向山洋一教育実践原理原則研究論文/ 各学年/学級経営
          

 ガキ大将の挑戦!

  岡山県津山市立北小学校    岡田健治

 「学級崩壊」が、社会問題化しています。「学級崩壊」は、12学級に1学級の割合で起きているとNHKの調査は、報告しています。
 「学級崩壊」とは、教師への反抗、授業中に立ち歩く、いじめ、喧嘩の頻発、保健室への逃避、授業中にトイレに集団で行く、私語、教室を抜け出すなど授業や学級経営が成立しない状態と言え
るでしょう。それでは、なぜこのような「学級崩壊」が起きるのでしょうか。

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 学級崩壊の主たる原因は、担任教師の統率力欠如にあると私は考える。

 向山先生は、ツーウェイ1998年8月号で、

「ガキ大将」の支配力は、教師にも向けられる。教師の授業が知的であり、みんなが楽しい日々を送っているのであれば、ガキ大将の挑戦はない。(中略)
 ところが、新しい教師の授業が下手で、実につまらないものであったらどうだろう。授業がつまらないのに、お説教を長々とされたらどうだろう。子ども全体の反感が教師に向かう。子ども全体の意思を、具体化しなければボスではない。ガキ大将は、子どもたちの意志を担って、教師への挑戦を始める。

ある年、払は、6年生を担任していた。私のクラスの「ガキ大将」のA君が、ある日、私に尋ねた。「岡田先生と校長先生は、どっちがえらいん?」
 私は、「校長先生に決まっている。」と答えた。
 やがて、広島へ修学旅行に行くことになり、平和記念公園に到着した。私は、6年団120人全員の前で「小遣いは、夜、宮島で使うので、公園内の売店でアイスクリームやジュースなどに一切使わないように。」と告げた。その場には、他の引率教師は全員いたが、同行していた校長は、都合でいなかった。
 やがて、集合の3時となり木陰に全員を座らせ、待っている所に、A君たち「ガキ大将」一行が走って来た。しかも、各自、缶ジュースやアイスクリームを手にしてである。
 「そんな物は、買わないことになっていただろう。」と私が言うと、A君は、「校長先生が、ええ言ったで。」と答えたのだった。
 A君は、ルール確認をした際に、校長がいないことをチェックしておき、わざと何も知らない校長の許可を取ったのである。
 まさに、ガキ大将の支配力が教師に向けられた瞬間である。しかもA君は、校長の権限まで取り付けたわけである。こうしたガキ大将の挑戦には、感情的になる必要はない。しかし、一瞬たりとてひるんではならない。
 私は、全員の前で、「校長先生の許可は関係ありません。一口も食べずに、この場でそこのドブに捨てるか、直ぐさま売店に戻ってお金と交換してきなさい。」と毅然として言った。缶ジュースのふたを取っていた子は、ドブに捨てた。アイスを持っていた子は、走って、売店のおばさんの説得に向かった。どの子も血相を変えていた。
 こうして、ガキ大将の挑戦も、楽しい思い出となったのだった。


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詳しくは、向山洋一教育実践原理原則シリーズ(明治図書)向山洋一監修 岡田健治・小林幸雄編集 向山洋一教育実践原理原則研究会著をご高覧ください。