一、向山流「ライフスキル」とは
「ライフスキル」は、聞き慣れない言葉である。いったい何なのだろうか。
「ライフ」とは、「生活、生命」。
「スキル」とは、「技術、技能」。
すなわち、「ライフスキル」とは、「人が生きていくための技能」となる。 しかし、これだけでは、何をどうするのかどうもはっきりしない。
向山洋一先生は「ライフスキル」について、次のように述べている。
| 人生の最も大事なとき、最も困難な時にどうしたらよいのかということを教える内容−人生の最も重要な生きるすべが「ライフスキル」です。 困った時のあの時の頑張りとか、人を信じるとか、人と人とのつきあい方などは、1+1や漢字より、遥かに重要な役割を果たしています。 アメリカでは、教科内容として教えています。成功哲学のナポレオン=ヒルは、「これさえ教えれば、他に教える事は必要ない」と言っています。 |
そして内容及び方法として向山先生は、
| 「成功哲学、十八史略、環境教育、禁 煙教育、アルコール教育、人に役立つ ボランティア教育」など、数多く考え れるでしょう。 学習には、テキスト等も必要になってきます。 |
と述べている。
私は、向山先生のこの「ライフスキル」の定義で、すっきりとこの言葉が頭に入った思いがした。
つまり子ども達が、現在ただ今もしくは将来に人生の苦難に出くわしたとき、指導された「ライフスキル」を活用してその苦難を克服できるようにすればいいのである。
二、「脳内革命」とは
「脳内革命」(サンマーク出版)は、田園都市厚生病院院長の春山茂雄氏が書かれた本である。数百万部という空前の超ベストセラーである。
では、いったい何がそんなにも画期的なのだろか。
前掲書の中で春山氏は、次のように述べている。
| 人間は怒ったり強いストレスを感じると、脳からノルアドレナリンという物質が分泌されます。この物質は、ホルモンの一種なのですが、どういうわけかものすごい毒性をもっている。自然界にある毒物では蛇毒に次ぐ毒性を もつといわれています。 もちろん脳内で分泌されるのはごく 微量にすぎませんが、いつも怒ったり 強いストレスを感じていると、この毒のせいで病気になり、老化も進んで早死にしてしまう。(中略)一方で、β−エンドルフィンというホルモンがあります。このホルモンは脳内モルヒネとしていちばん効力のある物質ですが、この両者の間に奇妙な相関関係のあることが判明したのです。 人から何かいわれて「いやだな」と思うと、脳内に毒性のあるノルアドレナリンは分泌される。そのとき逆に「いいなあ」と思うと、β−エンドルフィ ンがでるのです。 ノルアドレナリンが分泌されるほう がいいか、β−エンドルフィンが分泌 された方かいいかは、自明の理でしょ う。 どんなにいやなことがあっても、事 態を前向きに肯定的にとらえると、脳 内には体によいホルモンが出る。どんなに恵まれていても、怒ったり憎んだ り不愉快な気分でいると、体によくな い物質が出てくる。すべてをプラス発 想で捕らえ、いつも前向きで生きてい れば健康で若さを保て、病気に無縁な 人生を送れるということです。(中略) どんなことも心のもち方一つで、体 がよくもわるくもなるということが医 学的に証明されたのです。 |
「病は気から」とか「気を張っていれば風邪を引かない」などとは、昔から言われてきたことである。
また、「瞑想は健康によい」ことも一般的に知られている。
私も、経験からこうした心の持ちようと病気とは関係あるとは感じていた。
大学受験が迫っていたある冬の日、私は酷い下痢に悩まされた。病院にいって下痢止めをもらったが、効果はなかった。
そんなおり、「自律健康法」飯田宏著(青春出版社)を試みることですっかり完治したのだった。
自分が大学に合格して、楽しい学生生活を送るようすをイメージしつつ、自己暗示をかける治療であった。
つい先日は、不平不満や怒りが込み上げた直後、呆気なく風邪を引いてしまった。 しかし、医学的な証明がなければ、これらのエピソードはただの思い込みとも受けとめられるのである。
