井水山 登山(2007年4月8日 晴れ)
<百乢コース>
かねてより念願だった泉山の百乢コースを踏査する。
最後に歩いたのは1989年、既に18年も前の話だ。
部分的に覚えていることもあるが、ほとんど忘れてしまっている。
高校生の時、初めて泉山に登ったのがこのコースである。
というよりも、当時はこのコースしか登ったことが無かった。

目覚めにぐずつき、予定していたよりも1時間ほど遅れて家を出る。
津山市内の気温計は4℃、霧が深く、ガスの中の踏査を覚悟する。
あきらめ半分で桝形山の西を過ぎる頃、一気に青空が広がる。
盆地の朝霧だったようで、正面にはこれから目指す泉山の南部稜線が立ち上がる。

<踏査レポート>
時刻標高レポート
6:41240m 日曜日なので香北郵便局の前に駐車させてもらい出発。
連日の花見で残留アルコール濃度が下がっていない気がする。
晴れているが少々寒く、ポケットに手を突っ込んで歩く。
6:54270m 寺ヶ谷を分けるように分岐を左へ、寺ヶ谷川沿いに旧街道の道標石柱あり。
近所のおじさん、早くも苗床の準備をしながら「山登りかい」と朝の挨拶を下さる。
7:00290m 百谷一号橋、車も通過できる立派な橋、以前はなかった。
ミツマタが多く山が黄色に見えるほど。
7:01300m 最初の津山高校山岳部の看板「百乢・泉山 ->」が出てくる。
泉山全域で見られる山岳部の看板は昭和61年に設置されたように記憶している。
7:02310m 左手に車が置ける程度の広場がある。
ここまでは道も悪くなく、乗用車でも大丈夫だろう。
山岳部看板「百乢 ->」が木に食い込んでおり、時の流れを感じる。
7:03320m 次に出てくる百谷二号橋から道は三方に分かれる。
読図をせず、大して考えもせず橋の手前の道を選び、沢の左手を登る。
目前に砂防ダムが現れ、地形図を確認すると道を間違えたことに気付く。
砂防ダムの中を渡り、沢の北側の正しいコースへ。
7:20400m 車を転回出来るくらいの広場がある。
このあたりから、徐々に勾配がきつくなり始める。
道幅は十分で車の通行は十分可能だ。
7:25450m T字分岐に石のベンチが3台と山岳部看板「<- 百乢・泉山」が出てくる。
左折するが、ここを右に取れば706mピーク北のコルに出るはず、調査してみたいルートだ。
ここまでは四輪駆動車なら来ることが出来る。
7:28470m すぐに石橋とベンチがあり、左手に小さな滝が出てくる。
石橋を渡り、植林の中のつづら折れに入ってゆく。
7:39560m つづら折れが終わり、最後の左折に山岳部看板「<- 百乢」が現れる。
18年前、この辺りは皆伐したばかりで、広い斜面を見通せた場所だったように思う。
現在の姿は20年生前後の植林に見え、多分、記憶の場所ではないだろうかと考える。
7:41570m 小さな切り通しに「津山山の会」の懐かしい赤い看板。
何が懐かしいかと言えば、この看板には散弾銃の跡があり、鮮明に覚えている。
当時は木に付いていたように思うが、足元に転がっていた。
ここから斜面を巻く鮮明な踏み跡があるが、予想ルートとあまりにも違い、行き先を悩む。
側の沢に下りたり、しばらく周辺を散策し、読図を信じルートを取る。
7:53590m 少し行くと山岳部看板「養野・百乢 ->」が現れ、正解だったと安心する。
先ほどの踏み跡はどこへ行くのか、見ておいても良かったと思う。
このあたりで道が激しく崩れた個所があり、倒木と土砂が行く手を阻む。
安全を確保をしながら、乗り越えてゆく。
7:55610m 植林帯が終わり、道は少し開け、明るい湿地帯に入る。
カエルの卵が水溜りの中で春を待っている。
雨の直後などは、ぬかるみになりそうな場所だ。
8:03630m 百乢に到着するが、18年前の記憶は蘇ってこない。
峠は南北に通り抜け、西側の立ち木に山岳部看板「養野 ->」「百乢640m」が2枚。
峠の東側に道祖神と「養野・(判読不能)」「福ヶ乢を経て泉山 ->」が散乱している。
ここから養野に向けて、はっきりした道があり、今後の調査も考えたい。
8:07640m 道祖神から東に向け斜面に取り付く。
ここから泉山山頂までずっと稜線を歩くようになる。
以前の登山道らしき跡は見出せず、潅木を縫うように登ってゆく。
イバラが気になるが、それほど歩きにくい道ではない。
8:15706m たいして時間もかからず、706mピークに到達する。
かすかな記憶で、草原だったように思う場所だが、現在は若い植林帯になっている。
目前に894.7m三角点ピークと井水山が並んで見える。
ここから進路は北東に変わるが、次の740mピークが明らかなので迷う場所ではない。
8:18690m 706mピークから北東に一度下ると690mのコル。
このコルは低い下草で左右の谷の形状など、周辺状況もはっきりと分かる。
左右どちらにも沢が発生しているはずで、下ってみるのも楽しそうだ。
8:26740m 690mコルから登りかえすと740mピーク。
背丈よりも高い枯れカヤが茂り、現在地がつかみにくい。
振り返ると百乢南西の稜線や養野方面を見渡せる。
踏み跡らしきものは全く確認できず、適当に斜面に取り付く。
8:30750m 倒木が増え、下草も伸び放題で困難なヤブコギの急登になる。
東は急斜面となり迂回できず、倒木を避けるために西に西に寄ってしまう。
数歩登っては休憩し、次のルートを考える、というのがしばらく続く。
下草に隠された倒木にやられ、2度ほどひっくり返る。
8:49800m 胸上の高さほどのクマザサの生い茂る尾根に出る。
894.7mの三角点ピークまで尾根上に立ち木は少なく見通しは良い。
暖冬だったためか、クマザサの勢いが強いままで、見た目以上に歩きにくい。
笹原を避けるように、西側の植林の中をトラバースする。
8:51830m 手入れのされていない植林の中は薄暗く、下草が無く歩きやすい。
高度を下げないように気をつけながら、トラバースしてゆく。
薄暗い植林の中と対照的に、尾根の笹原は明るく光っている。
獣道がたくさん付いており、部分的に利用させてもらう。
8:54850m 三角点ピーク西側直下までトラバースし、一気に方向転換する。
ピークへ向けて、植林の中の急坂を詰める。
急すぎて進行方向に足が出せず、横向きで登ってゆく。
9:04894.7m 三等三角点、点名「養野」に到達。
ピークにはクマザサが茂るが、一部薄いところがあり、そこへ三角点がある。
周辺を探ってみると、山岳部看板「<- 百乢 泉山 ->」「三角点895m」が落ちている。
三角点周辺の笹を刈り払い、看板を並べて記念撮影。
周囲には木々も多いが、この時期ならばそれなりの展望を確保することができる。
9:18900m 三角点からは腰ほどの笹原で、ずいぶん歩きやすくなる。
福ヶ乢へ下る前のなだらかなピーク上の木に、山岳部看板「百乢(判読不明)」がある。
9:28880m ピークを過ぎ、歩きやすそうな所を目指し斜面を下ってゆく。
あっけなく、刈り払われた広場に飛び出す。
周辺をぐるりと見てみると福ヶ乢看板の10mほど西に立っている。

