然を残してあるのです」と言われるのなら納得 するが、整備された縦走路に比べて差があり過ぎる。
蒜山三座として有名なので、各山頂や三角点に 行きたいのは登山者の心理である。 関係者の方々の一考を望みたい。


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成15年9月14日・・・   

ちまた欄

注:「学校の対応」は「先生の対応」に添削されていました。

 


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成15年12月10日・・・   

「ロマン街道」休憩場所必要 

 11月24日に竣工式が行われた「片鉄ロ マン街道」をサイクリングして来た。
平成3年に廃線となった片上鉄道跡を利用し た自転車・歩行者専用道である。
柵原町(柵原ふれあい鉱山公園)から備前市ま で、一部未完成ではあるが全長34.2q。 60数年にわたり、人々や柵原鉱山から硫化 鉄鉱などを運び続けた片上鉄道。かつては列 車が走ったトンネルや駅舎跡を自転車で走り 抜けるという、なんとも不思議な感覚を味わ った。線路跡であるから急勾配も無く、吉井 川や山々の紅葉を愛でながら風を切るのは爽 快である。
 ところが、備前サイクルセンターではトイ レ標識は有るのに閉まっていて利用出来ない。 備前市西片上でロマン街道は突然消滅してお り、よく見ると少し手前に起点の標識が有る のみ。休む場所も無く、門前払いをくらった 気持ちになった。柵原町側には公園があるの に、これでは「片鉄ロマン街道」はバランス を欠く。
残念な気分を引きずり、帰り道が余計に遠く 感じたのは私だけだろうか。
 海が展望できる所まで延長し、小さくても よいから休憩場所を作るなど、関係機関には 一層の整備を望みたい。


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成16年3月18日・・・   

ちまた欄
ちまた欄

 


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成16年4月15日・・・   

自然は預かり物 皆で保護しよう

カタクリ  津山市小桁のカタクリ自生地を訪れてみた。 山の斜面で、優しい春風に揺れながら咲く姿 は、山野草の女王と呼ばれるだけあって、可 憐でありながら清艶(せいえん)な風情があ る。花びらをよく見ると、グラデーションや 波形の模様でそれぞれの個性を主張している ようだ。
 カタクリの陰に隠れるように、イチリンソウ も数株ひっそりと咲いていた。白い花の裏の 淡紅色は、恥じらいながら「カタクリさんば かり撮らないで、私も見てよ」とささやいて いるようだ。
 しかし、報道などで有名になった為に、他 の自生地と同じく盗掘も後を絶たないそうだ。 ロープを張って保護活動をしなければならな い現状を見るにつけ、咲き誇る花たちが管理 されているようで哀れさを感じた。ややうつ むいて咲く姿は、我々に何かを訴えているの だろうか。
 「自然は祖先からの贈り物ではなく、子孫か らの預かり物」 豊かな自然を大切にしなけれ ばと改めて思い、これから咲くであろう新庄 村・毛無山山頂付近のカタクリたちにも、ふ と会いたくなった。


 

   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成16年7月22日・・・   

ちまた欄
ちまた欄

 


   山陽新聞「ちまた欄」・・・平成16年12月19日・・・   

ちまた欄

 


 

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