基礎・基本と到達目標
(第32回中国・四国地区中学校技術・家庭科研究大会 提案)
@ 基礎・基本とは何か
基礎・基本としてとらえるべき内容は、すべての生徒に共通して必要な知識や体験などであり、ある生徒には必要であるが、他のある生徒には必要でないといったことはありえない。そこで、基礎・基本となるべき範囲、レベルを次のように考えることにした。
ア 基礎・基本の範囲
基礎・基本として扱う範囲は、学習指導要領+αとする。つまり、学習指導要領で示されている内容に、各領域部会で必要とされた内容を加えたものを考える。また、指導時間が20時間でも、35時間でも、基礎・基本としてとらえる範囲は変わらないはずである。(時間数が増えれば応用・発展の部分が増えることになる。)
イ 基礎・基本のレベル
基礎・基本とされる学力や経験は、すべての生徒に到達保障すべきものである。したがってそのレベルは、生徒全員が習得可能な範囲で考えなければならない。あれもこれもと欲張らず、最低限、最小限これだけは全員に習得させたいといったものにしぼり込む必要がある。
A 基礎・基本のイメージ化
「21世紀に向かって伸びる技術・家庭科の木」
これは、教科を木としてとらえ、基礎・基本を技術・家庭科の木の幹としてイメージしたものである。生活の上に根ざした技術・家庭科の木を育て、応用・発展の枝葉をたくさん茂らせなければならない。そこには将来、生徒ひとりひとりの個に応じた多種多用の花や実(成果)ができるはずである。どのような花が咲くか、どのような実がなるかわからないが、成長の芽をつまないように、枯らさないように、強くしっかりとした幹(基礎・基本)を育てる必要がある。そのために、水・光・養分などの条件を整え、除草や害虫駆除など成長に必要な援助をしてやるのが教師の役割であろう。
B 基礎・基本を重視した目標の設定
指導に際しての具体的な目標を設定する場合、その目標が「ねがい」なのか「ねらい」なのかを明確にする必要がある。そして、基礎・基本に関わる目標は、評価を目的とするのではなく、到達保障のために設定されるべきである。また、あまり細かく観点別に目標を設定すると、チェックが大変で、評価のための授業、目標つぶしのための授業になってしまう。目標は最小限、最低限のポイントにしぼり、生徒の個性を伸ばす授業を目指さなければならない。
以上のような考え方から、具体的な指導目標として「達成目標」「体験目標」「向上目標」の3つを設定した。このうち、「達成目標」と「体験目標」が基礎・基本にあたる。
ア 達成目標
特定の具体的な知識や能力を完全に身につけることが要求される目標で、「ねらい」または「必須目標」といったものである。生徒の変化がわかる(教師にとらえられ、確認が可能な)ものでなければならない。また、達成目標の記述は、「知る」「理解する」といったあいまいな表現ではなく、「〜できる」「〜と言える」「〜をあげることができる」といった具体的な行動で表されるべきである。基本事項の語句なども具体的にあげる必要がある。全生徒に習得可能なレベルで設定することが重要である。しかし、このことは画一的な指導を意味するものではない。
イ 体験目標
何らかの変容を直接的なねらいとするものではなく、特定の内的体験の生起自体をねらいとする目標である。できる、できないは別にして、「この経験が将来きっと役に立つだろう」と思われることを体験させるものである。各領域部会の研究成果や考え方が最も反映される目標であり、体験目標を豊かにすることがいきいきとした授業につながるものと思われる。変容がすぐに現われないかもしれないが、「将来この経験を思い出せばよい」といった長い目でみて設定する目標である。「〜してみる」「実物を見る」「観察する」といった記述で表現される。すでに習った内容を深めさせるために、もう一度経験をさせるような場合も考えられる。向上目標の達成が期待できるような体験も含まれる。
ウ 向上目標
ある方向へ向かっての向上や深まりが要求されるといった目標で、できればここまで到達してほしいといった「ねがい」を目標としたものである。ひとりひとりの生徒を活かすことによりその到達が期待できる。興味・関心・態度、創意工夫、論理的思考など、応用・発展にあたる高いレベルの目標の多くがこれに入る。「説明できる」「表すことができる」といった記述で表現される。目標に対する到達性の把握は難しく、いくつかの断片的な兆候の集合として確認する必要がある。
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