<Aコース>
福ヶ乢に立ち、たった今、来た道を思い返す。
今日は踏査往復を計画しており、復路でも調べたいことが残っている。
しかし、コースが予想していた以上に厳しく、復路をどうするか悩む。
来た道を再び歩くならば、時間的にもこのまま戻るようになるだろう。
どうすべきか思案し、心残りはあるが、往復は中止し周遊コースに変更する。
ここから井水山まで登り、中林直登コースを下ることにする。

Aコースの気持ちの良い稜線登りを楽しむ。
そこらじゅうでウグイスが鳴き、耳を楽しませてくれる。
新緑の季節にはもう少しという頃だが、穏やかな日差しが春を感じさせてくれる。
すぐに暑くなり、長袖シャツを脱ぐと、さわやかな風が気持ちよい。
1035mピークで小休止すると、ずいぶん疲れていることに気づく。
座り込み、しばらくのんびりして体を落ち着かせる。

1035mからの登りを一気に歩き、井水山山頂広場へ顔を出す。
山頂には岡山の山メーリングリストでお世話になっている、のほほん父さん氏が。
「やあ久しぶり、お疲れ様」とお互いをねぎらう。
週末は県北の山、と言われていたので、ひょっとすると、と思っていたのが当たった。
ヒュッテまで一緒に下り、先日、高校生の手によって担ぎ上げられたドアを確認する。

