広戸仙滝山那岐山 縦走(2007年3月5日 くもりのち晴れ)
<平日倶楽部>
岡山の山メーリングリストの平日倶楽部に参加。
今回は爪ヶ城から滝山、那岐山への縦走がStephan氏によって計画される。
Stephan氏、吉備の中山氏、obusa氏、Tepco氏、NIO氏が那岐山へ集合。
乗り合いで爪ヶ城登山口の声ヶ乢に回ってもらう。
HUKUSIMA氏、ティアラ氏、そして私が声ヶ乢に直行し合流という計画。

津山は朝から雨、道中、車のラジオからは暴風や波浪、雷の注意が促される。
那岐三座は全く見えない、そこには真っ白いガスにまとわれた景色があるのみ。
今日の津山の予想最高気温は19℃、昨日の最高気温は21.5℃。
悪天候にもかかわらず、寒くはならないだろうと予想される。
声ヶ乢へ7時25分に到着、私が最後のようで他のメンバーは既に揃って準備中。

誰一人として悪天候で中止、という雰囲気は見えず、それどころか笑顔だったり。
後で聞けば、皆それぞれが、やっぱり登るんだな、と思っていたとか。
案外、誰かから、何が何でも登るのだオーラが出ていたのかもしれない。
駐車場から登山道を見上げれば、ガスがゴーゴーと音を立てながら流れる。
気温は高く、雨もそれほど心配でなさそうだが、強風が凶と出ないか心配だ。

雨は降っていないが、防風の為、カッパを着る。
私のカッパは機能素材ではあるが、ゴアテックスではない。
ゴアに比べると、その蒸れようは楽しめること請け合い。
可能な限りの薄着を考え、Tシャツの上に直接カッパを着る。
下はズボンのままで、カッパは着ないことに。
今回はタイツもはかず、3月上旬にして、完璧に春の装いとなる。

<広戸仙へ>
平日の暴風波浪雷注意報の中、集まったおバカ連8人組。
お互いに注意事項を確認し合い、さて那岐山まで行けるかなと登山スタート。
良く整備された声ヶ乢からの登山道を登りはじめる。
そこらじゅうでイノシシの活躍した大穴の見られる登山道を登りつめる。
時に寡黙に、時に賑やかに。

途中、大きく開いたフキノトウや満開のアセビに出会う。
暖冬に押された早い春の訪れを感じる。
途中で数回、ペースが速いと注意を受ける。
いつも一人で自分勝手に歩いており、パーティでのペース配分が上手くつかめない。
今歩いているのは、速いのかゆっくりなのか、経験不足だ。

第一、第二展望所で小休止を挟みながら、順調に登ってゆく。
第二展望所を過ぎ稜線に出たころから、一気に風が強くなる。
那岐三座はいわゆる広戸風と呼ばれる南向きの吹き降ろしが有名だが、今日は逆。
南から北に向けて、吹き上げるガスがはっきり見える。
稜線尾根を越えて流れ飛ぶ突風が無理は止めろと言っているようにも見える。

整備された登山道から岩場の比率が増えはじめると山頂も間近。
1000m標柱付近、風を避け木々に隠れるように休憩を取る。
天候の回復は見込めないまま、展望岩の分岐に到着。
今日の展望岩は展望無い岩に成り下がっている。
普段なら、股間がスーとする高所だが、展望が無いと恐怖心も少なくなる。

一回下り返して、三角点爪ヶ城展望所。
当然のようにガスの中で、展望は一切得られない。
休憩をしながら今日の最初の三角点の話題で盛り上がる。
種でも落ちたのか三角点横から40cmほどの芽が出ており、これ以上伸びないように処理する。
ここから自由行動とし、山頂までの少しの区間をバラバラに歩く。

広戸仙山頂では風も止み、随分、穏やかなひとときが訪れる。
休憩中、ティアラ氏より全員に生チョコレートの配給があり、おいしく頂戴する。
天候の回復と気温の上昇が期待できそうで、カッパを脱いだりアウター調整をする。
私はガスの最中は暑くてもカッパを着ておこうと、そのままにする。
ここまでは、汗こそ出るが、暑くも寒くも無いという感じで来れている。