ところが、ついに、「脳内革命」により、心と病気の相関関係が医学的に証明されたのである。
この原理を知ることにより、多くの人間が救われることになるであろう。
「病気が突然自分を襲ってくるという考えは誤りである。自らの心が病気を招いているのだ。」こういう事が分かれば、心の持ち方一つで健康な生活を送ることができるのである。
子どもに目をむけてみる。
以前、年がら年中「下痢や腹痛」に襲われていたM君がいた。彼は、恵まれた環境にありながら、常に不平不満や不安をコントールできずにくらしていた。 そして、先々のことがすべて不安で不安でしょうがなかった。
私は、彼にプラス思考をするように指導した。 例えば、「君の考えていることは、マイナス思考の傾向がある。物事はプラス思考しよう。プラス思考すれば、体調も良くなると思うよ。」と言った具合である。
しかし、説得力に欠けていたのか成果がまったく上がらなかった。彼は、どうにもマイナス思考から抜けだす事ができなかったのである。どうしてプラス思考すれば体調が良くなるのかが、はっきりしないからかもしれない。
三、「脳内革命」を活用する
このM君のような「マイナス思考」 にとらわれて健康を害している場合にこそ、「脳内革命」を活用すれば有効であろう。
他には、どのような局面で活用可能だろうか。
まず、暴力、悪口、陰口、仲間外れ、使い走り、冷やかしなどへの「いじめ対策」が考えられる。「いじめ」の事例をみると、弱い者を陰湿にいじめる事でストレスを解消しているケースが多い。いじめの原因を調べると「むかついたから」とか「いじめたらすっきりした」などの場合である。 こうしたケースでは、いじめる側は「いじめ」の悪想念を心に持つことで、気分が良くなると勘違いしているのである。
「いじめ」をすることで、いじめる側にも脳内に猛毒に匹敵するノルアドレナリンが分泌されて、病気になり、老化を早め、早死にする事を知らせなくてはならない。
「いじめは止めましょう。」と繰り返すより「脳内革命」の原理を知らせて「先生は、いじめている人の健康が心配なのです。
今すぐやめなさい。」と言う方が説得力があり、かつ愛情があることは言うまでもない。
「いじめ」以外に有効な局面としては、「怒り」をコントロールできない子への指導が有効である。
喧嘩の後、「そんなささいな事で怒るなよ」と言うより、事前に「脳内
革命」の原理を知らせる方が効果的であるし、人間関係もスムーズになる。 また、「プラス思考」をしたり、世の中のためや人のために善いおこないをした時にでる「β−エンドルフィン」について語れば、「プラス思考」や善い行いを奨励する時に有効である。
今まで、「人のために何かするとか世の中のために働くことが損である」と考えていた子どもが、「自分の健康にもそうしたおこないをすることが良い」ということを知るのである。 これは、大きな概念の変革となろう。
四、テキストを開発する
向山洋一先生が、「学習には、テキスト等が必要となろう。」と述べていることは、本稿の冒頭に記している。
そこで、次に「ライフスキルテキスト脳内革命編の試作設問」をご紹介しよう。
次項をご覧いただきたい。実際の「テキスト」は、設問をページの表に配置し、解説を裏に配置して構成するものとする。
紙幅の都合で、設問しか記していない。
まず設問1で、子どもの思考が「プラス思考」傾向なのか「マイナス思考」傾向なのかを自覚させる。
次に設問2で今までの常識を覆す「脳内革命」の原理を知らせる。そして、重要ポイントで整理する。 設問3では、簡単に
「プラスイメージ」を描くトレーニングをする。 そして、設問4でこれからの自分の行動について考えをまとめるという構成である。
設問1 あなたは次の時、どちらに近い考えをしますか。どちらか1つに○をしなさい。
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詳しくは、向山洋一教育実践原理原則シリーズ(明治図書)向山洋一監修 岡田健治・小林幸雄編集 向山洋一教育実践原理原則研究会著をご高覧ください。