続・第二の風枕

-風の流れを可視化する-


以前、那岐山系にかかる「第二の風枕」が、広戸風の成因を探るカギになるという記事を書きました。(こちら
みれば5年も前のトピックになります。
それからずっと第二の風枕を動画で捉えたいとチャンスを狙っていました。
詳しくは前のトピックを読んでいただく方が臨場感があってよいのですが、かいつまんで説明するとこうです。ちょっとストーリーは変えてありますが。
  1. 三大局地風のひとつ「広戸風」とは、津山市勝北地区、とりわけ滝山のふもとの広戸地区を中心として、台風の接近したときに吹く局地風である。
  2. 広戸風の成因は第一に切り立った那岐連山(那岐山、滝山、爪ヶ城)の存在とその下に広がる津山盆地の位置関係が重要な要素である。
  3. 台風に関連した強風ではあるが、台風が紀伊半島の南2〜300kmの海上を通過したときに特に顕著である。(実際は様々だが津山の南東を台風が通過したときという点では共通)
  4. 広戸風が吹くときは、風枕ができる。
  5. しかし、よく見ると、風下側の平野上空に第二の風枕が出来ていて、山の上の風枕と第二の風枕の間の上空は晴れ間が見えている。つまり天気はさほど悪くない。
  6. 第二の風枕ができるのは、逆転という気象条件によって風が跳ね返されているからである。
  7. つまり、山に跳ね上げられた気流が、逆転によって下向きに向きを変えて吹き降ろしてくるのが広戸風である。
  8. 吹き降ろした風がふたたび逆転によって上向きに方向を変え、第二の風枕を形成する。つまり第二の風枕は逆転が形成されている証拠である。
  9. 私としては、那岐山の背後にある谷の地形や方向にも関係があると思う。
その後、広戸風が吹く時の雲の状況を動画で撮りたいと願ってチャンスを狙っていました。
今回は広戸風は発生していませんが、ご覧の通り「第二の風枕」は形成されています。
もったいをつけずに動画は(ここ)に置いておきます。(「ここ」の文字のリンク先、kazemakura.wmv、3.19MB)
撮影したのは10月6日午前7時過ぎ、台風16号が紀伊半島沖を通過した翌朝です。
早送りで10分を1分に縮めてあります。

こうして見ると、第二の風枕は、津山盆地から吹き上げてくる風が千切れ雲になってどんどん付け加わって形成されていることがわかります。
第一の風枕と第二の風枕の間はやはり晴天で、高層雲がのぞいています。
さらによく見ると、画像の中央上部には、第二の風枕とは違った風のよどんでいる部分も見られます。これは加茂谷の出口にあたり、屏風状の山の連なりがない部分なので、風枕を作る気流の波うちが起こらないということでしょう。

この日広戸風にならなかった理由は、台風が990hPaと、やや弱っていたことと、間に前線や低気圧が入り込んで気流が入り乱れていたことが考えられるでしょうか。
いずれにせよ、こうして第二の風枕が形成されていたということは、地上を打てば広戸風となる気流の層が上空には準備されていたことに他なりません。

今年の台風シーズンは大過なく終えることが出来たようです。引き続き広戸風の時の空を撮影するチャンスをうかがい続けることにします。

私が第二の風枕を見るたびに思い浮かべる言葉のフレーズがあります。
芥川龍之介の「侏儒の言葉」の中に「どうか菽麦すら弁ぜぬ程、愚昧にして下さいますな。どうか又雲気さえ察する程、聡明にもして下さいますな。」という一文があり、雲気を察するというのは聡明の証であるようです。
第二の風枕を見て広戸風を予知するのも、確かに雲気を察することの一つであろうと思いますが、こうして動画を撮影して見ると、広戸風というのは結構可視化しやすい気象現象だと思うのです。

「なべのさかやき」目次に戻る