<滝山へ>
さあいよいよ、ここから縦走スタートだと意気揚揚と山頂を出発する。
晴れていれば気持ち良いであろう林間の縦走路を東に向け下る。
樹齢の若い木が多いが、原生林や笹原のきれいなコースだ。
途中、縦走路脇の笹薮に残雪がわずかに見られる。
あがけ峠まで一気に下り、滝山に向かって登り返す道のり。

爪ヶ城山頂より高低差で約200m下り、縦走路中の最低地点、あがけ峠。
まさに峠といった少し鬱蒼とした雰囲気のあがけ峠には案内看板が多い。
ふるさとコースや大吉への分岐、そして縦走路が交差点を作っている。
ここから滝山に向けての登りは高低差約300m、気合が入る。
縦走路最大の難所だろうと思える場面である。

Stephan氏とHUKUSIMA氏はずっと地形図とにらめっこしながら行動している。
既にしっかり登られているお二人だが、今の課題は読図らしい。
分かっても分からなくても、まず地図に接してゆく姿勢が大切に思う。
続けてゆくことで、ある日突然、地図が見えてくる時が来るはず。
山を一層楽しむ為に、地形図をしっかり身近なものにしてもらえたら。

容赦の無い登り坂でTepco氏が少しバテはじめる。
爪ヶ城の登りの中途半端なペースが影響しているのだろう、申し訳なく思う。
登り始めは出来るだけ調子を見ながら歩きたいところだが、それが出来なかった。
小刻みに小休止を取りながら、じっくりと登るように努める。
爪ヶ城からあがけ峠まで小康状態だった天候だが、再び風雨が強くなり始める。
再びアウター調整、先ほど脱いだカッパを再び着たりする。

きつい登りとなだらかな稜線を数度繰り返し滝山山頂に近づいてゆく。
このあたりは自衛隊の境界標石が多く見られる。
朝からずっと機銃の音が聞こえ、置かれている場所と平日であることを再認識させられる。
山頂寸前、ガスの中に滝山展望台が浮かび上がり、いつもとは違ううれしさを感じる。
濃いガスで前方のルートもほとんど見えていないからこその、ちょっと感動するシーン。
滝山山頂に到着するが、ここも変わらず濃いガスの中。

滝山の三角点は一等三角点本点。
岡山県の一等三角点本点としては、最高標高点になる。
先ほど爪ヶ城で見た三等三角点との大きさの違いを皆さんに実感してもらう。
きれいな展望台に登るも、やはり純白の世界しか見えてこない。
既に午前11時、予想ではそろそろ好天に向かっても良いように思うが。
案外、下界は既に好天で、山頂付近のみガスの中というパターンかもしれない。

<那岐山へ>
滝山山頂では皆で歓談するが、歩行中はずいぶん口数が減ってきている。
吹きつづける暴風が、普段以上に気力と体力を奪っているのだろうか。
せっかくの山頂、のんびり休憩したいところだが、落ち着かない天候で早々に出発する。
天候が悪いとついつい歩く以外の部分を端折ってしまいがちでいけない。
さらに小刻みに休憩を取りながら、見えない那岐山を目指す。

滝山から那岐山までは、爪ヶ城から滝山までに比べると、随分おだやかな縦走路だ。
最低地点でも1100m以上というスカイラインが普段なら存分に楽しませてくれる。
今日は視界30m程の白い世界の中を手探りするように黙々と歩く。
見晴らしが良ければ、言うことの無いとても気持ちの良い道なのだが。
初めて歩く人には、何としても見てもらいたい景色であったのに、残念だ。

いくつかのピークが連続する中、Tepco氏のバテもピークに達する。
本人は当然遠慮されるのだが、ザックを下ろすように相談する。
NIO氏が進んでTepco氏からザックを外し、負担してくださる。
率先して動いて下さったNIO氏、パーティを思った行動は、とてもうれしくありがたい。
ちょっとしたことだが、Tepco氏の調子もずいぶん落ち着いたように見える。

