「向山洋一教育実践原理原則シリーズ」(明治図書)が、大変好評です。
第5巻の「『指導評価』で子どもの力を引き出す」は、ある県では教育委員会指導主事が研修会のテキストに指定したそうです。
「指導評価」とは、評定そのものが指導になっており、評定によって子どもの力が伸びるという画期的な方法です。向山洋一先生は、「阿波踊りの指導後半部が、この『指導評価』になっています。」と述べています。
「指導評価」の活用事例は、前掲書に紹介されており、大変な問題提起になっています。
「指導評価」は、いつどのような局面で取り入れるか、また、どのような留意点が必要かが問題となってきます。
そこで、本特集は、よりたくさんの事例を集めるきっかけにしたいと存じます。
今回は、日ごろ活用している局面を描写し、評価の指導言なども明記いただき、どのように取り入れているかをご紹介いただきました。
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1.指導評価とは
向山実践の中には、「指導評価」の活用が多く見られる。
阿波踊り指導、運動会紅白あいさつ、卒業式よびかけ指導などである。
阿波踊り指導で、向山先生は、次ぎの四つの局面で「指導評価」をする。
@四拍子で歩く。 A腰を落として、ガニ股で歩く。 B手の動き(四拍子)をつける。 C「おもしろい顔」を作る。 「教室ツーウェイ」93年11月号桜木泰自論文 |
例えば、10点満点で4点以上を合格とし、不合格の場合は、何度でも挑戦させる。向山先生は、必ず全員を合格させることが大切であると言われるが、これを忘れてはならない。不合格のままその日の授業が終わると、子どもの自信や意欲が削がれることとなる。
また向山先生は、「評価は、即座にしなくてはならない。そのためには、1点しか見ないことです。私は、足を見ます。」と言う。
「さあ、何点かなあ。えーと、6点くらいでしょう。」では、ダメなのだ。「すごい。6点合格。」ときっぱり評価しなくてはならない。
2.「集団」での指導評価
阿波踊り指導と卒業式よびかけ指導は、個別に評定する。運動会紅白あいさつは、集団で評定する。どちらも指導しながら評価する方法であるが、「個別」と「集団」という違いがある。このことは、前掲書で伊谷信哉氏が主張している。「指導評価」の実践を数多く開発する上で重要な切り口であると言える。
「集団」での指導評価では、伊谷氏が本井訓氏の「集団での音読指導法追試実践」を前掲書に紹介している。
私も似たような指導をしている。教室を二分し、熊さんチームとリスさんチームとし、交互に音読するたびに板書した0点から100点までの目盛りの両側を熊とリスの磁石付きの絵が上昇するのである。
これは、高学年の子でも熱中する。これだと、
1つのチームが音読した後に、教師の指導言が入らないので非常にテンポがよくなるのだ。
遠足のバスの中で、前後に分け歌合戦するのも盛り上がる。教師がマイクを持ち、集団で歌った後に評定するのである。
また、前掲書「集団」での評価では、駒井隆治氏は、表現運動のチームでの評定を、吉川誠仁氏は、バスケの「ボールの保持」実践を紹介している。是非追試したい実践である。
3.「個別」での指導評価
さて、次に「個別」に評価する実践を見てみよう。
個別に評定する場合、どうしても人数が多くなるので、特にテンポよく評定しなくてはならない。 中野浩彰氏は、前掲書で学芸会のセリフ指導を示して「とにかくテンポのよさが心地よい緊張感と笑いを生む」と述べているが、まさにその通りである。
向山式阿波踊り指導法では、向山先生は、数人を横一列に並べて評定している。評価のテンポが、非常に早いのが特徴である。合格した子が、座って「指導評価」を見るように場が設定されているのも見逃せない。テンポのよい「指導評価」は、とても知的で面白いので見ていてもつい熱中してしまうのだ。
指導形態を工夫しなくては、せっかく「指導評価」を取り入れても、間延びした授業になってしまう。
私も、個人の音読力を高めるに「指導評価」を用いている。一人に一文ずつ割り当て、10点満点で評価する。合格は、5点以上とし、不合格の子は、再度挑戦となる。割り当てを一文にするとテ
ンポがいいので授業が引き締まるが、割り当てる文が長すぎると失敗する。
前掲書で、松垣直美氏は、音読指導として「いるか」という詩の指導実践を示している。
ハードル走や跳び箱、マット運動、水泳のクロールや平泳ぎのフォームなども、人から評定されなくては絶対上達しないものである。必ず「指導評価」を取り入れたい。
前掲書には、山内好明氏が「走り幅跳びの滞空時間」実践を、平田淳氏は、「なわとび」実践を紹介している。
音読や体育以外にも個別の「指導評価」は、活用範囲が広い。
伊谷氏・松垣氏は「リコーダー指導」、猿渡功氏は「ハーモニカ指導」を前掲書に紹介している。
4.さまざまな局面での「指導評価」
「指導評価」というと、私はどうしても「向山式阿波踊り指導」が頭から離れないのだが、さまざまな局面での活用が肝心である。前掲書で、猿渡功氏は、学級で「ぞうきんがけ」をする子のふき方を評定しているのは、面白い。また、大島英明氏は、向山式の音読○塗りも「指導評価」であると主張している。また、吉川廣二氏は、「たくさん書かせる」時にも有効であると述べている。
私は、先日次のようにやってみた。6年生である。まず、社会科教科書「明治の学校制度」のページを指定して、「このページをよく見て、気づいたこと、分かったこと、思ったことを箇条書きしなさい。」と指示した。6校時目の授業である。ともすると、教師も子どももダラーンとしがちである。そこで、箇条書きした瞬間に「指導評価」できるシステムを使った。黒板に10個以上特AAA、9個〜7個AAA、4個〜6個AA、3個A、2個B、1個Cと板書した。すると、子ども
達は一つ書くごとに黒板を見て、取り組んでいた。どの子も、熱中し平素よりたくさん書いた。その後、「指名なし」で発表し、だれが何個書けたかを確認した。初め全員を起立させておき、「6個以上の人起立。」「10個以上の人起立。」と指示した。そして、自分の評定は赤でノートに記入させた。
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詳しくは、向山洋一教育実践原理原則シリーズ(明治図書)向山洋一監修 岡田健治・小林幸雄編集 向山洋一教育実践原理原則研究会著をご高覧ください。