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向山洋一教育実践原理原則研究論文/4 学年 社会 /地域学習 ため池/
          

  骨太な論理で授業を貫く

  岡山県津山市立北小学校    岡田健治


  一、成功する授業の原理原則

 向山実践には、子どもの可能性を引き出す「授業の原理原則」が存在する。私たち「向山洋一教育実践原理原則研究会」は、その「授業の原理原則」を抽出し活用する研究を重ねて来た。
思いつき程度の方法では、授業は成功しない。しかし「授業の原理原則」を活用すれば、今までの自分の実践を遥かに凌駕した実践を展開することができるのである。今まで、抽出・活用されてきた「授業の原理原則」は数多い。二〜三ご紹介する。

指導には、様々な局面が連続するが、その一つの「局面」に「限定」して指導方法を熟考する。そうすれば、必ず授業は成功する。
例えば、四年生が初めて木版画をするとする。私は、最初に使用させる彫刻刀を丸刀一本だけに「限定」する。彫る場所も背景だけに「限定」する。限定した中で、彫刻との持ち方や、動かし方を指導する。こういう指導をすることで、子どもの可能性は引き出されていくのである。
誌一九九六年 変化のあるくり返し十一月号で向山先生が、発表されているサッカーのキック練習を過日私は、追試した。ラインを一本引き、むこうにカラーコーンを二つ立て、その間にボールを通す練習である。ラインからカラーコーンまでの距離に変化をつけるので子ども達は、熱中して、くり返し練習する。しかも、スポーツ少年団で全国大会に出た男の子も、今までサッカーが苦手だった女の子もみんな熱中するのである。
「変化のあるくり返し」は、子どもを知的に集中させる原理原則である。
この他、「指導評価」や「逆転現象」「内部情報蓄積・再構成の原理原則」など活用可能な原理原則が多数解明されている。
 これらについては、「向山洋一教育実践原理原則シリーズ」(明治図書)を是非ご高覧いただきたい。

    二、骨太な論理で授業を貫く

 ところで、新単元に入るにあたり、どのような「原理原則」を活用すればよいのか皆目見当がつかないこともある。
四年生の社会科では、「ため池と用水」という単元がある。先人の苦労を知ることが目標である。 私は、この単元をどのような単元構成にしたら、より子どもの可能性を引き出せるのか本当に分からなかった。単元の構成をするに当たり、様々な疑問も沸いて来た。

疑問1 地域にある「ため池」へ見学に行くのなら、単元の始めか終わりか。
疑問2 単元を貫く中心発問は何か。
疑問3 予想したり調べたりさせるとする。それは、何のためにさせるのか。
疑問4以前追試した、「ため池」の模型を運動場に作らせる学習活動に子 ども達は熱中したが、それはなぜか。(法則化シリーズ5期栗田論文)
疑問5 先人の苦労を知ると言うことは、時間的に現在とかけ離れている。 今までの身近な「ゴミ」「水道」「消防」とどう関わるのか。


まず、疑問1の見学についてである。

 以前は、教科書で一通り学習しながら疑問点を出し合った後、見学場所に行って、地域のお年寄りから話を聞き疑問を解決させる単元構成にしていた。 しかし、この構成では、子どもの関心度が低く授
業は成功しなかった。 向山先生は、「授業とは何なのか」ということについて、次のように言われる。

授業とは、子どもの内部情報をある視点から組立て直し、より高次なもの より高度なものに創っていく作業なの です。工業地帯の授業を教えるのに、 工業地帯の体験がなくちゃ無理何です。体験できないからせめて、テレビやV TRを見せるんです。VTRを見せて テレビを見せて、そういった情報がつ まって、初めて授業ができるんです。(中略)そう言った子どもの体験に基づいた形の中で、再構成していく、それが授業なのです。

 私どもは、これを「内部情報蓄積・再構成の原理原則」と呼んでいる。
 まず「内部情報」を蓄積させるためには、単元の初めに見学をしなくてはならないのである。今年は、見学をまず始めに持って来ることにした。 しかし、残りの疑問は、一向に解決せず、時間ばかりが経っていった。
 そんな時、私は「向山洋一実物資料集」を紐解いた。
 疑問を持って、一ページずつ一ページずつ精読していく。すると、私の目に次に示す、「再現する学習」という向山先生の言葉が飛び込んできた。極めて重要なので、少し長いが一部を引用させていただく。