縦走路中の1170m小ピークの休憩舎で大休止とも思うが強風の為、すぐに出発。
ここも広々としたピークでなだらかな笹原がきれいな場所。
休憩舎から一度下り、那岐山へ向けての最後の登りに向かう。
2月にもここを登っているが、結構ここは堪える登りだ。
皆であえぎあえぎしながら、那岐山三角点峰に到達。
まずは昼飯だと、三角点を横目で見ながら避難小屋に向かう。

<避難小屋で>
那岐山避難小屋にドンピシャ正午に到着、全員無事で何よりも何よりも。
入室時の室温は7度、外気温もそれほど変わらないだろう。
3月上旬の那岐山山頂としては異例の高温に違いない。
おかげでこの悪天候の中でも縦走することができた。
乾雪ならともかく、湿雪や雨で低気温ならば、中止していたかもしれない。

平日の避難小屋は、当然のように他に利用者は無く、貸切利用させてもらう。
外の暴風は変わらず、時折、窓を打ちつける音が聞こえる。
ここまでひたすらカロリーを消費してきた一同、しっかり空腹だ。
今日の昼食は、私が準備させてもらったアルファ米のわかめご飯。
当初、人数が少なければ何か鍋でもと思っていたが、8人ということで予定変更。
アルファ米なら8人分でも軽い負荷で担げてしまう。

しかし、期待させておいて、出てきたのがアルファ米で大いにがっかりしただろう。
それでも嫌な顔一つせず、受け取ってくださる大人な皆さん、ありがとう。
各自でお湯を沸かし、わかめご飯に注ぐだけの調理をする。
ここから出来上がりに20分ほど必要だが、待つのも食事の楽しみのひとつ。
アルファ米を見るのも初めてな人、久しぶりに食べる人、愛用している人、様々だ。

HUKUSIMA氏到着するなり、おにぎりを頬張り、サンドイッチを頬張り、さらにわかめご飯。
Expressと異名を取る彼のエネルギー源は、やはり炭水化物なのだと認識する。
時間も経ち、それぞれパッケージを開き、わかめご飯をにぎやかに食す。
どんな反応になるか心配だったが、ほどほどに評価してもらえ、ひと安心。
担いできてよかった、どうか、手抜きはお許しください。

高校の山岳部時代、パーティの食料を担ぐ、いわゆる食料係が多かった。
担ぐだけでなく、献立を考え、現場では調理の中心になる。
大して何もできなかったが、おいしいと言ってもらいたく、必死に考えた思い出がある。
失敗も多かったが、その度毎にに勉強になったことも懐かしい。
縦走では、日に日に背負う負荷が少なくなるのも、弱い私にはうれしかった。

<山頂で>
食後、腹ごなしに、濃いガスの中、那岐山山頂へ向かう。
ザックを避難小屋に預け、それぞれ自由に行動する。
走れば温まるだろうとTシャツで行くが、温まる前に山頂に到着してしまう。
展望の無い真っ白な山頂で、碑の写真を数枚。
強風で一気に体温が奪われ、猛烈に寒くなり早々に退散。

obusa氏、Tepco氏、NIO氏は、避難小屋で引き続きまったり系。
他のメンバーは、私と入れ代わりで山頂へ往復してくる。
ごそごそと出発準備をしていると、外が急に明るくなる。
どうしたことかと避難小屋を出てみれば、空がとてんでもなく晴れ渡っている。
今の今まで真っ白なガスと強風に包まれていたのに。
風もピタリと止み、皆で歓声を上げて外に飛び出し日差しの暖かさを確認する。

避難小屋から三角点山頂へ戻り、全員でのんびりとした時間をすごす。
ここまでの道程がまるで夢かのように穏やかな天候につつまれる。
ぐるりと周囲の山なみも見渡せ、順々に山座固定をしてゆく。
あそこは登った、登っていない、あれは何だ、あれはこうだ、楽しい楽しい。
時ににぎやかに、時に言葉少なに、このひと時を満喫している。
いつまでもここに立っていたいと思い、なごり惜しい気持ちが湧いてくる。