<中林直登コース>
ヒュッテ横の水場を確認するが、雪が少なかったせいか、全く流れていない。
梅雨の状況もあるだろうが、この状態が長く続くかもしれない。
ヒュッテでの休憩もほどほどに、氏は縦走路へ、私は直登コースへ。
一緒に泉山へ向かいたい気持ちにもなるが、時間制約の為、あきらめる。
別れ際、直登コースから登ってこられた男性5人パーティと行き違う。

直登コースは直登と言うだけあって、どんどん下るのだが、疲れの為かペースがつかめない。
どうも集中した歩き方ができず、少し行っては休みの繰り返しになる。
ヤブコギでの蹴り上げが効いているのか、向う脛の疲労を強く感じる。
計画変更時に地形図を見て考えたが、これから歩く距離もしっかり残っている。
気合を入れ直せ、と自分に喝を入れながら下ってゆく。

そんな中、ハンガーノックが近いと思われる虚脱感に襲われてしまう。
道中の岩に腰掛け、菓子パンなどで補給をしながら休憩。
すぐに回復してくる感覚があり、安心して再び下り始める。
それなりに糖分補給はしていたのだが、追いついていなかったのだろうか。
徐々に回復してゆく体力を感じながら、大きくなってゆく沢の音を聞いてゆく。

<林道と県道>
相変わらず、なかなか集中出来ず、香北郵便局までの道のりなどを考えるばかり。
集中できないというのが、これほど歩きにくいものかと実感する。
それでもほどほどで、中林登山口駐車場に到着。
乗用車が2台停めてあるが、多分、ヒュッテ近くであった5人パーティであろう。
2台とも倉敷市から来られているようだ。
トイレ横の水場で顔を洗い、ここからの林道歩きに向けて気合を入れる。

周辺の植生などを楽しみながら、ひたすら歩く。
車で走り抜けるときと違い、いろいろな発見があって楽しい。
歩いていると、姫路ナンバー1台、岡山ナンバー2台とすれ違う。
どの車も男女ペアで登山客のように見える。
大町のバス停まで下ると、ずいぶん歩いた感覚になっている。

県道を歩くようになると、周辺の田畑の菜の花が満開の芳香を楽しませてくれる。
ここまで好天に恵まれていたが、雲行きが怪しくなりポツリポツリと落ち始める。
傘を差すほどではないので、そのまま雲を眺めながら歩く。
山頂付近にも雲がかかっているように見え、タイミングが良かったと思う。
のほほん父さん氏は、どこを歩いているだろうかと考えたりしながら。

香北郵便局が見え、長く感じた道のりも終了する。
終わってみれば、長かったような短かったような。
とても充実した山行になり、十分満足することができた。

<踏査総括>
百谷から百乢までは、概ね整備された道が残っており、今後も利用可能だ。
ポイントごとに読図してゆけば、百乢までは迷わず到達できるだろう。
中国電力の送電線用の管理道や林業の作業道も多く、注意や確認は必要だ。
旧伯耆街道として利用されてきた道も、利用者が無く廃道寸前となっているのは残念だ。

今回、一番苦戦したのは740mピークから800m尾根までの区間。
倒木が激しく、ルート設定も困難な場所がある。
このコースが利用できるかどうかは、この区間が重要なポイントだ。
ここを除けば、通常のヤブコギで歩き通せるように思える。
百乢以降は尾根筋が明確で、尾根を意識して歩けば難易度の高いコースではない。

894.7m三角点から福ヶ乢までは、軽いヤブコギで歩くことができる。
福ヶ乢から894.7m三角点までのピストンだけならば、季節を問わず可能だ。
今回は春の息吹の前でもあり、木々の間からの展望は良好だった。
しかし、これからのシーズンは草木の勢いも強まり、困難は増えるはず。
稜線歩きが中心になるので、当然、日差しのことも考えねばならない。
利用するならば、秋から春にかけてのシーズンを選ぶのが正解かもしれない。

以前経験した泉山に向けての長い稜線歩きを思い出すことができた。
なんとか百乢コースが復活し、泉山の魅力がさらに増えたらと思う。
このコースは別のバリエーションも含め、継続して踏査してみようと考えている。



<今回のコースタイム>
香北郵便局6:41−寺ヶ谷分岐6:54−石のベンチ7:25−7:41津山山の会看板7:51−8:03百乢8:07−8:15ピーク706m8:18− ピーク740m8:26−800m尾根8:49−9:04三角点894.7m9:13−9:28福ヶ乢9:30−9:46ピーク1035m9:54−10:13井水山10:18− 10:22ヒュッテ10:30−中林口駐車場11:14−中林バス停11:49−12:18香北郵便局


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