向山洋一教育実践原理原則研究論文/ 学級経営 /
          

  あるヴェテラン教師の学級崩壊

  岡山県津山市立北小学校    岡田健治

  一、ヴェテラン教師の学級崩壊 
 
 ある時、四十代のヴェテラン女教師のA先生から「子どもが全く言うことを聞かなくて、授業が成立しない。」という相談があった。私は、さっそくその先生の教室にお邪魔して授業の様子を見させてもらった。 五年生だった。教室は、騒然としている。 やんちゃ坊主の六名は、家から持ってきた玩具の短銃を持って、裸足で教室から飛び出して行った。いじめられて、ずっと泣いている女の子や先生にくってかかる子。どの子も顔が土気色で、無表情であった。
 授業は、教師の説明と一問一答の平板なものだった。退屈そうに、ノートに落書きをする子が目についた。先生は、子どもに蹴られたらしく、ジャージイにたくさんの靴の跡があった。
 教室の後ろには、不愉快そうに立って参観する保護者の姿もあった。

  二、学級崩壊の原因を分析する
 
 参観の後、A先生と「どうしてこんなことになったのか」について話し合った。
 彼女は、「自分のクラスに、問題児が偏って大勢いる。家庭的にも問題がある子が多い。」と終始訴えていた。そして、最後まで、A先生本人の反省の弁はなかった。
 後日、やんちゃ坊主数名と話す機会があった。彼らの言い分は次のようなものだった。
・先生は、僕たちばっかり叱る。不公平でひいきをする。 
・ くどくど叱るので、イライラする。わかりきったことを何度も言う。
・ 学級で楽しい集会をしてくれない。四年の担任のB先生が良かった。
・ 後ろの方は、先生が何を言っているのか、声がよく聞こえない。
・ すぐに、インターホンで他の先生を呼んで告げ口をする。
・ 約束してもすぐ破る。先生は嘘つきだ。
・ 家から持って来たカラーボールを先生に取り上げられた。A先生は、泥棒だ。 四年の時は、B先生も一緒にカラーボー ルで遊んでくれた。
 子ども達の不平は留まるところを知らず続いた。ニコニコしながら語る子もいて、何やらストレス解消の遊び感覚で反抗を楽しんでいる風も見られた。
 私は、この学級崩壊の原因を次のように分析した。
 まず、第一に、「教師に責任感がない。」ということである。子どもが悪い、クラス替えが悪いとすべて原因を他へ転化しているのだ。教師は、研修を重ねすべての子どもの可能性を引き出す指導をしなくてはならない。叱り方ひとつでも、我流ではだめなのだ。
 詳しくは、私共で執筆した「子どもを励ます授業中の言葉かけ 中学年」(明治図書)をご高覧いただければ、幸いである。
 第二に、教師の著しい「統率力の欠如」が上げられる。説明も、途中で枝葉の部分にそれてしまい、何を言っているのかさっぱりわからないのである。 先生がドッチをしましょうと指示した時、子どもが「今日はドッチしたくない、サッカーが良い。」と言うと、「じゃあ多数決を取りましょう。」といった具合にすぐ迎合するのである。
 第三に、「教師と子どもの価値観に乖離がある」ということである。今の目の前の子どもが、何を考えているかを知ろうとする努力を教師はしなくてはならない。
 やんちゃ坊主の心をつかむには、一緒にやんちゃをするくらいの覚悟が必要なのである。
 私は、教師が変わらなくては、学級崩壊は解決しないと考えている。

出典:学級経営(明治図書)


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詳しくは、向山洋一教育実践原理原則シリーズ(明治図書)向山洋一監修 岡田健治・小林幸雄編集 向山洋一教育実践原理原則研究会著をご高覧ください。