岡山県空中散歩

-表層にあるもの、深層にあるもの-


昨年、空から見る津山について紹介しましたが、こんどはきらきらつやまっぷの担当者さんから、岡山県のホームページにも、航空写真地図が見られるページがあるよと教えてもらいました。
おかやま全県統合型GIS(地理情報システム)−デジタルオルソフォト(電子航空写真)がそうです。

こりゃすごい、見たかったものが何でも見えます。 解像度はきらきらつやまっぷの方が上ですが、何より広範囲をカバーしています。 今日はこの航空写真システムで、私が以前から見たかった景色を・・・知っていたけど見たことがなかった景色を散歩してみたいと思います。 環境によっては画像がめちゃくちゃ重いとは思いますが、ご容赦下さい。
岡山市犬島
こんなに簡単に見られるとは思いませんでした。
私が買おうとした沖竹ノ子島が手に取るように見られます。
犬島の中央部の水面はカコウ岩の採掘跡で、その左上に赤い屋根が見えるのが映画の撮影場所になったりする精錬所跡の廃墟でしょう。
こうして見ると水深、砂州の有無、海流や海の汚染まで見えていることがわかります。
TIサーキット英田
見ていて面白いのはこうした人工の造形ですね。
TIサーキットはごらんのとおり関連施設がさびしいので、観客と選手の距離が近いという面白さがありました。以前ツーリングカー選手権を観戦に行った時に、トイレに行こうとして、見たことのあるおっさんとすれ違ったので会釈をしてトイレに入りました。誰だったかなあ?・・・トイレを出る頃になってそれが星野一義であることに思い当たりました。いまでは改善されているとは思いますが。
実際に航空写真で探し当てようとしたら、ものすごい山奥にあることを思い知らされます。
勝田町真加部 住友ゴムテストコース
住友ゴムのタイヤといえば「ダンロップ」「ファルケン」「グッドイヤー」なんですね。
TIサーキットばかり持てはやされていますが、岡山県にはもう一つこんな超高速サーキットがあるんです。
これが出来たばかりの頃、勝田町の山中を走っていて、怪しい標識に導かれてここにたどり着き、なんじゃこりゃー!とビックリしました。
次にビックリさせられたのは、ある日飲み会に出席のため、市営駐車場に車を止めていた時のことです。自分が車を止めた同じ駐車場に、その日は何だかポルシェが大挙して止めてありました。911、928、944その他その時点で70台ぐらいのポルシェが一堂に会しており、まだドンドン全国のナンバーをつけたポルシェが詰めかけてきている最中でした。
まさにポルシェオーナーズクラブの会合(の前夜祭)だったわけですが、聞いたところこの写真のテストコースで走るのがその年の会合のお楽しみであるとのことでした。
周囲の田んぼからもうかがえるように、こちらは意外と人里近くにあります。
倉敷市 水島コンビナート
右下のタンクの並びが三菱石油、その上方が三菱瓦斯化学、左の方が川崎製鉄です。
人工の造形で埋め尽くされてまるでICチップを顕微鏡でのぞいた時とイメージが似ています。
石油会社は円形のタンクが整然と並び、製鉄会社は赤錆色の屋根を持つ細長い建物が続くなんて事実は、現地に行ってもなかなかわかるものではありません。
この写真のさらに右の対岸には東京製鉄とジャパンエナジーがあり、やはり赤錆色の屋根や円形のタンクが並んでいます。また、この写真の上方には三菱自動車工業があります。車がずらっと並んだ一角も見られますが、これは製品でしょうか?
御津町鹿瀬付近
さて、ここからいよいよ本題に入ります。今までが本題でなかったわけじゃありませんが、ここまでは表層に過ぎません。ここからは岡山県の深層を見ていただければと思います。
私が岡山県の地図を見るときに、目が離せなかった場所の航空写真をこれから5枚続けてみます。
読者の皆さんは、私が感じたのと同じ何かを感じ取っていただけるでしょうか。
佐伯町塩田付近
川のうねり方がよく似ていませんか。
これは津山の航空写真を紹介したときに出てきた貫入曲流とよく似ています、いえ、貫入曲流の一種ではありますが、右上から左下に川と交差するように谷が伸びているところが違っています。
こういうのを断層線谷といい、断層に沿った破砕帯が谷になりやすいためにできる地形です。
この写真の佐伯町塩田(吉井川)と上の写真の御津町鹿瀬(旭川)は同じ断層線谷の上にあります。地図で見れば双方の関連がよくわかると思います。
落合町垂水付近
これもみごとな断層線谷です。中国自動車道はこの谷に沿って走っています。
ここで注目したいのはこの写真の上流の山の切れ目と、下流の山の切れ目が500mあまりくいちがっているところです。他の場所では、川のうねりは川自身の自然の浸食作用によるもののようにも見えますが、ここでは北が左、南が右にスパッと切れているように見えます。この断層は川が吉備高原を刻んでいる間にも動いていたのでしょうか。今でもその力は働いているのでしょうか。
なお、一連の写真の縮尺は一様ではありません。念のため。
佐伯町佐伯付近
川がうねるのは自然であり、これらの相似形は偶然の産物と見ることも出来なくはありません。しかし、これらの相似形は岡山県ならではの事情があってこうなっているのであって、川がこのように(この角度、このねじれ具合で)うねっているのは他県では見られないと私は考えます。
岡山県の全般的な傾斜は北が高く、南が低くなっています。これに対して川は岡山市を中心とした放射状に集まってくる傾向があるようです。
これを切る断層は北東から南西に伸びている傾向があり、航空写真でもわかるようにその角度は東西方向から30度ほど東が上がった一様な角度になっています。
これは四国や太平洋に中国山地がグイグイ押されて盛り上がっているシワのようなものだと理解できます。
お隣の広島県では同様な断層線谷沿いに中国道や国道54号線、JR芸備線などが走っていますが、主要な川となる江の川が北向きに流れているためにこのような表情を見せません。
新見市石蟹付近
高梁川水系は吉井川や旭川とは違った角度で断層線谷と交差するので、なかなかうまい相似形は見つかりません。川が反対向きにうねっている例が多いようです。
無理矢理見つけたのがこれですが、こうして岡山県中を探し回れるのもインターネット(と岡山県庁)のおかげです。

川ばかりクドクドと見せて済みません。しかし、私には見えないはずの大きな力を可視化している川や谷の姿がどうしても気になってしょうがなかったのです。

そんなことばかり気にしている私は、世界地図を広げるたびに、この場所にどんな力が働いているのか、社会科の授業そっちのけで地図のこういうところばかりに目を奪われていたものです。
(この1枚だけは岡山県ではありません)


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