向山先生は、「授業研究の視点」(実物資料集第7巻)で6年の歴史授業について次のように述べています。
六年においては、「仮説をたて、それを証明する情報を集める」という授業が考えら れてくるのである。仮説の内容が基礎・基本であり、情報を集め整理することが作業と なることになる。
そして、戦国時代を例に授業の流れを(1)〜(6)まで示しています。
この向山式歴史授業は、「教材を提示して、発問する授業」とは、大きく異なっていると言えるのではないでしょうか。
そこで、本特集では、この「向山式歴史授業」から何をどう学べば、如何なる実践が創造できるのかをご提起いただくことにしました。
以下は、私の実践報告です。
◆ ◆ ◆
向山洋一実物資料集を紐解いてみると、まず目に入って来るのが次に示す「授業の流れ」である。 戦国時代の教材で学習するものとし、(1)から順に、子どもになったつもりで、お答えいただければ幸いである。
(1)前の時代の特徴をひとことで言いなさい。
(2)今の時代の特徴をひとことで言いなさい。
(3)この時代を代表する人を一人選びなさい。
(4)この人は時代をどのように生きようとしま
したか。できるだけ簡単に述べなさい。
(5)(4)を証明するできごと、エピソードを5つ述べなさい。
調査(個人)→ 班ごとに表にする。(K.J法)
↓
最も象徴的なことを一つ選ぶ。
↓
発表する。
↓
他の班とのちがいを討論する。
(6)この時代について、誰か一人を選んでその人を通して説明しなさい。
向山洋一実物資料集では、例として次のように記されている。
(1)前の時代は鎌倉時代で、特徴は「御恩と奉公」。
(2)今の時代の特徴は、「下克上」。
(3)豊臣秀吉。
(4)「戦いの中で生きて、天下を統一しようとした。」
この向山先生の「授業の流れ」は、とても流れがすっきりして分かりやすい。しかし、何度も読むうちに、私には次のような疑問が沸き出て来たのである。
@ 時代を代表する人を一人選んだ後、すぐに「その人がどのように生きようとしたか」を子どもが書けるであろうか。
A (1)(2)の時代の特徴は、子どもから様々な 答えが出た場合、「解」を限定するのかしないのか。
B (3)の人物はクラスで一人に限定するのか、それとも、子ども達各人が決めた人物について(4)以下の作業をするのか。
C 班ごとに表にする。(K.J法)とは、実際に班で机をつけて何をどうするのか。
D 全く新しい時代に入った導入の時に、「この時代の特徴をひとことで言いなさい。」と指示するのだろうか。全く内部情報がなければ、答えにくいのではないのではないか。
E この流れは、1時間の授業の流れか、それとも単元の指導計画かどちらなのか。指導計画なら、各時間はどのくらいなのだろうか。
F 向山先生は、この歴史授業を「再現する学習」としている。どこがどう再現なのか。
以上7つが私の疑問である。
何度も何度も実物資料集を読み返しながら、私は考えた。(向山洋一実物資料集は、膨大な資料が収められているが、そっくりそのまま追試可能なものばかりではない。極めて純度の高い情報が凝縮されている所が多い。これを忠実に再現し、不明な点があれば直接向山先生にお尋ねすれば良いのである。これこそ、私ども原理原則研究会の使命ではないか)と。
こう考えた私は、疑問の@〜Fまでに自分なりの予想を立てて、でき得る限り忠実に追試してみることにした。ただし、実物資料集を熟読するうちに解決した疑問も出てきた。
以下に、私の予想を記す。
@ 実物資料集の別の項に、(3)の後に「この人がやったことをグループごとに調べる。n 印刷製本する(82ページ)」という記述があり、実物資料集の巻末に向山学級の子どもが作った「人物資料集」がのっている。
したがって、この資料集を全員分作りお互いに情報を共有することにより、子どもの内部情報が十分に高まっていたであろう。
A 今回は、子ども達から出て来た予想を検討し、私が「解」を限定してやってみる。
B 向山学級の「人物資料集」には、一つの班に、「家康、信長、秀吉」が入っていた。したがって、追究する人物はクラスで一人に限 定しない。班でも限定しない。各人が調べたい人物を調べて、「人物資料集」を作成する。
C 5枚のカードに「証明できるエピソード」を書かせ、各人で最も象徴的なことを一つ印をつけさせてから、班員分全てを集め分類し、班で最も象徴的なエピソードを決定させる。
D 全く新しい時代に入ってすぐには、内部情報不足など個人差が激し過ぎるので追試しな い。一通り教科書に添って授業をしてから追試する。
E これは、指導計画である。なぜなら、(1)と(2)の検討だけで1時間近くかかるからである。以下が私の指導計画である。
(1)〜(3) 1時間
「人物資料集」づくり 4時間
(4)〜(6) 3時間
F 「再現する学習」とは、「情報の収集、選択、整理の学習」あり、6年では、「仮説を立て、それを証明する情報を集める」という授業が考えられると向山先生は主張している。
したがって、仮説が(4)で、証明が(5)ではないだろうか。
実践の様子と、実際に向山先生にお尋ねした時の答えは、「向山式歴史の授業」から何を学ぶかAでで発表させていただくことにする。