◇ 本校の研究会において、一年から四年 まで類似性のある授

業が見られました。
 以下の通りです。
 一年 公園を観察して再現する。
 二年 八百屋さんを観察して再現する。
 三年 商店街を見学して気づいた事を発表する。
 四年 校舎内の安全施設を調査し再現する。

◇ これらの学習を「再現する学習」としておきます。
 動きのある「再現する学習」は、見て いて大変楽しいものでした。

◇ さて、「六年」から考えると、「再現 する学習」で身につけたものは、その後 の学習に生かされることが大切になります。
しかし、六年の学習では「観察・再 現」は、特別のこと以外ありません。

◇ そこで、別の視点で考えてみます。つまり、「再現する学習」とは、「情報の収集・選択・整理の学習」と考えるこ とができるということです。
 こう考えますと、「五年」「六年」と続くことになります。(中略)※再現する学習を、別の視点から言えば「作業のある学習」「観察のある学習」 「動きのある学習」と表現できる。大きな何かが包含されているような気がする。 何かこれが社会科教育なのかと思えてく る。※四年と五年との間にある飛躍も、問題である。(向山洋一実物資料集 社会科研究授業  六年より引用


読んでいくうちに、私の疑問のすべてがスッキリ解決していった。

向山先生は、低学年の授業から五・六年の産業・歴史分野の授業に至るまですべて「再現する学習」というキーワードで貫けると主張されているのである。
 子ども達は、様々な情報を収集・整理することにより教室に社会の仕組みを「再現」して学んでいるとも言えるかもしれない。つまり、見学により蓄積された「内部情報」をもとに、「再現」させる。
「再現」の過程で、子ども達は、検討・分析する。予想や討論をする。調査する。 こうして子どもの内部情報は「再構成」されるのわけである。 そこで、本単元では私は、中心発問を運動場に「ため池」を「再現させる」ことにし、

発問 昔の人は、どのようにしてため池を作ったのでしょうか。
   模型を作って調べなさい。と決定したのである。

 また、見学により出て来た数多くの学習課題は、すべて抽出した。
 その中から一人が三つ選択して、自分で仮説をたてて、検証していく活動も併せて取り入れた。
 主な指導の流れは、次の通りである。


   一、映画を視る。 

   二、見学に行く。

      気づいたこと、思ったこと、考えるえたこと、見た物のスケッ

      チをノートに記入。

   三、発表する。四、学習課題(疑問)をカードに書いて発表する。    

   五、学習課題を分類する。・追究したい課題を三つ決める。

      ・仮説を立てる。      ・検証する。

   六、ため池と用水の作り方、作る場所について
       ・仮説を立てる。

       ・討論する。

       ・模型作りによる情報収集

       ・整理により検証する。

   七、カルタにより学習のまとめをする。


 先に示した中心発問をすると、子ども達は、三つに分かれて活発な討論を開始した。主な意見は、次の通りである。

▽印は、賛成意見。▼印は、反対意見である。

(頂上派)▽多くの田に水が行きやすい。水が勢いよく流れる。

      ▼岩が多く掘りにくい。大雨で、洪水が起きる。見学地と違うようだ。

(平地派)▽山の水すべてを集められる。田に近いので用水路が短くてよい。

      ▼水の流れが悪い。多くの田に水が行かない。(山腹派)

      ▽見学に行った場所に似ている。水を集めやすく、送りやすい。

      ▼頂上の方が掘りやすい。 
 
子ども達は、校庭に各グループに別れて、ため池と用水の模型を再現した。しかも、中腹派の一つのグループは、堤防を作る方法で池をいち早く完成させたのだった。 実は、中腹にこの方法で作るのが先人の考えた正しい方法なのである。 向山先生が主張されている「再現する学習」という骨太な論理で貫くことで、授業は成功したのだった。 


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詳しくは、向山洋一教育実践原理原則シリーズ「再現する学習で創る向山式社会科授業」(明治図書)向山洋一監修 岡田健治・小林幸雄編集 向山洋一教育実践原理原則研究会著をご高覧ください。