ステップワゴンでエコラン(後編)

-驚きの燃費向上デバイス-


昨年の秋からステップワゴンの燃費向上に取り組んできましたが、様々な工夫の結果、ついにその成果の結実を報告するときがやって来ました。

今回の試みは、今までの走り方の研究に重点を置いた、いわばソフトウエア的なアプローチから、全く新しい視点に立った燃費向上デバイスの考案と実装にまで踏み込みました。
前回までの取り組みと考察
ステップワゴンでエコラン(前編) -燃費向上の理論編-
ステップワゴンでエコラン(中編) -ホンダのテクノロジーに挑戦-
で、ホンダのテクノロジーは燃費についてもすでにかなりのレベルまで煮詰められており、少々の小細工ではこれに付け加えるものはないことは理解しています。
と、同時に理論的に越えられない「ポンピングロス」という損失がクルマの燃費を悪化させていることもわかりました。
ホンダの技術者が見落としていることはないか?誰もが思いつかなかった逆転のアプローチはないか?
しかもそれは低コストで実現できるものでなくてはなりません。

ポンピングロスの低減には、吸入空気の負圧をなるべく小さくすることが有効です。ところが、吸気負圧を少なくするというのは通常アクセルを大きく開けるということに他なりません。アクセルを開けないで吸気負圧を小さくするには、ターボ化とかECUセッティングとか、非常に高くついて割の合わない方法しかありません。

待てよ?ターボというのは排気の圧力を吸気の圧力に変換する装置です。捨てられているエネルギーをエンジンに還流させるシステムです。様々な電子制御によってエンジンの効率は高められていますが、まだまだ捨てられているエネルギーがあるということです。

さて、ノーガキはそのくらいにして、私が考案した燃費向上グッズの実装について説明します。
材料は一般的なカー用品店で手に入る蛇腹式ホースと、その先端につける空気吸入口です。


これは、通常は吸気系やブレーキに新鮮で冷たい空気を導くために用いられるホースです。エンジンルーム内の熱に耐えられるようにアルミ箔でできており、吸気の負圧で潰れないように掃除機のホースのようならせん状の針金が入っています。
吸気系に新鮮な空気を導くのはなぜでしょう?エンジンルーム内に酸素が少なく、煤煙が立ち込めているからでしょうか。それともエンジンは冷たい空気を必要としているからでしょうか。

答えはたぶん後者でしょう。
エンジンに冷たい空気を導入すると、空気の密度が高くなり、EFIはそれに応じてより多くのガソリンを吸い込み、その分大きな爆発を引き起こせます。インタークーラーは端的にその効果を意図して使われるデバイスです。
私はそのエアインテークの取り入れ口を、あえてエンジンがエネルギーを捨てている場所、ラジエターの直後に配置してみました。



吸入空気を冷やせば、エンジンはガソリンをより余分に使い、余分なパワーを発生します。逆に吸入空気を暖めることは、ガソリンの消費を抑えることになります。単純計算によれば、吸入空気の温度を30℃高めてやればエンジンの排気量を1割ボアダウンしたのと同じ効果があります。
ためしにエンジンを回してみると、ピカピカ光るエアインテークは、シュルシュルとかすかな音を立ててエンジンにエネルギーを吸い込んでいます。

これを何と名づけましょう。
Boost Airintake Kumapooh Aspirator(熊風゜式能率向上型空気吸入装置)
略してB.A.K.A.と呼びましょう。あーこらこら、「バカ」とカタカナで読まないように。「ビー・エー・ケー・エー」と読んでください。

そして、その効果のほどは。(※表は前回の続き、グラフは前回の表(10月29日から)も含む)
(年)月日走行距離給油量燃費(km/l)備考
2.11346.638.628.97ほとんど通勤
2.17182.216.0711.34
2.25305.428.4110.75大雪出勤渋滞1回
3.11503.647.2210.66大阪往復
3.1149.33.5413.93岡山市街地
3.23269.825.8910.42新見〜吉備高原
3.25186.315.7311.84
3.30172.314.6011.80

燃費はこのところ、10km/lを下回ることなく推移していましたが、3月末に至って2回連続11.8km/l超をマークしてしまいました。これはメーカー公表10・15モード燃費(11.6km/l)を上回ります。 さすがB.A.K.A.のチカラは偉大です。ホンダの燃費テクノロジーの裏をかいて、みごとに燃費20%向上を果たしました。
と、ここまでは嘘ではありませんがエイプリルフールです。

どこが読者をかついでいるかというと、このストーリーのの前編・中編を読んでくださった方々にはもはや自明のことかと思います。 まず、B.A.K.A.(キラキラ光るエアインテーク)の効果は、吸入空気の温度を約5℃高めるだけであって、燃費に対する影響は1%未満であると思われます。
また、B.A.K.A.には名前から推察されるように大きな欠点があって、エンジンの馬力をそれ相応に低下させます。
逆転の着眼点はまさにそこにあって、馬力が低下してもいいからたったの1%でも燃費を向上したいとお考えの向きには、まんざら無意味なデバイスではないのかも知れません。

なお、B.A.K.A.は私の独創ではなく、名前を何と呼ぶかは知りませんが、古いクルマには何かしらそれっぽいものが付いているようです。
エキマニとエアクリーナーをつなぐナゾの管
エキマニから出ている細い管はEGR

私のもう1台のクルマ、三菱ジープJ58号には、エキゾーストマニホルドの周囲の暖められた空気(シャレにならないぐらい暖められていると思うのだが)をエアクリーナーに導くと思われるかなり太い管がついています。
EGRというのはもっと端的に、排ガスをエアクリーナー内に直接導くデバイスです。
クルマのことをよく知らない頃に、(EGR=排気ガス浄化装置)という説明を見て、「ああ、ジェット機のアフターバーナーのようなものだな。」と納得していたわけですが、その動作は
といったところです。ポイント点火とキャブレターの時代にふさわしく、逆転につぐ逆転の発想により厳しい排ガス規制をクリアしていました。
エンジンルームをじっくり見ていて、あるものは何でも使っちゃえ、目的のためならこっそりパワーダウンOKというその発想に一種の感銘を受け、今回の無駄としか思えない燃費向上グッズの製作を思いついたわけです。。
コストを含め、犠牲のない燃費向上なんてありえません。燃費向上グッズなんておおよそそういう種類のものではないでしょうか。

実際の燃費向上のポイントは別にあって、
言ってみればそれだけですが、通勤に使われたJ58号はあちこち壊れまくるし、ステップワゴンの方はたまには急加速しようとしてアクセルを一杯踏み込んでも、「何すんの?いつもとちがうじゃん。」と、のんびり加速するだけで、エンジンはいっこうに仕事をしようとしなくなりました。
ただのケチとは違う、本当に知的でストイックな経験をさせてもらったと思います。

「なべのさかやき」目次に戻る