コンピュータが好きになる情報基礎
−自作ソフト,フリーソフトの活用と教具の開発−
1 はじめに
本校にコンピュータが導入されて8年になり,最初は手探りの状態で始めた情報基礎も今は3年生の履修領域として定着した感じがする。この8年間の市販のソフトウェアの進歩はめざましいものがある。しかし,市販されているソフトウェアだけを使っての指導には困難な点も少なくない。また,時代遅れとなったハードウェアの更新はもちろん,新しいソフトを台数分買いそろえていくことは予算的に困難である。
生徒が意欲的に取り組める授業をつくっていくためには,生徒の実態に応じた自作ソフトの開発や,フリーソフトなど利用などを積極的に行っていく必要がある。また,コンピュータのしくみや制御などを指導するための適切な教具の開発も望まれている。
そこで,情報基礎の指導のために,BASICによる簡易ソフトの開発,フリーソフトの利用,および教具の製作を行った。
2 研究の内容と方法
(1) フリーソフトの利用
パソコン通信などによって提供されているフリーソフトを調査し,授業での利用を研究する。
(2) 自作ソフトの開発
N88BASIC(MS−DOS版)を用いて,指導に役立つソフトを開発する。
(3) 教具の製作
ハードや制御の指導を行うための教具を製作する。
3 研究実践
(1) 指導計画
@ コンピュータの基本操作 (2時間)
A 応用ソフトウェアの利用 (10時間)
B コンピュータのしくみ (2時間)
C BASICプログラム (12時間)
D 簡易言語による制御 (2時間)
E 生活と情報 (2時間)
(2) 情報基礎学習プログラムの開発
市販のアプリケーションソフトは機能が多すぎて初心者には不向きである。また,複数のソフトを扱う場合にはフロッピーディスクの管理も煩雑になる。さらに,キーボードによる入力を敬遠する生徒も少なくない実態を考慮すれば可能な限りマウスなどで操作できるソフトが望まれる。
「情報基礎学習プログラム」は,情報基礎の学習用にBASICを用いて開発した,「図形プロセッサ」,「スプレッドシート」,「データベース」,「コンピュータのしくみ」,「Tiny−LOGO」などのプログラムからなる。また同じフロッピーディスクの中に入れたフリーソフトのワープロ「A−WORD」を呼び出すこともできる。
「図形プロセッサ」は,ほとんどの機能がマウスだけで操作できるため,情報教育の導入として用いるのに適しているものと思われる。1年生の「木材加工」での製図学習などでも使用している。
(3) フリーソフトを利用したワープロ指導
ワードプロセッサの指導は「A−WORD」(アルゴ)を用いた。フロントエンドプロセッサもやはりフリーソフトのWXP(エーアイソフト)を利用している。「A−WORD」はコンパクトであるが,生徒が利用するには十分な機能を備えている。文章を考えるのは苦手な生徒も,罫線や文字装飾などの機能を用いて,意欲的に取り組むことができた。
(4) ハードウェアの指導
@ コンピュータのしくみを指導する ためのプログラム
「コンピュータの基本構成」,「コンピュータの機能」,「論理回路」,「ビットとバイト」といった画面を表示するプログラムをBASICを用いて作成した。これらの画面はマウスで選択することができ,また画面上のスイッチを開閉することもできる。
A 計算機展開板
これはコンピュータのしくみを理解させるための教具で,TTLのICを用いて1桁の足し算をする回路を組んだものである。入力,記憶,演算,出力の4つの回路をそれぞれ1枚の基板に配線しており,各部分でデータの様子を4つ(4ビット)のLEDで示している。各回路の「制御」はスイッチを手動で開閉して行う。

(5) BASICによるプログラム学習
プログラムの学習はBASICを用いて行った。指導はスモールステップを原則とし,最小限の基本命令と,生徒の興味・関心の高いグラフィック命令のみを用いて指導を行った。次のような順序で課題を与えて,授業を展開した。
・計算をする(ダイレクト命令,PRINT)
・文字を表示する(PRINT" ")
・計算をするプログラムT(代入,END)
・三角形の面積を求める
・円を描く(CIRCLE)
・オリンピックのマークを描く(CLS)
・ぷよぷよを描く(円の塗りつぶし)
・計算をするプログラムU(INPUT)
・計算をするプログラムV(INPUT;" ")
・電圧と抵抗を入力して電流を求める
・半径と色を入力して円を描く(GOTO)
・ラブレター(文字変数)
・数当てゲームT(IF-THEN)
・数当てゲームU(<,>)
・数当てゲームV(回数を制限する)
・数当てゲームW(正解を表示する)
・円を連続して描く
・円を移動させる
・円がもどってくる
・円が往復する
・円が縦横にはねまわる
・直線を描く(LINE)
・ラケットを動かす(INKEY$)
・ラケットとボール
・スカッシュゲーム
ヒントなしで新しいプログラムを作り出せる生徒は少ないが,ゲーム性のあるプログラムには多くの生徒が意欲的に取り組むことができた。
(6) Tiny−LOGOによる制御学習
パソコンのプリンタポートを利用すれば簡単な制御を行うことができる。そこで,BASICを用いて制御学習を行うための簡易言語として「Tiny−LOGO」を製作した。
これは市販の教材の「レゴロゴコントロール」をまねたもので,裏ページはなく,命令はコマンドセンターのみ入力できる。制御ユニットをプリンタポートに接続して,LEDやメロディICなどの制御を行うことができる。リレーを用いて動く模型の制御ができるユニットも用意した。次のようなコマンドを入力することができる。
REPEAT 5 [FD 50 RT 75]
(一辺が50の正五角形を描く)
TTO 1 ON
(緑色の発光ダイオードを点灯させる)
WAITSENSOR TTO 5 ON WAIT 60 OFF
(光をさえぎると1分間メロディを鳴 らす)

4 おわりに
いろいろなソフトや教具を用いることによって,生徒のコンピュータへの興味・関心を高めることができ,主体的な学習ができたものと考える。
最近は小学校へのパソコン導入もすすみ,パソコン経験の個人差も大きくなってきている。開発したソフトや教具は,生徒の実態に応じて,年々改良を行ってきた。今後は,インターネットなども取り入れていきたい。
「情報基礎」は常に新しい内容を模索していかなければならない領域であると思う。
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