山登りの魅力は何だ、とよく聞かれるが、上手な返答はなかなか難しい。
景色の爽快さ、美しい植物、ピークハントなど、いろいろ言えることもある。
今日のような悪天候に、苦労をして登ってみないと分からない感動もある。
汗をかき苦労をした時、少しでも良いことがあると、うれしさが倍増する。
あきらめないで良かったなと、つい山登り以外にも重ねて考えたりしてしまう。

<下界へ>
山頂での展望と陽だまりをたっぷり堪能し、Cコースを下山する。
縦走でしっかり疲れているはずだが、天候と共に体力も回復した気持ちになる。
のんびりのんびりコースを下り、大神岩に到着し大休止。
午後のおだやかな日差しは変わらず降り注いでいる。
昨年ならば、まだ1メートルは雪があだろるう時期なのに、まるで春山。
いや、気温から言えば春を過ぎ、梅雨時期の山かもしれない。

平日の悪天候の一日、ここまで他の登山者には出会っていない。
このまま貸し切りの那岐三座かと思っていると、犬を連れた男性と行き違う。
近所の方の散歩だろうか、長靴でのんびりと登られている。
15時を過ぎ、大神岩の往復だろうかな、と勝手に想像したりする。
水場では行列になって赤いコップを使いまわし、山のエネルギーを分けてもらう。

森林学習の広場で最後の小休止をすれば、登山口までもうひと歩き。
パーティは徐々に長くなり、段々と2パーティ、3パーティの姿になる。
疲労などで隊が崩れたのではなく、それぞれが残りの山歩きを楽しんでいるから。
春の息吹が感じられはじめた、夕方近い山麓を歩くのも楽しい。
BCコースの「おつかれさま」看板が変わらず迎えてくれ、長いコースも終了になる。
第三駐車場から降り返れば、那岐山の山頂も「おつかれさま」を言ってくれているよう。

<旅の終わりに>
月曜定休の那岐山麓・山の家でベンチを借り、穏やかな夕方、のんびりしたティータイム。
一身上の都合で立ち寄れず、離脱してゆくobusa氏を見送り、自販機飲料を買う。
ここでのヒット話題は、私の愛用している100円ショップ製の岡山県20万図。
山座の固定には20万図が有効だが、国土地理院の地形図は岡山県のど真ん中で別れている。
以前から、少し使いにくいとは思っていたが、この地図を使うことで一気に解決された。
岡山県は大きさがちょうど良いのか、分県地図は20万分の1が多く使いやすい。

次回の平日倶楽部企画や、山菜ハイク、読図ハイクなど、話題は尽きない。
メーリングリストという繋がりの中、考えてみれば住所も電話も本名すら知らない仲間。
危険も伴う内容として、そのありかたには賛否色々あり、課題もあるのは分かっている。
それでも「山」で繋がり「山」の良さを語れる仲間が何よりもうれしい。
ずっと前からの知り合いのように、いつまでも話はつきない。

吉備の中山氏の輸送力のある車に乗り込み、登山スタートをした声ヶ乢に戻る。
途中、塩手池から夕日に映える那岐連山を眺め、お互いの健闘を称えあう。
終わり良ければ全て良しではないけれど、とても楽しい一日になった。
またこのパーティで、晴天の那岐三座縦走をしてみたい。
いや、悪天候でも皆で歩けば案外悪くないもので、なによりも、無事でありがとう。



<今回のコースタイム>
声ヶ乢7:40−8:12第一展望所8:21−8:32第二展望所8:39−1000m標識8:51−9:03展望岩9:07− 9:13広戸仙三角点9:19−9:25広戸仙山頂9:37−10:04あがけ峠10:07−11:10滝山山頂11:20− 12:05縦走路休憩舎12:11−12:38那岐山三角点12:42−12:47避難小屋14:05−14:12那岐山三角点14:43− 15:03大神岩15:16−16:05第三駐車場−車移動−声ヶ乢

<歩行時間>
声ヶ乢−1時間29分−広戸仙山頂
広戸仙山頂−1時間30分−滝山山頂
滝山山頂−1時間12分−那岐山三角点
那岐山三角点−Cコース−1時間9分−第三駐車場


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