21世紀のSocket7(前編)

-K6−2+マシンを作る-


それは今週の月曜日、一本の電話から始まりました。
知人のM氏からです。

1年ほど前、粗大ゴミの山から1台のパソコンを拾得したのですが、これが今や絶滅したと思われるATケース(フルタワー、電源付き)にマザーボード(Tekram P5V30-B4)、CPU(Pentium200)、CD−ROMのみがついていた中途半端なものでした。
私はこういうのが大好きで、あとどれぐらいのパーツを補充すれば蘇らせることが出来るか見積もってわくわくするのです。楽しんでいたところ、M氏の目にとまり、修理後のマシンを貸与するということになりました。
修理といっても、実際にはCD−ROMが壊れていましたから、CD−ROM、フロッピードライブ、ハードディスク、メモリ、ビデオカード、サウンドカード、モデム、あげくにキーボード変換コネクタまで揃える必要があったので、経済性を考えるなら拾わない方がましだったといえるでしょう。しかし、それが趣味なのだから致し方ありません。

修理が成ったマシンはマザーボードに問題があってフロッピーの書き込みだけできないという欠点を持っていましたが、M氏は経費以上のもので買い上げて下さいました。この趣味が初めてゼニになった瞬間でした。
ううむ、あとATマザーボードとDIMMメモリとK6−2ぐらいがあったら充分な修理ができたのですが。

そういうわけで、今週かかってきた電話の内容は1年前から予想がついていました。
「フロッピーに書き込みができないのだが、私が何かして壊したかしらん?」
「いーえ。初めからそこだけ壊れていたのです。」

我が家には(奥様に内緒で)マシンのメンテナンス用パーツが1台分揃っています。
しかし、マザーボードがダメで、それがATマザーで、SIMMメモリで、(非MMX)Pentium200MHzだったら少々の修理では済まないでしょう。ああ、新しいマシンが出来てしまう。新しいマシンが必要とされている。9ヶ月ほど辛抱していた虫がさわぎだしました。

さて、家に帰って早速着手したのは家中の各所に分散してある材料の収集です。

ケースは「電源なし、980円」と段ボール箱に書きなぐってあったATXケースです。高さが70cmばかりあってたいていのファンヒーターよりは大きいものです。1年ほど前に買ったのですが、あけてみると電源はついています。ただ、電源ボタンと電源スイッチの位置関係がずれていて正しくスイッチが入りません。ま、「STANDBY」ボタンで電源が入ってもいいじゃないですか。

CPUは最近入手したK6−2+ 500MHzです。8000円ぐらいでしたか。
実はK6−2(+でない)500MHzのマシン(Mars)が発熱で夏場にバテるので差し替えてみました。・・・動きません。
マザーボードは往年の定番AsutekのP5Aなので大丈夫だろうとたかをくくっていたのですが、コア電源の2.0Vというのが想定外らしく一切動こうとしませんでした。2.1Vにしたら動き始めましたが2分ぐらいで温度が60℃に達し、ハードディスクを読むところまでたどり着きませんでした。マザーボードとの相性がきついみたいです。

さて、今回のマザーボードはGIGABYTEのGA5AX、これまた定番ですが、リビジョンが4です。
GA5AXのリビジョン5がATA66インターフェースを搭載してGA5AX+という名で売られ初めた頃、ジャンク無保証の箱に入っているのを見つけて2800円で買ってきました。ATA66が使えないという理由でたたき売られているといういきさつや、価格から本当のジャンクでないことを信じていままで保有していました。

ハードディスクは実験用マシン(Mars)の中のLinux専用にしていたドライブをはずしてきました。8.4GB、ATA66、5400rpmです。

メモリは今このレポートを書いているマシン(Jupiter)から64MB引っこ抜きました。かつて2万円で買ったメモリ128MBが静電気でおしゃかになってからは、メモリが安くなった今でも小容量を多数装備することとしているので、こんなところで役に立ちました。
ちなみに現在のメモリ価格は128MBで5000円強です。

ビデオカードATi RageIIc 4MBといえば最低限にして最低のビデオカードです。たしか2980円ぐらいでした。でもちょっと前のSotecのマシンはたいていこれでしたから世間の人はたいがい気にしないもののようです。

サウンドカードは先日ちょっと役に立ったXwave192です。これも定番ですね。
かつてSoundBlaster16に理由もなく執着していたのですがYAMAHAのサウンドチップの音源を聞いてからは改心して724チップ一筋にしています。

モデムはPCIのハードモデムで銘柄も決めています。同じモデムを5枚ほど買ったのに家にこれ1枚しか残っていないのはなぜでしょう?
モデムは安いものですが、先日体験したようにドライバがどれかわからなくなっては元も子もありませんから信頼の出来る製品を1つ決めておくのは大切だろうと思います。そんなにモデムを何枚も買う人はいないって。そりゃまそうですが。

