金属関連地名考-山口余話2
「山口の金属関連地名考」を書いてから、時間がかなり経過している。いま改めて読み返してみると、幾分修正した方がいい部分もある。何分にも特別な資料もないままに、その時の勢いというか感・勘で筆を滑らせたところもあって、<そのあたりは総合的に検証する必要があるが・・・なかなかに楽しみな素材>などと、ついお茶を濁してしまった。 現地でのフィールドワークや資料収集などは、今日なお欠いたままなので、とりあえず原文の修正や改作は置くとして、その後確認できた事柄についてのみ<余話2>として、ここに幾つかの補足を追記しておきたい。
山口の金属関連地名考 <抜粋>
そういう風に考えながら、T氏から送られてきた周防・長門の古図を眺めると美祢の赤村・於福と麻生(マブ)・山口の仁保(ニホ)・岩国の二鹿(ニカ)などは、当然地域の伝承・周辺の小字名や切絵図名など,総合的に検証する必要があるが,古代金属関連地名としてなかなかに楽しみな素材と感じられた。そのほかにも、阿武の地福・鷹の巣・北側の大蔵岳と、フク・タカ・クロ(ラ)の複合地域が見られ、地福川の下流をたどると、高佐村・鷹巣山・その東麓の蔵目喜、北麓の福井・福田と、やはりここにもタカ・フク・クロの濃厚な複合を確認できる。 |
ここで挙げた地名のなかで、□で囲んだ於福・二鹿・蔵目喜(木)については、その後に読み込んだ大日本地名辞書の記述や、ネットに上がる幾つかの鉱山・鉱物関連データから、金属の採鉱や精錬などに関連する地名と考えて、ほぼ間違いないものと思われる。
1) 於 福 について
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大日本地名辞書 |
「今於福村と云う、嘉万に西なる山村にして厚狭川の水源・・・、於福村の田圃は金焼の患ありて・・・従来の習慣にては塩灰を用いれば土地の金焼を防ぐと云へり・・・按にこの村の土壌、凡そ一貫目中一匁八分の銅を含めるものを最大量とす、・・・故に此地の金焼は、全く銅の作用たるべし。(地学雑誌)」 |
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山口県の鉱山・鉱物 |
○大和鉱山 美祢市於福町下 (閉山) |
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銀・銅・鉛・亜鉛など |
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赤銅鉱・黄鉄鉱・黄銅鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱など |
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○山上鉱山 美祢市於福下 (閉山) |
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銅など
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黄銅鉱・孔雀石など |
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2) 二 鹿 について
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山口県の鉱山・鉱物 |
○喜和田鉱山 岩国市二鹿 (1919~休山中) |
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銅・錫・タングステンなど |
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錫石・黄銅鉱・磁硫鉄鉱など |
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○玖珂鉱山 岩国市美川町根笠 (1993閉山) |
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錫・タングステンなど |
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錫石・磁硫鉄鉱・マラヤ石など |
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○河山鉱山 岩国市美川町四馬神 (1658~1970閉山) |
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金・銅・亜鉛など |
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磁硫鉄鉱・黄銅鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱など |
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3) 蔵目木 について
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大日本地名辞書 |
「蔵目木(ザウメキ) 生雲の大字にして、鉱山あり、銅を出す。萩を去る五里、今立平桜郷等数所の開坑を見るも、年額十余万斤に過ぎず、延喜式に「凡鋳銭年料、銅鉛者、長門国銅二千五百斤、鉛千五百斤・・・・・・・」 |
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補<蔵目木>地学雑誌、蔵目木銅山は阿武郡蔵目木村にあり、萩を去る東六里に位せり、現今大坂住友氏の借区に属し、拾一万七千五百六十八坪、拾五字(アザ)に跨り、開坑は字桜郷、字立平、字着の谷に各壱ケ所・・・・、性質、□(金偏+通、鉱脈のことか?)は石灰岩の空洞中に沈積したる鉱床と、石英斑岩脈に沿ふたる鉱脈との二種あり・・・・・<以下略>・・・」 |
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山口県の鉱山・鉱物 |
○桜郷(蔵目木)鉱山 阿武郡阿東町蔵目木 (1964閉山) |
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金・銀・銅・鉛・亜鉛など |
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黄鉄鉱・黄銅鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱・斑銅鉱など |
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○川井山鉱山 阿武郡阿東町蔵目木 (閉山) |
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銅・鉛・亜鉛など |
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黄鉄鉱・黄銅鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱など |
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また、赤村について確証は見出せなかったものの、地域を同じくする<美祢宰判内>の綾木・真名・長登、さらには隣接地域の佐々並などに、データとして銅鉄鉛などの鉱山が集中して現れることなどから、赤村の赤は<金属関連のアカ>であろうことが強く感じられるところ。
ただし埴生や山野井などについは、未だ手がかりや糸口となるような素材は見えていない。
*<山口県の鉱山・鉱物>に関するデータは、Wikipediaなどネット上のデータや資料等を参考とした。
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