泉山
登山(2007年1月8日 晴れ)
<大雪の道>
岡山県北は昨日の未明からの大雪になった。
実はその昨日、大雪の中、泉山に登ろうと早朝の大神宮原登山口に立った。
しかし、その雪の勢いに恐怖し、登山口の写真だけ写して敗退する。
登山口まで行って、登るのを中止したのは、どのくらいぶりだろうか。
数年ぶりに冬の山に復活した今シーズン、年明け早々、怖さも思い出した。
もともと、雪の花知ヶ仙に登ろうと北上し、最初の挫折で泉山に変更。
さらに、泉山登山口で次の挫折を喫することになる。
このままでは悔しいので、天候の回復しそうな今日、再チャレンジすることに。
昨日とほぼ同じくらいの時間に自宅を出発し、泉山へ向かう。
大神宮原の登山口看板まで車を走らせ、看板横の路肩に駐車。
途中、奥津振興センター前の温度計はマイナス4℃を表示していた。
昨日は吹雪の中、20cmほどの新雪を蹴散らしながら車を走らせた。
今日は、既にここまで除雪車が上がっており、すんなり到着。
この先は除雪をしておらず、笠菅峠までの林道は、新雪のままのようだ。
人の足跡は一切無く、これからの道のりを想像すると気持ちが昂ぶる。
<新雪の道>
天候はすこぶる良く、雪の明日とは良く言ったものだと思う。
数年ぶりにスノーシュを履き、雪面に踏み出す。
実のところ、20〜30cmの積雪でスノーシュ無しでも十分進める。
スノーシュを履くのがうれしく、積雪量は問題でなくなる。
完全な新雪の深雪が、久しぶりの負荷をより厳しくさせる。
新雪にはイタチのものだろうか、縦横無尽に走り回っている。
音の少ない雪の朝、ザッシザッシと歩く音だけが目立つ。
降りだしてから、ずっと氷点下の気温にしか触れていない雪は軽く気持ちよい。
鼻歌も出るような気持ちで楽しむスノーハイク。
途中のロープは完全に凍りつき、垂れ下がりの頂点は新雪に埋まる。
ロープ場の急坂を過ぎると、休憩舎に到着。
休憩舎を巻くように歩きまわり、少し休憩を取る。
ようやくスノーシュの感覚を思い出し、歩くのが楽しくなってくる。
急傾斜の伝言板には、少し以前のものと思われる書き込みもある。
まだ日が登る前の日陰だが、見上げれば、濃い青の空が気持ちよい。
<ツボ足の道>
休憩舎を出発すると、一気に勾配がきつくなりはじめる。
落ち着いた雪面ならば、急坂でも問題ないスノーシュも、フカフカの新雪で簡単にグリップを失う。
予想以上に新雪に苦戦し始め、スリップの回数が多くなる。
こうなれば、えい、とスノーシュを外し、ツボ足に変更。
膝まで潜ってしまうが、こちらのほうが確実に高度を稼ぐことができる。
このコース、平成16年の台風以降、初めて登るが、ここも倒木被害が見られる。
コースの近辺も復旧箇所が多くあり、覚えていた景色とずい分違う。
急坂で振り返れば、大神宮原に今付けてきた足跡が、一本の細い線として眺められる。
写真を撮ろうとカメラの電源を入れると、メモリーが入っていないとメッセージが。
役に立たない自分に、心地よく楽しんでいた気持ちが一気に萎えてしまう。
中央峰山頂直下では、さらに潜りこむような雪と格闘する。
緩斜面では泳ぐように、急斜面では張り付くように。
ヨッコラショーと掛け声を出しながら。
膝で斜面を押さえつけ、一歩一歩足を持ち上げる。
標高を稼ぐと共に、山の明るさが増し稜線が近いことを感じてくる。
<尾根の道>
白一色、しっかり雪化粧をされた中央峰に到着。
全く踏み跡のついていない稜線が、北に南に手招きしている。
朝日が新雪に激しく反射し、サングラスを外すと目が開けていられないほど眩しい。
ここからは山頂へ向け、雪の中の縦走を楽しむ道のり。
縦走路に進もうとするが、思っていたよりもずっと雪が深い。
それではと、スノーシュを再度履き直し、気も取り直し歩き出す。
中途半端な積雪量で、潅木をよけながらの尾根歩きとなる。
雪が軽く、所によってはグリップ不足に悩まされる。
登ったり下ったり、振り向いては雪景色を楽しんで北へ向かう。
ひと汗かいて、全面新雪で覆われた、泉山山頂に到着。
山頂の気温は-1℃で、暑くも無く、寒くも無く、ほぼ無風。
雪原の真ん中に一等三角点が、遠慮がちに頭を出している。
綺麗な風景を前に、カメラがあるのに写せない悔しさを噛みしめる。
しょうがないので携帯電話のカメラに数枚記録を残す。
大山は見えないが、他の周囲の山々は見事に見渡せる。
<帰りの道>
復路はたった今歩いてきた道をそのまま戻る。
再び戻った中央峰でスノーシュを外し、登りで付けた踏み跡へ戻る。
目標を決め、大股で直線的に滑るように下ってゆく。
勢い良く下ると、靴との相性が悪いのか、スパッツの下部から雪が入りこむ。
スリーシーズン用のスパッツだが、こうなるとやはり冬用が欲しくなる。
面白いように下ることが出来るが、もったいない気持ちになる。
せっかくの新雪を、もっとゆっくり楽しんでいたいような気分だ。
格闘しながら登ったのが、うそのようなスピードで下ることが出来る。
歩きながら、笠菅コースから下っても良かったかなと考えたりもする。
距離は長くなるが、これだけ雪に恵まれたならば、楽しかっただろう。
最後まで、雪の中を誰とも会うことの無い一人山行。
登山口から山頂まで、全くトレースの無い雪道を歩いたのはどれくらいぶりだろうか。
冬の明るい午前中、静かな静かな雪山をしっかり楽しむことが出来た。
雪山好きの友人が、毎年この時期を狙って泉山に登っている。
もしか会えるかもと思ったが、残念ながら別の山に入っていたらしい。
<今回のコースタイム>
登山口7:44−休憩舎8:08−9:31中央峰9:37−10:03泉山山頂10:15−10:35中央峰10:40
−休憩舎11:14−11:24登山口
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