パーツが揃って、組立を始める前にまずドライバの入ったCD−ROMを全部CD−Rに焼いておくことにします。マザーボード、ビデオカード、サウンドカードに付属していたものはいずれも500MB以上の内容がありましたからそっくりコピーしました。モデムのドライバはサイズが小さかったので4枚目のディスクにはお役立ちツールを一緒に入れました。アーカイバ、ベンチマーク、お気に入りショートカット、アイコンファイル、FTPツール、Windowsサービスパック、ちょっとしたゲームなどです。
マシンができてインストールするときにはすべてこのコピー版を使ってマシンを構築し、仕上げにケースの内側に貼りつけておくことにします。原本は私の手元に残しておけばまたまたメンテナンスの必要が生じた場合、きっと役に立つことでしょう。

さて、ここまでで2日を費やしましたが、いよいよ組み立てです。Socket7のマシンが21世紀に蘇るのでしょうか。

ケースは5インチベイが5段、3.5インチベイが2段、シャドウベイ2段になっています。大きさの割にはユーティリティが悪いです。マザーボードを取り付ける板が背面パネルと一緒に引き出せるようになっていて、整備性はすこぶる良いようです。
板を引き出して、マザーボードの穴と一致する位置にスペーサーを取り付けます。おや、マザーボードを乗せようというところで問題発生です。
背面のパネルの穴が狭くてパラレルやシリアルのコネクタが通せません。ドライバ1本で出来る工作のはずがのっけからヤスリを取り出して板金です。

しっかりマザーボードを止めたらCPUを挿します。塗りたくっているのは熱対策のグリスです。縦笛用のグリスに似ていますが、白くてこびりついたらやっかいです。300円ぐらいでマシン1台を救うことがありますから念入りに塗りましょう。この辺が丁寧な割にファンが拾いもののためプアーなのが難点です。

他のものを取り付ける前にジャンパーやスイッチのセッティングをしておきましょう。
つい忘れるとK6-2は一発でおしゃかになります。(Cyrix MIIは強かった)ここでは100MHz×4にセットしておきます。何?なんで400MHz?
K6−2は400MHz版が出た頃から60℃を越えたら仕事をしないものになりました(Stepping8以降)。夏場のトラブルについておいてあげるわけにはいきませんのでクロックダウンしてしのぎます。決してM氏への意地悪ではありません。
しかし、室温40℃の時期にCPUを60℃以下に保つのはどだい無理なことかもしれないという気はしています。

拡張カード類の取り付けについて、自分で組み立てて使うときはWindowsをインストールした後に動作を確認しながら1枚づつ挿していくのが正しいやり方だと思いますが、今回はいっきに挿してしまいます。データのやりとりが多く、高速を必要とするものをCPU寄りに、遅くて良いものを外側に挿すのが作法だと思います。
具体的にはビデオカード、SCSIカード、LAN、サウンド、モデムといった順がいいでしょう。
おっと、メモリを忘れていました。マシンJupiterのケースを開けて1枚抜いてきます。

今度はケースの方に「回るもの」たちを取り付けます。新品ケースのデバイスベイには切り取りが出来る鉄のフタがついていて、これがなかなか切り取れません。ドライバやペンチで四苦八苦していたら、予想外のところが不意に切り取れて、指をざっくり切ってしまいました。
これに先ほどのマザーボードが載った板を取り付けて配線をしたら出来上がりです。

バラックの状態のまま、ケース横倒しで電源を入れてみるとちゃんと動きました。表示にK6−2+ 400MHzと出ているのでリビジョンが古くても対応していたようです。
電源を落として、試みに500MHzの設定にしたら、ちゃんと動きます。
喜びいさんで550MHzの設定にしたら・・・・やっぱり動きます。2800円のマザーボードといえども侮りがたし。
でも400MHzに戻しておきました。私はK6−2が500MHz以上で問題なく動いたのを経験したことがないのです。

さて、Windows98起動フロッピーを挿して、再起動します。いよいよWindowsインストールの準備です。 あと1時間もしたら21世紀生まれの新しいマシンが仕事を始めることでしょう。・・・・・あれ?
フロッピーが認識されません。
フロッピーはメーカーごとにクセがあって、一般に電源寄りがコネクタの1番ピンなのですが、デザインがメーカーごとにまちまちなうえ、切り欠きが逆に付いているメーカーなどがあって、常に逆接続を疑わなければいけません。逆接続で数分間放置したらフロッピードライブが壊れてしまいます。もう一度確かめて、・・・・・やっぱりいけません。まさかレスキューマシンがレスキューされるマシンと同じ欠点を持っているとしたらお笑いです。

仕方がないのでCD−ROMからのブートを試みましょう。
CD−ROMを入れて・・・・・あれ?
トレイがあきません。

そういえば起動直後のハードディスクの回転音もしなかったし。

ひょっとして「回るもの」たちに電源が一切供給されていないのでは?
ああ、ショップのいう「電源なし」は本当でした。どうやら粗大ゴミ処理に協力してしまったようです。

さてこの始末、どうしたものでしょう。
この話は電源またはケースを調達し直してからのお楽しみということになりました。本当に後編が書ければいいのですが、


今回のまとめ
  1. 捨ててあるものは捨てるだけの理由を持っているものである。これを拾うには覚悟が必要である。 破格に安いものについてもまた同じ。
  2. 無料で入手するのも高く付くが、有償で譲ることははさらに高く付く。
  3. Asus P5AはK6−2+に対応せず。GIGABYTE GA5AXはK6−2+に対応している。(BIOS Updateすれば何とかなるかも->BIOS対応されていないことを確認しました。)

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