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■ 鶴山漆器とは

鶴山漆器は岡山県津山市在住の木地師十三代小椋芳之(岡山県重要無形文化財保持者)が製作している拭き漆の漆器です。

■ 鶴山漆器の名称について

鶴山漆器は奥津千軒研出本漆塗(おくつせんげんとぎだしほんうるしぬり)という技法で塗られている拭き漆の漆器です。奥津千軒刻研出本漆塗とは父六助の出身地の旧岡山県奥津町千軒にちなんでつけられました。平成13年頃まではこの技法の名前をそのまま名称として使っていました。

しかし私の父六助が昭和の初頃から岡山県津山市に定住したことから、より親しみやすい名称を考え平成14年頃より鶴山漆器の名称も使うようになりました。ですから鶴山漆器と奥津千軒研出本漆塗はどちらも私、木地師小椋芳之が製作したものです。また当店の名前が「鶴山漆器おぐら」だけでなく、「木地師の店おぐら」と呼ばれるのもそのためです。

■ 奥津千軒研出本漆塗(おくつせんげんとぎだしほんうるしぬり)

当店の漆塗りは、「奥津千軒刻研出本漆塗(おくつせんげんぼりとぎだしほんうるしぬり)」といいます。これは中国山地美作地方の木地師の世界の中で特異な形で生まれ、そして継承されてきた技術です。 祖先が白木地のままでは汚れ、変形、割れなどが起こりやすいので、器の杢目が毎日使っていて汚れることのないよう、器面に漆を塗って幾年もその美しさを残そうと思案した漆塗の手法です。

最大の特徴は、下地と仕上げの手法にあります。天然漆に「との粉」を練り合わせ、木地に堅地にして磨き上げていく独特の手法です。 拭き漆は、何度でも塗っては拭き取るという作業を繰り返し、木地の上に薄い漆の膜を作っていくので剥げにくいです。

■ 特色

この漆塗りは、時が経過すればするほど、漆が透けて下の杢目が鮮やかに浮き出てくることです。また、底艶のある美しい光沢を放つことができます。アルコールや熱湯にも強く丈夫です。

注意
漆は直射日光に弱いので気をつけてください。また、適度な湿気が必要です。暖房・冷房などのよくきいている部屋に長時間放置しないようにして下さい。

■ 漆と日本人の生活

漆は日本の伝統文化です。日本人と漆とは切っても切れない縁で結ばれていると思っています。が、時代と共に漆と日本人の付き合い方は形を変えてきたように思われます。

昔から日本人は、木の味わいを知り、自然を感じながら漆器とともに自分自身も歳をとってきました。我が家では、私の父(六助)が作った湯のみや急須台を今でも使っています。

漆器は生活の中で生まれてきたものです。自然の恵みである木を「いつまでも大切に使いたい」という気持ちから、私たちの祖先が漆という最高の塗料で、最高の塗りを考案してきました。ですから、漆の価値は値段ではなく漆に携わってきた職人たちのこだわりの強さだと思います。手間のかけかたが値段と比例することをどうかご理解下さりたいと思います。

■ なぜ漆を塗るのか?

それは白木地のままだと変形や汚れが起こりやすいから、漆を塗って丈夫にするのです。漆は素晴らしい天然の塗料です。手元にあっても「高価なものだから」といって使わないのは損だと思います。というか使っていただくために作っています。

私は普段使いの漆器を製作しているのです。決して作家ではなく職人です(日本伝統工芸展に入選してからは「先生」と呼ばれることも多くなりましたが…)。木は毎日使ってこそ、愛着を感じられるものだと思います。もし傷がついても、その傷もきっと良い思い出になると思います。

■ 天然漆と代用漆について

最近では、漆と名前がついていても漆でないことがあります。代用漆がそうです。漆と名前が入っていますが、化学塗料です。これは、何十年か前に漆メーカーが開発したものです。 代用漆を職人が行うような漆塗の手法を用いることで、漆で塗ったものとほとんど見分けがつかなくなります。何年か前までは、漆と代用漆で塗った製品の違いは見た目や匂いで区別がつきましたが、今ではプロでも見分けがつきにくくなっています。

これが現実です。

天然漆と化学塗料の違いは、時間の経過です。本物の漆というものは、塗りが仕上がったあと、半年から一、二年ほど経過すると漆特有の「枯れ」が生じ始め、色が変化していきます。 化学塗料の場合、その変化は見られません。年月の経過を愉しみたい場合や、漆を塗り直しながら何十年も使いたい場合は本物の漆製品をお奨めいたします。