向山洋一教育実践原理原則研究論文/6学年 社会 /戦国時代/
          

  「向山式歴史の授業」から何を学ぶかC
  人物を選択する

  岡山県津山市立北小学校    岡田健治


「向山式歴史授業」前回までは、「前の時代」と「今の時代」の特徴を検討した所であった。今回は、人物の選択である。私は、次のように指示した。

指示3 戦国時代を代表する人を一人選んで、ノートに書きなさい。
指示4  まだ書けていない人は、起立します。書けたら座ります。

 子ども達は、織田信長(5人)、豊臣秀吉(23人)、徳川家康(2人)、上杉謙信(1人)の4名を選んだ。豊臣秀吉を選んだ子が、こんなにも多いのは意外だった。
 さて、ここで問題になるのは、「クラスで人物を一人に限定するのか、しないのかどちらが良いのか」ということである。
 私は、一人の人物に限定した方が、全員の蓄積された内部情報が一致し、後々の討論などもやりやすいように思った。そこで、向山実物資料集を紐解いてみた。すると、この巻には、児童のレポートがある。いわば、「人物資料集」といった内容である。これには、「家康、信長、秀吉」が入っているのである。 したがって、向山学級では、追究する人物はクラスで一人に限定していないということが予測されたのである。
 私も、ひとまず、人物をクラスで一人に限定せずに進めることにした。
 例えば、1班には秀吉2人、信長3人、家康1人がいたりするのだ。子ども達は、自分が選んだ人物を追求することになる。
各人が、人物を選択したからと言って、すぐに「その人が時代をどのように生きようとしたか」をたずねてはならない。やはり、内部情報が不足しているのだ。向山学級では、上記の「人物資料集」の作成をしている。「人物資料集」の作成により、十分に自分が選択した人物の情報を蓄積することになるのだろう。また、全員分を印刷製本することにより、他の子が選択した人物の情報も蓄積できるのである。私は、この「人物資料集」の作成に4時間を費やした。 それから、次の指示をした。

指示5 みんなが選んだ人物は、戦国時代をどのように生きようとしまし
     たか。ノートにズバリと一文で書きなさい。

子ども達から出て来た仮説は、次の通りである。

●豊臣秀吉                      ●織田信長
・検地・刀狩りで農民を支配し            ・天下を統一しようとした。
  天下を統一し、朝鮮へも出兵した。       ・新しい考えで、古いものを壊す。
・工夫をして天下統一を成功させた。        ・自分が一番でなくてはいや。
・天下を統一して贅沢な暮らしをした。       ・気に食わなければ殺し冷酷で非情に生きた。
                             ・新しい政治のもとを創った。

●徳川家康
・天下を統一した。    
・最後まで、冷静に生きた。            ●上杉謙信 (不 明)

「信長が、新しい政治のもとを創った」は、的を得ていて面白い。秀吉、家康が、活用したもともとの原理原則は、信長が創ったものが多いのだ。
 ところで、「クラスに一人の人物に限定した方が、後での討論がやりやすいのではないでしょうか。」と向山先生にお尋ねした時の答えは次のようだった。 

クラスで一人に限定する必要は、ありません。4人で構わないし、6人
 なら6人で構わない。クラスから、いわば、そのたくさんの意見が出る。
 たくさんの解が出て来て、それを前提とした授業なんですね。
  1つになることを前提とした授業はあるけれども、このような形でいろ
 んな人が出てくるということを前提としている。「にもかかわらず、この
 6人は、全部、中央集権を目指したじゃあないか。あるいは、全国の覇者
 になろうとしたじゃないか。」ということでの共通性で括れ、そう言った
 生き方その物が、いわば「下克上」の世の中の生き方なんですね。
  ですから、いろいろな生き方を出さなくちゃあいけないんです。

 今まで私は、教材を咀嚼して発問や指示を提示をし、一つのことに限定して、集中的に検討する、単一的な一斉授業をしてきた。しかし、向山式歴史授業は、このような概念を遥かに凌駕しているのである。
 子どもが熱中する所以である。
 次回は、「人物資料集」作成の留意点と「仮説の証明」である。


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