電気回路のわかる授業をめざして
    −電気回路シミュレーションプログラムと簡易回路計−

1.はじめに
電気回路の学習は電気領域の基礎・基本であり、最も重要な指導内容のひとつである。しかし、生徒の中には、目に見えない電気に対して、恐ろしいもの、難しいものといった先入観を持っているものもおり、回路図が理解でき、自分で新しい回路を考え出せるようになる生徒は少ない。このような具体的な思考ができるようにさせるためには、理論学習と実験・実習を有機的に結びつける教具・題材が必要である。そこで、回路学習のための電気回路シミュレーションプログラムの作成、および回路の理解が容易な製作題材の開発を行った。

2.電気回路シミュレーションプログラム
回路学習では単に回路図をかかせるだけでなく、配線練習板などで実際に部品を配線させることが大切である。しかし、生徒全員が同時に実習を行うことはできず、ひとりひとりの理解度を把握することも困難である。このプログラムは画面上に表示された乾電池、スイッチ、豆電球の図記号をマウスを使って配線することによって、回路図をかくことができるものである。マウスのクリックでスイッチを閉じることもでき、正しく部品が配線されている場合には、豆電球の横に点灯の文字が表示される。授業ではまず、生徒に課題を与え、シミュレーションプログラム上で配線さた後、各部品がこのプログラムと同様に配置された練習板を使っての配線実習を行わせた。次に、各部品がこのプログラムと同様に配置された練習板で、実物を使っての配線実習を行わせた。

3.トランジスタを取り入れた回路計

回路計は多くの重要な指導内容を含んだ題材であるが、市販の回路計は複雑で回路を生徒に理解させることは難しい。また日常の生活の中では不要な機能、レンジも多い。そこで特に必要と思われるものだけに機能をしぼったロータリースイッチ式の簡易型回路計を製作題材として開発した。この回路計の持つ機能は、直流電圧(20V) ・交流電圧(200V)・抵抗の測定とバッテリチェック、そして導通ブザーである。抵抗レンジはトランジスタで増幅することにより、人体などの高い抵抗でも針が大きく振れるように設計した。人体に電流が流れることを視覚的に理解させることができ、感電防止の指導にも役立つものと思われる。さらに、トランジスタを取り入れたことで増幅についての指導もできる。
製作は各機能ごとに配線を行わさせることで、配線間違いのチェックをしやすくするとともに、回路計の計測原理を理解させることをめざした。

4.回路計の製作行程
(1)ケースにシールを張る。
名前を書いたシールをケースの大きさに合わせて切り、張りつける。
(2)ラグ板への部品のはんだづけ
抵抗器、トランジスタ、ダイオードをラグ板にはんだづけする。
トランジスタ、ダイオードの方向に注意する。
(3)ケースの穴あけ
3mmのドリルでラグ板取りつけ穴、電流計取りつけ穴をあける。
電流計取りつけ穴は連続して穴をあけた後、ニッパーで穴をつなげ、やすりでひろげる。
ロータリースイッチの穴はネジがはいる大きさにリーマで広げる。
(4)ロータリースイッチの加工
スイッチのシャフトを万力にはさみ、金切りのこで1cm程度に切る。
ツメをラジオペンチで折り曲げる。
(5)ロータリースイッチの取りつけ
スイッチ、ワッシャー@、ケース、ワッシャーA、ナットの順に取りつける。
ナットをスパナで締めつける。
スイッチにツマミを取りつけ、−ドライバーでネジを締める。
シールに合わせて、ツマミの位置を調整する。
(6)テスターリードの製作、穴あけ
ニッパーでリード線の被覆をむき(3mm)、前もってはんだづけしておく。
ピンはジグに固定し、はんだごてで充分暖めた後、はんだをとかす。
ピンにリード線をはんだづけする。
リード線を通す穴をケースにあけ、リーマで広げる。
リード線を通し、ケースの中でむすんでおく。
(7)配線
リード線を必要な長さに切り、両端の被覆をむき、はんだづけする。
ロータリースイッチ、電流計、ラグ板の配線をする。
(8)電池ボックス、ブザーの取りつけ
電池ボックスにリード線をはんだづけする。
電池ボックスに皿ネジ、ナットを取りつける。
ケースに3mmの穴をあけ、電池ボックスを袋ナットで取りつける。
2mmの穴を2ヶ所あけ、ブザーを2mmビス、ナットで取りつける。
電池ボックス、ブザーの配線をする。

5.おわりに
パソコンによる回路学習授業の前後に小テストを行ったところ、指導前では6割の生徒が5問中1問以下の正答であったが、指導後は逆に全問正答者が6割を越えた。生徒に書かせた感想からも、パソコンを使った学習への関心の高さがわかった。今後もプログラムの改良を行い、さらに使いやすいものにしていきたい。また、開発した回路計は久富電気からキットとして市販されることになったが、このキットではラグ板ではなくプリント基板を用いている。

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