向山洋一氏は、「ふるさとの木の葉の駅」で、朗読・問答・伏線・中心発問の流れで授業を構成している。このような、向山実践の授業構成を応用して、オリジナルの授業実践を創造することは、十分可能であると思われる。
私は、中条小学校で行われた、向山氏の「EM・サイクル図」の授業を分析し、この授業構成を6年社会「源頼朝」の授業に応用したので以下にご紹介する。
1.EMサイクル授業を分析する
1000名を越える参観者の中、向山氏は、穏やかな声で、向山氏が子ども達に出した手紙を読んでいった。前半の内容は、向山氏のユーモラスな自己紹介であり、後半の内容は、子ども達への3つの指示であった。指示の内容は、「・教科書の公害問題の所を3回以上読む。・新聞で環境問題のところがあったら切り抜いておく。・現在の環境問題、解決策を考えておく。」というものであった。この事前の3つの指示は、まさに
と考えられる。授業内容の高度さから見て、全く「環境問題」についての知識が子ども達に無かったとしたら、授業を進めて行くことが極めて困難であることは、明らかである。しかし、この事前の3つの指示によって、子ども達に内部情報が蓄積されていたため、授業は、導入からスムーズに展開して行った。 さて、授業をもう少し見て行こう。発問1(以下発問の番号付けは岡田)で、向山氏は、「どんな環境問題がありますか。」と問った。子ども達からは、『森林破壊、ゴミ問題、砂漠化現象、地盤沈下など』すんなり出てきた。そして、向山氏は、これらの問題を「大変な問題なのです。」と断定し、発問2として、「なぜ大変な問題なのか」を聞いた。ノート作業の後、子ども達からは、『生物がいなくなる、病気になる、水が飲めない。』など的を得た答えが返ってきた。
次に向山氏は、サイクル図を提示して、ゴミから自然へのサイクルがプッツンしており、リサイクルがバイパス回路としてありながら、役に立っていない現状を示した。

そして、「現在、これは、解決できないのです。」と説明した後、環境破壊の惨状を示したカラーコピーの資料を3枚提示した。子ども達は、現状の悲惨さに愕然としたに違いない。授業開始から
ここまでが、
子ども達の内部情報を再構成した場面
であると、私は考える。この内部情報の再構成(『内部情報の再構成』については、本誌11参照)により、現状の悲惨さが鮮明になり、同時に「サイクルプッツンしているところを、どうすれば解決できるのか」と言う問題が焦点化してくるのである。
授業はいよいよ佳境に入って行く。発問6「どうやったら解決できるのかまわりの人と話し合ってごらんなさい。」と向山氏は、発問し指示する。答えのでない子ども達を、向山氏は、執拗に問い詰め困惑させた。これは、当事者意識をもたせるために有効な発問である。そして、向山氏は、豊富なカラー写真の資料を提示しつつ、EM(有用微生物群)を紹介し、最後に「これを使うとどんなことができるのかな。」と問った。そして、EMができることを数多く紹介し、「日本で作られたこの方法は、先生は、ノーベル賞ものだと思います。そういった、解決方法もあるのだと言うことを、みんなに伝えたかったのです。」と結んだ。
以上見てきたように、この授業は粗く言って、『内部情報の蓄積→内部情報の再構成→主要発問』という構成になっていると言えるのではないか、と私は分析した。
2.「源頼朝」を授業化する
まず、授業する日の前日、「平清盛や源頼朝について調べ、ノートににまとめておきなさい。」と指示した。これは、子ども達に内部情報を蓄積させるためにした訳だが、向山氏が出した『事前の指示』をそっくり追試したものである。
指示2 調べてきたことを、必ず一人一回立って発表します。友達と同じ内容でもいいです。では、だれからでもどうぞ。
こう指示すると、子ども達は、次々に立って発表していった。
栄華を誇った平家のこと、義経のこと、頼朝の挙兵、源平の合戦…。実に様々である。そこで、中心発問に関係のある「頼朝の挙兵」につい
て整理していった。つまり、蓄積された内部情報を再構成するのである。
EMの授業では、向山氏は、サイクル図を用いていた。そこで、私は、下ののように年表にして板書した。

子ども達は、わずか2か月の間にこんなにも兵を集めた頼朝に強い関心を示した。
そこで、中心発問をする。
子ども達から出た予想は、「 農民を武士にした。平氏に不満をもつ人を集めた。お金や物を与えた。武力で脅した。派手に宣伝した。」などであった。 人数分布を調べると、「農民を武士にした。」と考える子が多かった。
そして、一つずつ検討していくことにした。すると、様々な根拠をもとに討論が白熱した。
まず、「平氏に不満をもつ人を集めた。」は、一般的に正解なのだが、実は、「多くの手紙を使って、土地を与えると宣伝をして、兵を集めた。」のである。
つまり、頼朝は、自らの所領もない流人の身でありながら、土地の支配権を認める書簡を出しまくっていたのである。
当時、都からの重税の取り立てに悩んでいた東国の武士が、もっとも欲しかった「所領の安堵」を頼朝はしたのである。このことは、NHK歴史誕生(角川書店)に詳しい。
このように、『内部情報の蓄積→内部情報の再構成→主要発問』という授業構成を使うと新たな実践の開発が可能である。向山氏が、「授業とは、子どもの内部情報をある視点から組立て直し、より高度なものより高次なものに作っていく作業である」と述べている事からもこの授業構成は重要であると言えよう。
出典:向山実践の原理原則を究める@ 子どもの可能性を引き出す秘訣 拙著
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